VRは人間の生活や社会を変える!
5月10日、グリー株式会社および一般社団法人VRコンソーシアムが主催するVR業界人のためのカンファレンス「Japan VR Summit」が開催された。本イベントにはVR業界を代表する人物が多数登壇し、テクノロジー、エンターテインメント、ビジネスなど多岐のジャンルに渡る5つのトークセッションが行なわれた。
開会にあたり、本イベントの実行委員を代表して挨拶したグリーの荒木英士氏は、このイベントについて、“VRの現状を把握し、将来に向けてのビジネスチャンスを見つけるための場所”として位置づけ、次のように語っている。
「VRというのは、これまでの過去数十年、コンピューターテクノロジーが人間の生活や社会を変えてきたものを、さらに一歩推し進める次世代の技術であるというふうに考えている。今年はVR元年と呼ばれているが、実際に世の中にインパクトを与えていくためには企業側、ビジネスサイドからの働きかけが欠かせない」。
このように荒木氏が語った趣旨にのっとり、本稿ではJapan VR Summitの各セッションで語られたポイントを横断的にピックアップしてお伝えしたい。
VRデバイスは全てのコンピューティングシーンを置き換える存在に
ハードウェアプラットフォーマーやクリエイター、投資家まで、本カンファレンスで話をした全ての登壇者が、グリー荒木氏のようにVRの未来を強固に信じていることは間違いないところだ。
まず、Oculus Rift、HTC Vive、PlayStation VRといった主要なハイエンドVRシステムを開発してきたプラットフォーマー自身が、非常に長期的な視野で楽観的な展望を抱いている。
「VRがもたらす大変革」と題されたセッションで登壇したOculusのPertnerships Lead、池田輝和氏は、Oculusの親会社であるFacebookの大型イベント「F8」でのマーク・ザッカーバーグ氏の発言を踏まえ「Oculus Riftにはじまり、将来的にはメガネサイズまで小型化し、スマホの代わりになっていく。一人一台、バーチャルという言葉もなくなる」と、VRが全ての人のもとに届く将来像を描いて見せた。
これに賛同するのは、HTC Viveを開発したHTCのVR担当副社長、Raymond Pao氏だ。Pao氏は「2016年のVRは、いわば2006年におけるスマートフォンのようなもの」という、カンファレンスの登壇者の間で広く共有されている認識を披露。やがてVRは全ての産業で使われ、全ての人々に届き、全てのスクリーンを置き換えていくことになる、というビジョンを示した。その上でPao氏は、OculusやSIE(Sony Interactive Entertainment)と共に「健康的な競争」を通じてVR業界全体を盛り上げていきたいと、VRシステムを製造するライバル社とも協調していきたいとの抱負を語っている。
なお、HTCは4月に1億ドル規模という世界最大のVR専門アクセラレータープログラム「Vive X」を立ち上げ、VR関連のスタートアップ企業を手厚く支援することで、コンテンツ面の拡充も図っていく考えだ。
この「健康的な競争」という考えかたは、エマージェントなVR産業を盛り上げていく上でとても大事な概念。実際、PlayStation VR(PSVR)を開発する吉田修平氏は、2010年にPS3用のコントローラー「PlayStation Move」を発売した当時からPSVRに繋がる研究開発が始まっていた経緯を引き合いに出しながら「OculusがDK1、DK2を出してくれたのは非常に嬉しかった。それがなければ、PSVRの開発もここまで順調に進まなかったかも」と、大きなライバルの登場によって却って社内でのVR研究の重要性や、理解、熱意が高まったという事情を明かしている。
こうしたVR技術や市場の将来についての楽観的な展望は、中国という巨大市場に立脚して世界最大級のインターネット関連サービスを展開しているTencentのR&D上級マネージャー、Li Shen氏からも具体的なところを聞くことができる。
第2セッション「海外VRビジネス最前線」の中で明かされたところによれば、Tencentでは2020年までに1億台のHMDが普及すると考えているほか、将来的にはPCやスマホと連携して使う拡張機器としてではなく、単体で使えるAll-In-Oneタイプが主流になると予想している。この予想を元に、TencentではPC用ヘッドセットや、各種コンテンツの研究開発を進め、中国国内のみならず日本のVR関連企業にも積極的に投資を行なっていきたいという考えを示した。
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