ごきげんよう、アスキーの酒好きナベコです。今回は珍しいジャンルのビールのおはなし。みなさん、バレルエイジドビールってご存知ですか?
即完売話題のバレルエイジドビールとは
「よなよなエール」で有名なビール会社ヤッホーブルーイングでは“バレルエイジド”という特殊なジャンルのビール「バレルフカミダス」の2016年版を11月11日に発売しました。
バレルフカミダスの販売は今年で4年目。毎年、公式通販サイトネット「よなよなの里」にて数時間で完売してしまうため、今年は年間契約サービス利用者限定での販売と、一部セットでの販売のみ。それも発売後わずかで完売しているとのこと。ファンの方は発売をまちわびて受付開始と同時にポチッているわけですね。
現在はびん詰めされた製品はなくなってしまい、ヤッホーブルーイング公式のビアレストランである「YONA YONA BEER WORKS」の3店舗(赤坂店、青山店、神田店)や、全国のクラフトビール専門店にて一部扱いがあるだけ。
なぜそんなに人気? バレルエイジドビールというジャンルが日本では珍しく、ビール好きから注目されているのです。メディア向けの試飲会でヤッホーブルーイングの醸造責任者から開発背景をきいてきました。
アメリカはバーボン樽が豊富だから「樽熟成」が流行った
バレルフカミダスの製造にあたって全体を統括をしているのは森田正文さん。これまでに女性に人気の「水曜日のネコ」、海外で好評を得た「SORRY UMAMI IPA」といったヤッホーブルーイングのビールを手掛けています。
バレルエイジドビールとは何か? 簡潔に言うと、木樽に入れて寝かせたビール。ウイスキーやワインの熟成に使用した樽を使用し、ビールに香りをまとわせます。
ビールは通常ステンレスタンクで発酵、熟成するのですが、木製の樽はひとつひとつ個性が違うため、仕上がりが読みづらいというのが大きなポイント。たとえば、今年のバレルフカミダスはアメリカでバーボン樽として2年、その後日本に来てジャパニーズウイスキーの貯蔵に20年間活躍したもの。どういう経緯でどんな香りが染みついてきたかなど、同じような環境の樽でも厳密には異なるため、少しずつ違った風味のお酒を醸し出すことになります。
そこにあるのはザ・ロマン。
どんな味に仕上がってくるかは一期一会。大量生産には向かないですが、ブルワリーの力量や創造性が試されるので、ロマンあふれるビールなのですね。
森田さんは2012年にエールビールの醸造の勉強にとアメリカを回っていたところ、カリフォルニア州サンルイスオビスポのとあるブルワリーでバレルエイジドビールに出会い衝撃を受け、以来その魅力にとりつかれたそう。
とはいえ、やはり大手メーカーだと製法上も着手しづらい分野。日本でいうと、サントリーが今年「山崎」の樽で寝かせた「ザ・プレミアム・モルツ マスターズドリーム」を発表して話題になりました。ですが、少量のため、一般販売はなく抽選の懸賞品としての提供でした。
アメリカではバーボン樽が豊富という背景もあってバレルエイジドビールがトレンドと言われています。森田さんいわくアメリカには4000ヵ所くらいブルワリーがあってそのほとんどがバレルエイジドビールもつくっているとのこと。市場こそ小さいですが認知は広まっているそうですよ。ですが、日本ではなかなかお目にかかれない、というのが現状。
ノウハウもなく、できあがっても特殊な味わい。さらに大量生産もできず、リスキーなのですよね。
きっかけはウイスキーの元モルトマスター
そんなリスキービールの開発になぜ踏み切れたのでしょうか。きっかけは、森田さんいわく「ブルワリーの充填で働いていたおじいちゃん」。
どうにかしてバレルエイジドビールをつくれないかと森田さんは考え続けていましたが、社内で承認を通すことができませんでした。そんな時に、ヤッホーブルーイングのブルワリー内で働いていたおじいさんがウイスキーの樽をかついでやってきたということ。この人こそ、もとはとあるウイスキー蒸留所のモルトマスター。秘蔵していた樽が空いたから使ってみないかと、持ってきたそうなのですね。
木樽は乾燥すると隙間が空いてしまうので、湿っているうちに新たな液体(お酒)を充填しなくてはいけない。ということで、急かされるようにビールを詰めて寝かせてみたところ、これがおいしい仕上がりに。この味が決め手となって、2013年から本格的に開発するに至ったということ。
おじいさまが持ってきた樽がきっかけになったことに、記者は胸が熱くなりましたよ。
「バレルエイジドビールも今年で4年目になりますので、なんとなく樽の個性によって、どういうふうにビールが変わっていくのかというのがつかめてきました。今年は、若い世代にノウハウを継承したいという思いもあってブレンド担当に20代の社員を指名しました。最初に樽を提供してくれた元モルトマスターも70代なので、ウイスキーの知識やバレルエイジドの技術を若い世代にも引き継いでもらいたいです」(森田さん)
これがロマンの味!!
バレルエイジドがロマンあふれるビールで、ヤッホーブルーイングが製造を手掛けるようになったのも、奇跡的な人との繋がりがきっかけだと知ると、目が覚める思いです。樽をかついでやってくるおじいさんってなかなかいない。
ざっと説明をきいてきましたが、記者としては何はともあれ飲みたい! 今年のバレルフカミダスは厳密に言うと4種。異なる樽で寝かした3種と、ブレンデッドが1種。“B-18”というものを飲ませてもらいました。Bとは“バレル”のこと。
アルコール度数が高いのでとテイスティング用に出されたのは少量。
まずはグラスを揺らして、香りを嗅いでみます。ウイスキーというか、甘~い香り。バニラのようなカラメルのような、メープルのような。
口に含むと、濃厚でずっしりしているのに、角がなくてまろやか。丸みを帯びた味です。はてしなく強烈で、鮮烈。炭酸はほぼ感じません。
これはいったい……。本当にビール!?
ウイスキーとビールの中間のような。ビールであって、ビールではない。ビールだと思って飲むと次元が異なる味わいにびっくりします。
ひとつわかったのは、ビールとは言ってもグビグビ飲むものではない。アルコール度数も高いのでウイスキーに近い飲み方でゆっくり飲むのがいいのでしょう。あまりに濃厚なので食中酒には向かないという印象ですが、森田さんが言うにはお菓子の「パイの実」がぴったりということですよ。庶民的でうれしい。
ちなみに、バレルフカミダスの原酒はヤッホーブルーイングの「ハレの日仙人」。ある程度アルコールが高くないと樽熟成に耐えられないので、“バーレーワイン(大麦のワイン)”というジャンルのものを使用しています。
原酒ハレの日仙人とバレルフカミダスを飲み比べると、明らかに別もの。樽で寝かせたほうが明確に香りが華やかで、味はまろやかになっています。なお樽で寝かせるとアルコール度数がわずかに上がるそうですが「水分が揮発しているのか、樽の中で二次発酵が行なわれているか、いずれかだと思われます」ということ。
ビール好きは一度飲むべし(byナベコ)
樽熟成ビールはビール好きであれば一度は飲んでもらいたい。ビール好きであれば、と言いましが、ウイスキー好きにも飲んでほしい。ビールとウイスキー両方好きであれば、もっと飲んでほしいと思いました。
冒頭にも書きましたが、人気のため市販の商品はすでに売り切れ。通販で買えないのは残念ですが「YONA YONA BEER WORKS」店舗で販売しております。
以上、この日も昼から飲んでしまったナベコがお届けしました。なお、バレルフカミダス、アルコール度数高いです。12.5%です。みなさまは仕事を残していない状態で召し上がることを強くお勧めします。
訂正とお詫び:一部訂正しました。(12月7日)
ナベコ
寅年生まれ、腹ぺこ肉食女子。特技は酒癖が悪いことで、のび太君同様どこでも寝られる。30歳になるまでにストリップを見に行きたい。Facebookやってます!
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