週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

レイトレーシングなしでも圧倒的3D描画性能!

Turing無双!TITAN Vをも超える「GeForce RTX 2080 Ti/2080 Founders Edition」速攻レビュー

2018年09月19日 22時00分更新

従来見逃されていた領域までブーストする「GPU Boost 4.0」

 RTX 20シリーズではOC関連の機能も強化されている。前回解説したのが自動的にOCの設定値を探ってくれる「NVIDIA Scanner」だが、今回は前回解説ができなかった機能「GPU Boost 4.0」についても触れておきたい。

 GPU Boost 3.0までのOCでは、Power Targetと呼ばれるパラメーターが(お手軽な)OCの鍵だ。Power Targetを上げればそれだけ電力が使えるようになるため、ブースト時のクロックも上昇する。それと同時にブーストは温度の制約、つまりTemperature Targetの制約も受ける。GPU温度がTemp Targetを超えない範囲でブーストするわけだ。この関係を図に表すと下のようになる。

GPU Boost 3.0までのGPUブーストとPower及びTemp Targetの関係。左のグラフの緑色の縦線と、負荷によって決まるPower Targetとクロックの曲線(黄色)の交点がブーストクロックだ。緑の縦線を右に動かせば、交点のY座標、つまりクロックも上がる。そしてこれはTemp Targetの制約も受ける。もし温度(右グラフ横軸)がTemp Targetまで上がってしまったら、ベースクロックまでダウンするということだ。

 これまでのGPU Boostの欠点は、Temp TargetとTempの上限(上図右側グラフで言うところのSW Temp Cap)の間に開きがあっても、Temp Capは1つしか設定できず、Temp Targetを一度超えたら一気にベースクロックまで下がってしまうことだった。

 Temp Cap未満Temp Target以上の領域にいる時はもう少しクロックを上げても大丈夫ではないか(むしろそこに余力がある)というのがGPU Boost 4.0の考え方だ。AMDのCPU「Ryzen」のPrecision BoostとBoost2の考え方と同様に、既存のブーストでは見逃されていた領域までブーストすることで性能を絞り出そうという考えなのだ。

GPU Boost 4.0ではTemp TargetとSW Temp Capの間に新たなTemp Target(T2と表記)を設け、その区間内にいる間はベースクロックより上のクロックにする。図中で「Higher Perf」と描かれた領域が、GPU Boost 4で得られるメリットとなる。

 Power TargetとTemp Targetの調整に加え、第2のTemp Target(T2)とクロックの関係を調整できるようになる……というのがGPU Boost 4.0の変更点だ。そして、この機能は対応したOCツールにより変更が可能になる。現時点では具体的にどのOCツールが対応するか明らかになっていないが、EVGAの「Precision X1」が一例として挙げられる。ただし、挙動がまだ練られていないようなので、今回検証は見送った。

EVGA製OCツール「Precision X1」のテストビルドでは、第2のTemp Targetとクロックの関係を操作できるようになっていた。Turing以外だと(テスト版ビルドでは)何も表示されない。

自動OC設定機能「NVIDIA Scanner」の効果

 そして、前回解説したOC Scannerの効果についても解説しておこう。これもテスト版のPrecision X1に実装されていた機能で「Scan」ボタンをクリックするとオーバークロック(以下、OC)の最適値を探り出すモードに入る。バックグラウンドでグラフィックタスクとコンピュートタスクをバランス良く実施し、クロックを上げても正常に動作するかどうかチェック。駄目なら電圧を上げてやりなおす……というプロセスを自動的にやってくれる。

 大体20分程度で終了し、途中でエラーが起こってもシステムを巻き込まないよう配慮されているのがこの機能のウリだ。Power Targetやメモリークロックは変化せず、今回試した限りではコア30~50MHz程度のOCにとどまった。

スキャン実行中。GPUにはグラフィックとコンピュートタスクが両方実行され、時間経過とともに緑のライン(V-Fカーブ)が少しずつ上に持ち上がっていく。エラーが出ると緑のラインが戻ったりするが、気長に待つのだ。

RTX 2080 FEをNVIDIA Scannerでスキャンさせた後の状態。青いラインがデフォルトのV-Fカーブで、緑のラインがNVIDIA Scannerで検出されたセーフなOC設定。緑のラインが青いラインよりかけ離れているほど、OC幅も大きい。

PascalベースのGPUの場合、GPU Boost 3.0までの対応なのでScanボタンは機能しない。かわりに緑のラインをマウスでチクチク上に持ち上げることになる。点の数が多すぎて最適値に詰めるのは辛い。

RTX 2080 FEをスキャンさせた結果。

RTX 2080 Ti FEをスキャンさせた結果。試行ごとに微妙な差が出る可能性があるが、今回の個体では30MHz~50MHzのゲインが得られた。

 では、OC前と後のパフォーマンスを比較してみよう。ここではざっくりと「3DMark」と「Shadow of the Tomb Raider(SotTR)」の2本で比較する。SotTRはフルHDのみで検証した。

「3DMark」のスコアー。

「Shadow of the Tomb Raider」フルHD時のフレームレート。

 OC幅が微妙だったせいもあるが、スコアーもフレームレートの伸びも小さい。ガッツリOCしたい人には無用の機能だが、最低限の手間とリスクで性能を稼ぎたい時には使えるかもしれない。

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

この連載の記事