火星――それは子供の頃から少年たちをクギ付けにしてきた惑星である。
無敵鋼人ダイターン3、機動戦艦ナデシコ、Z.O.Eしかり……etc。SF作品の舞台としては鉄板な場所でもあり。現代では外宇宙生物の存在の示唆の痕跡があったり、移住すらを視野に入れた研究も盛んである。
そんな第45回で紹介するのは「Off world trading company」火星を舞台にした、企業間経済戦争をモチーフにしたリアルタイムストラテジーゲーム(以下RTS)だ。
本作品は「シヴィライゼーションシリーズ」でお馴染みの“Soren Johnson”氏の指揮により開発されている。氏と言えばAIデザインで有名で、本作でも狂おしいほどムキになれる難易度のバランスが組み上げられている。
そもそもRTSてなんぞや?
。普段の紹介であればジャンルの紹介でトピックを取ることはほぼ無いのだが、RTSは(日本では)あまり馴染みがないため解説を設けたい。
まず、前述の「シヴィライゼーションシリーズ」も有名なストラテジーゲームであるが、プレイヤーはターン内でじっくりと時間をかけて熟慮しユニットを動かしたりできる。一方、「Age of Empire」などにおけるRTSと言うジャンルでは常にユニットに指示を出し、生産と行動を行なわなければならない。相手も常に同じ条件で行動するため、周りに気を配り続ける必要があるのがRTSだ。
賞金付きの競技ジャンルとしても盛んであり、Steam外のゲームだが「StarCraft II」、異論もあると思うが「League of Legend」や「Dota 2」もRTSと言っても良いだろう。
そういう意味ではやや敷居が高いと思われがちなRTSではあるが、今回「Off world trading company」を取り上げたのは、同ジャンルのなかでも“操作が忙しくない”、“ユニットを細かく操作する必要がない”という取っつきやすい部分がひとつ。そして“覚えなければいけない要素を徹底的に少なくしていること”が同ジャンルのなかでも際立っていることにある。
いざゆかん火星
本作は、遊び方が異なるモードが存在する。シングルプレイとマルチプレイのメイン2項目に加えて、シングルではスカーミッシュモード、キャンペーンモード、DLCのブルーチップキャンペーン(特定の状況下でプレイを行なう詰将棋のようなモード)だ。マルチプレイではランクモードとロビーを立てての自由対戦に対応している。
モードの説明をしたところで、本作の基本的な遊び方を解説していこう。(チュートリアル部分も含めての解説となると非常に長くなるため、ある程度は省いて説明させていただくことをご了承いただきたい。)
まずは本作にはシングルプレイにおけるモードはスカーミッシュモードと言う、自分で設定を決めて自由にCPU対戦を組み立てるモードと、それぞれのキャラクター毎に決められた条件で火星の覇権を奪い合うキャンペーンモードに分かれている。今回は説明しやすいスカーミッシュモードで説明する。
ゲームが始まると土地の選定から始まる。これはどのモードでも共通だ。マップ上に見える黄色い柱線が種別こそ不明だが資源の位置を表しており、スキャンを行なうことで資源配置を確認できる。また、スキャンの回数に制限は無い。土地ごとに埋め込み資源の割合が決まっており、この資源がここにあるかもしれないと言う予測もアイコンで出るが、こちらは資源が全くない場合もある。
ちなみに、中央に見えているのが火星都市で、プレイヤーとAIの会社の従業員たちの住居でもある。
資源配置を確認した後、四つある企業から自身の企業を選ぶことになるのだが、それぞれの企業には特色があり、その特色に合わせた土地を選ぶのが望ましい。
まず、本作品における勝利とは“相手の会社の株式を全て買収する”という一点のみだ。いわゆるTOB(公開株式買い付け)と言うものなのだが、完全に買収した場合は子会社として経営を乗っ取ることができる。(プレイヤーがされた場合は即ゲームオーバー)
資金を集めるのは、資源を採掘し、加工もしくは売却するというのが基本だ。そのため、できるだけ資源の近くを抑えることも重要なのだが、マーケットの価格を調整することも戦略のひとつである。では、「資源を乱獲すればいいのでは?」と思うかもしれない。そうはいかないのがこのゲームだ。
と、言うのも上記画像の左下のCLAIM(占有権)と言う部分がそうなのだが、建造できる施設の合計上限は決まっている。そのため企業ごとにどうやって立ち回っていくかが、このゲームの肝であり、熱い部分でもある。
カネを生み、カネで殴りあう。
それでは、本作品のストラテジー部分の紹介をしよう。ストラテジーゲームは「ファイアーエムブレム」にしかり「Age of Empire」にしかり、知略のぶつかり合いと命の削りあいの果てにあるカタルシスに魅力を見出すものである。
果たして、本作品の命の削りあいとは何か?――『金』だ。
金が無ければ何もできず、金があっても使わなければ意味がない。正に金の本質でもある。「Off world trading company」における対戦とは智謀を張り巡らせ、その先にある“玉”こと株式を制圧してしまうことだ。
資源を採掘するには対応した施設を資源に建てるだけで良い。距離に応じて輸送費が発生するが会社の直下資源であれば輸送費は発生しない。また、資源は所持数の隣にあるプラスマイナスのボタンを押下すれば提示された価格で市場に即売却/購入できる。また、施設の建造に足りない分は自動で補てんされるため手動で買い足す必要性はない。
また、ランダムイベントとして時折オークションが開かれることがあり(画面右上)、そこでは占有権や各種妨害行為などを含めて競り合いが発生する。不必要でも値段を吊り上げて高額の借金を押し付けるといった戦略も有用だ。
さて、ここまでが基本の部分だ。資源を採掘し、売却して利ざやを稼ぐ。次はどうやって会社を拡大していくかだ。建造できる施設の上限が決まっている話はしたが、その上限は増やせないのかと思う方もいるだろう。もちろん答えは、増やせる、だ。
先ほどの画像の左下にある大きいアイコンを押せば、決められた資源を消費し、会社の規模を拡大することができる。拡大すれば占有権の増加に加え、社員も増える。社員が増えれば維持費もかかる。やや頭の痛い話であるが、そこはCEOとしての度量と計算が試される部分だ。
資源を採掘し、会社の規模を大きくすることが流れだと言うのはここまでの話で分かっていただけたかと思う。規模を拡大するのはデメリットばかりのようにみえるかもしれないが、占有権以外のメリットもある。それが応用施設の建造許可だ。
パテント(特許技術)の取得と開発、資源の採掘量を増やす、市場価格を上下させる、金を産み出す娯楽施設・・・・・・そして、大量の資源を外宇宙へ売り飛ばすロケット施設である。
マネーゲームの行きつく先は、ロケット施設で資源を外宇宙へと売り払うことにあると言ってもいい。売り払う額は火星のマーケット価格を遥かに超えており、ロケットを一度飛ばせば株に変わると言っても過言ではない。
殴り合いの果てに
今回は文字数の関係で説明を省いたが、キャンペーンモードでは特殊なプレイを行なう。それぞれ選べるCEO毎に初期から建てられる施設が決まっており、ターンフェイズアクションも1マップ毎に追加される。ターンフェイズでは追加で建てられる施設の購入、次の戦闘拠点の考慮とスカーミッシュとは違ったプレイになる。また、最終戦以外では勝利条件がそれぞれ異なり、施設の建造数での勝利など、デフォルトの勝利条件以外で戦うことになる。
さらに、Steamワークショップにも対応しており、日本語化MODも公開されている。現在はバージョンアップに対応していないため使用できないが更新に期待したい。(2017年2月14日段階)
RTSとして見れば、初心者でも取っつきやすい操作の簡略化に加え、経験者でも唸る戦略の奥深さ。さらに、AIのハンディキャップを無しにしてしまえば経験者でも勝つのが難しいほど、本作品のAIは良く出来ている。スコア上位になればAIでも関係なしにAI同士で衝突を始め、プレイヤーが上にくればプレイヤーの妨害を執拗に行なうといった、人間臭い動きは大したものだ。
また、対人戦でなければゲームスピードは自由に可変出来てしまうため、どうしようもなく悩んだときはポーズして熟考を重ねることも不可能ではない。RTSと言うジャンルにおいては反則とも言える行動だが、むしろそれもあり、RTS入門にも適当だと言えるのである。
ぜひ火星で札束と株で稼いでいただきたい。
Off world trading companyの推奨動作環境は?
推奨環境でもグラフィックボードのGeforce GTX460と要求環境はそこまで高くはない。グラフィック関係でのスペックの心配は無いだろう。反面、クアッドコア以上のCPUが推奨となっているが最低値が『Core 2 Duo』となっており、ハイエンドなCPUでなくとも問題はないと思われる。
『Offworld Trading Company』
●Mohawk Games
●3980円(2016年4月29日リリース) ※価格は記事掲載時点のものです
対応OS Windows 7以上
ジャンル ストラテジー RTS 宇宙 SF エコノミー
Copyright © 2016 Mohawk Games and Stardock Entertainment. Offworld Trading Company is a trademark of Mohawk Games. All rights reserved.
■著者:rate-dat
・Steamのプロフィールページ:Steam コミュニティ :: ratedat
・Twitter:@rate_dat
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