2015年05月18日11時30分

マインドストーム義足を作る子供から悩める東大生まで IT×モノづくりの教育ハックを聞く

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 4月20日に開催されたセミナー「教育をハックする 教育×IT関係者で考える次世代IoTプロダクトをつくるテクノロジー教育の現場」より講演内容の一部を公開。最新のITを取り巻く現場で、IoTハードウェアといった新しいモノを生み出すためのIT教育はどうあるべきなのか。最前線で指導に携わる関係者にうかがった。

 登壇者はプログラミング教材として世界的に普及している教育版LEGO(r) Mindstorms(r)(レゴ マインドストーム)エバンジェリスト・アフレル渡辺登氏、数多くのハードウェアスタートアップを輩出しているTodai To Texasプロジェクトを手がける東京大学菅原岳人氏、人気を集めるIT/最先端技術を使ったモノづくり教室Qremoの島田悠司氏。司会は大江戸スタートアップの北島幹雄。

 アフレルとQremoのセミナー冒頭でのレクチャー資料も特別公開。本文と合わせてチェックしてほしい。

●教育版レゴマインドストームを使ったミライをつくる体験型学習 Afrel


●IT x ものづくり教室Qremo[クレモ]概要 Qremo


●この10年、何が変わってきたのか

──登壇される御三方、ちょうど10年ずつ世代が異なる形です。IT教育の変遷、この10年での変化をお話いただけますか?

渡辺:10年前、国際競争力は組み込みソフト屋だ、エンタープライズ方面を強化しなくちゃいけないという話が出ていました。一方で当時、子供たちのプログラミング教育はあまり活発ではなかったんです。『Scratch(スクラッチ)』につながる種が出始めたような。

 ハードウェアを使った教育では、それこそチープなマイコンボード、もしくは高すぎるマイコンボードを使って、アセンブラやったり、Cやったりだとかそういうレベルでした。

 マインドストームでは黄色い『RCX』(レゴ マインドストームの第一世代)が日本上陸して、じゃあロボコンでもやりながら、楽しくプログラミング学ぼうかなんていう出発点が10年前です。当時は面白いと思いましたね。中身はH8(日立製作所開発のマイクロコントローラ)なんですけど、こんな面白いことができるんだって。マイコンの使い方、システムの作り方が面白かった。

──タイミングでいうと、何年前くらいが変わり目に?

渡辺:ここ5年ぐらいでArduino(アルドゥイーノ)が出てきてから爆発的に時代は変わったと思っています。モノを使ってプログラミングするっていうムーブメントというか、そういう時代になったなと。だから私は自ら組み込み屋さんなんて言うんですけど、組み込み屋さんがマイコンから取り残されちゃって、ITエンジニアの人たちがArduinoとか使いながら楽しそうにプログラミングやっているっていうのを、こう指くわえて見ていたっていう。そういう感じですね。

――学生の変化はいかがでしょうか。

菅原:ここ数年で、一種のテクノロジー教育を受けてきた学生は、完全に人種が違うと思っています。まず何を相談しに来るかっていうと、「アルメガ(Arduino MEGA)10個借りてください」とか、「ラズパイ(Raspberry Pi)ないんですか?」みたいな話を平気でしてくる。私もCOBOL、Javaは書けますが、それ以外はわからない。その世代から言うと、マイコン屋さんとはかけ離れていて、むしろ(ハードウェアで)何ができるのっていう立場だったのが、今は逆転したといえます。そういった学生にとっては、ハードウェアとソフトウェアが一緒になってできることが増えているという状況です。

 ただ、大学で学ぶ最新知識も10年経てば陳腐化します。ちょうど今が谷間というか、パラダイムが変わった世代になってきているので、これから社会に出ていく、特にハードウェア系を含めたテック系の学生はだいぶ違うんだろうなと感じます。

渡辺:今、学校でしっかりとプログラミング教育を学生が受けているみたいなお話になっていますが、実際に高校でどれだけ教えているかという話では、結局教えられる先生は多くありません。セキュリティーやエクセルなどの話だけで終わる所も多い。一部の限られた場所でできる先生が教えている、もしくは工業高校・高専といった機関とでは違うかなと思います。菅原さんのおっしゃっているのはそれなりにやっている、学ぶモチベーションが高い人だという違いはあるかなと。

菅原:まさにおっしゃるとおりです。多くの学生は、実習があったとしても”ハローワールド”で終わっているわけです。その中で一部が、高校のパソコンクラブみたいな所にいて、ひとりでもデキる先輩や先生がいると育つというのはあるんです。ですが、現実的にITリテラシーが本当に高い高校までの教育者の方は非常に少ないと感じています。

 大学の中で私が若干危機感を感じているのは、できる学生とできない学生の差がすごく開いていて、入る前でスタートラインがかなり違うわけですよね。そうすると同じレベルで入っているにも関わらず、実は全然ベースが違う人間と、ある意味競争しないといけないという部分で、学生からの悩み相談も結構来ます。

――子供に教えているQremoではどう感じますか?

島田:子供たちと接していて思うのは、いわゆるギークではないライトな層がプログラミングに関わるようになっています。今までサッカー教室に行っていたような子供は昔だったら通わないと思いますし、そもそもなかったですよね。ですが、実際にユニフォームを着て通っている子も多いです。

 新しいツールが一般的に広まったのもひとつで、メディアや親だけでなく、子供自身が自分で調べてたどり着いてくるんです。YouTubeで『マインクラフト』を知り、『マインクラフト』ですごいモノを作るにはプログラミングができなきゃいけないんだとたどり着いて、親に声をかける入塾動機もあります。

seminaire
レゴ・エデュケーション販売代理店アフレル渡辺登氏


●iPhoneやiPadは自分のやりたいことが再現できるツール

――ご自身が関わっている分野に関して、それぞれ海外事情との比較を教えていただけますか。

渡辺:マインドストームの普及度合いではアメリカは桁違いです。海外では多くの学校で使われており、最近では中東・アジアで国家産業政策としてプログラミングやソフトウェア開発を取り入れる話も聞きます。日本も必要だという話は出ていますが、まだ具体的な動きが見えていない所で心配です。

 一方でコンテスト観点だと、まだドメスティックですがロボットコンテストはやはり日本の文化になっていますので、どんどん海外に展開していきたいですね。私は英語が苦手ですが、ホワイトボードさえあればC言語でコミュニケーションが取れるという風に自負していますので。ロボコンを通じながら、海外とうまくやっていければと。

菅原:テクノロジー教育そのものの観点から行くと、やはり海外はGoogleなりFacebookなりエンジニア社長が自分たちのプロダクトで世の中を変えたという背景があって、それを見た人たちがプログラミング教育の重要性を肌で感じられるかが大きな違いだと思います。

 ただ日本も悲観ばかりしていられなくて、今回TTT(Todai To Texas)で英語は流ちょうにしゃべれなくても、ハードウェアやアプリでもいいんですが、実際に作ったモノを持っていくとかなり世界に通じるわけです。テクノロジーというよりは、エンジニアリングの力かもしれませんが、特にハードウェアが絡んでくる分野でまだ日本は通じます。教育面でも早く追いついて、次世代を育てていくのが必要だと感じます。

島田:一番気になっている所は、海外のプログラミング教育がどのように評価をしているかという部分です。実際に聞くと、テストの正しい解答をそこまで求めてなかったりするんですね。過程を重視していたり、特定の答えではないものでもクリエイティブ性を評価してくれる。

 では日本においてどうかって考えた時に、プログラミングでも点数評価が求められてくるのは怖いと思っています。今その点は求められていないんですが、必修化された時「プログラミングの点数を上げてください」というニーズが出てくると、変な方向に進みかねないとは感じています。

――現場では、生徒はどのようなモノを作っているのでしょうか。

島田:驚いた例ではマインドストームで義足を作りたいと言ってくれた子がいました。自分の中でエンタテイメントとして作るとか、目の前の課題をクリアするっていうのが楽しくてやっていたのに、目的意識が芽生えたことが大きいです。実際に作るとなると、ジョイント部分が足りなかったりして、そうなった時に彼は3Dプリンターを使って、足の関節の部分を作ると言って。きちんとはめるものが必要だという一連の気づきと、そこから3Dプリンターなら作れるっていう所、そして実際に作ってみた経験というのは本当に大きいのかなと思います。

菅原:大学なので大体びっくりするモノをみんな作ってくるんですけど、私としては作るまでのプロセスやメソッドの方をむしろ重視しています。例えばTrickey(トリッキー)をご紹介しましたけど、彼らが作る前のプロダクトアイデアって50個以上自分たちで出しているんです。Googleドキュメントで議論していたデータを見せてもらったんですけど、特許性のありそうなものまでありました。

 本当に自分の作りたいものを作ってみたら、どうやらこれを欲しい人は世の中にもっといそうだと思うパターンがある一方で、マインドストーム義足のお話がありましたが、モノづくりのプロセスやメソッドを学んで使うことで、世の中のある目的のために何かを生みだすことができる。その”気づき”が重要で、そこで生まれたものは面白いですよね。

――幼児~低学年の子供はどういう形でプログラミングに親しんでいくのでしょうか。

島田:2歳とか3歳だと当たり前にパソコンのディスプレイをなぞる子がいます。それくらいスマートフォンは身近で、デジタル画面は全てタッチパッドだと思っているんです。その点で、彼らにとって身近なデバイスは何のためのものかが大事なポイントとなります。

 iPhoneやiPadを使えば自分のやりたいことが再現できたり、何か面白いことができるってわかるとモノの見方は変わってくるんですね。ゲームだけではなく、こういう機能をつけてみたい、こういう物を作ってみたいってなると、彼らはすごくクリエイティブな思考に移っていくと感じています。

seminaire
東京大学 産学連携本部 菅原岳人氏


●我々も想像できない世界をいくつ経験させられるか

――続いて、教育をする側のお話を聞かせてください。先生へのサポートはどのようにとられていますか?

渡辺:義務教育にあたる中学校では、技術科でプログラミングが必須になっています。ただ、教えるにもわからない先生たちが多く、我々は指導用資料を作ったり、先生向けのトレーニングを行っています。

 まだまだ公立では専門の先生が少なく、家庭科や理科の先生が兼任でやる所もある。その方々にプログラミングの根本的な魅力を理解していただきたいと思っています。マインドストームでロボットを組むなど面白楽しく学べるっていうのは心がけているんですが、課題ですね。

 さらに高校に行くと教科で「情報」がありますが、そこでもプログラミングは必須ではありません。セキュリティー教育・WEBの使い方・エクセルといろいろ教えなきゃいけないけれども、プログラミングも楽しく教えるといいことあるよみたいなところを啓蒙しつつ、先生向けのレクチャーっていうのも非常に重視してやらせていただいています。その前となる文部科学省、教育委員会、レゴ社まで含めてアプローチしているのが今の状況ですね。

菅原:大学内で技術系の学生を育てるのってやっぱりロボコンとか、鳥人間とか、車作っちゃうフォーミュラ系とかの学生活動が支えている部分が大きい。ただ本当に大変なプロジェクトなので、それを担う先生が退官してしまうと顧問をやりたがる人がいないんです。そうすると学生の自主活動自体がなくなってしまうので、東大ですら危機的な状況があったりします。現在、全く教員の評価にはつながらないんですけども、我々としては、やはり教員同士でもそういうプロジェクトをきちっと継承していくというのはやらないといけないなと。

 部活の顧問の引き継ぎとは異なり、大学では研究室の先生って基本的に一国一城の主なので、やめたら誰も引き継がないことが起こりうるんです。みなさんのなかに鳥人間コンテストをやったことがある人いますか? あれは技術の塊です。姿勢制御や自己位置推定といった技術がものすごく詰まっています。鳥人間コンテストが日本から失われると、実は若い航空エンジニアが減ってしまうかもしれない。きちんと引き継いでいかないといけないんです。TVなどの放送機会も減り教える人がいなくなると、実は日本の技術力が低下することにもつながってしまうと。

島田:カリキュラムの話にもつながるんですが、大人がプログラミングを学ぼうって思ったときに教科書はたくさんあって、大学でもある程度整ったカリキュラムがありますと。では、それを子供に提供する時に、同じものをアレンジしても簡単にははまらないんです。例えばハローワールドから始まり、関数やポインター、構造体とかを子供たちに教えても、そもそも興味を持ってくれないんですね。

 Qremoでは、彼らが楽しいって思えるカリキュラムを本当に大事にしています。別にポインターや構造体を教えられたいわけではないし、学びたくもないんです。勉強になってしまったらその時点で終わりだと思っています。シューティングゲームやもぐらたたきゲームを作ろうっていう中に関数の学びの要素を入れ、それで点数をつけられるようになるよとか。勉強のための積み上げではなく、もしかすると順番が前後するんですけども、やりたいテーマを与えることを重視しています。


――生徒をより成長させる重要なポイントはどこにあるのでしょうか?

島田:我々の中で自信を持てるカリキュラムができあがっていたとしても、それを外れる子供も絶対に大事にしてあげることが必要です。ある日突然、先ほどの義足を作りたいとか特定のこういうRPGを作りたいってなった時にそのモノを作ることが一番で、作るためにはどうしたらいいか、作ってみて失敗したときにどうサポートするといったカリキュラムにない部分がすごく大事です。実際にそうなった時、どうやって彼らの作りたいものを再現するか一緒に考える所は、それこそ非常に大変なところではあるんですけれども。

渡辺:今の話を聞いて先生にそれを求めるのは一方でつらいなと、頭を抱えてしまいました。私の中でキーワードとして出たのは「素敵な勘違い」っていう好きなフレーズなんですけど、やはり何かを作って人にすごいねとか喜んでもらったり、あとロボコンでも、他が総崩れする中、自分たちがたまたまゆっくりだったけど、勝っちゃったみたいな。そういう機会を受けるとその先どんどん素敵な勘違いしながら、背伸びできるようなことあるんじゃないのかなと。今までの私の経験上もそうですし、ちょっと勘違いしながら伸びてきた子供たちとかを見るとそう思います。

菅原:我々の場合にはがっちりしたカリキュラムを持っているわけではないんですけども、成長ポイントとして意識しているのは、それが成功しようが失敗しまいがとにかくやったことのないことを何個やらせるかです。TTTは海外に持っていくプロジェクトなので、とにかく普通なら話せない人と話をする機会を設けるようにしています。

 トリッキーを開発した学生は、この先の展開を悩んでいて、SXSWのパーティーか何かでロジテックの偉い人に会ったので、悩み相談をしたらしいんです。「いやあこれ売れますかね?」「これ会社として続けた方がいいですかね?」といったことを一生懸命話したんだけど、「こんなキーボードなんて君の人生の1/100もないくらいの些細なことなんだから、好きなようにやったらいいじゃん」と。その場だけのアメリカ人の結構偉い人に言われると、本人は「あ、そうなんだ」って悩みが晴れてしまう。

 メディアにも実は結構取り上げられていて、現地でTechCrunch、Tech in Asia、Gizmodoやmsn news、あとはなぜかナスダックニュースなどに載ったりしてるわけです。そういう人たちに話をすると、やはり向こうもプロなのでいろいろ話してくれて、非常に世界が広がることがあります。我々も想像ができないような機会を、何個提供できるかにどちらかというと注力しています。

――TTTでは詳細なやることリストがあったようですが、全て学生がやるのでしょうか?

菅原:基本的に学生を含めた出展者チームがやります。ただどうしてもできない所はチームによって差があるので、相談してくださいと。キックスターターに出すのもいきなり丸投げします。プロモーション動画から作るようにと。動画も作成ノウハウがありますが、自分で調べてこないとちゃんと作れないんです。必ず期限内に完成するように運営側でサポートしますが、それまではクオリティの低い動画を作ってきたらリジェクト、という事をやり続けます。

 もちろん絶対にお尻を拭かなければいけない所はいっぱいあってですね、スケルトニクスが現地でいきなり生放送に出ることになったとき、運営側は生放送で事故が起きたら賠償をどうしようとか考えるわけですよね。だけど学生たちは気づいていないんです。ただ彼らに全て任せると本番に間に合わなかったので、私が保険契約の交渉をTV局とやりました。そのやり取りは全てメールのCCで学生にも流して、次に同じことがあったらできるようにしています。

ooedo
リタリコ 島田悠司氏


●競争のなかで自然とシェアが起こる

――子供たちの間のチームやコミュニティー作りについてお伺いさせてください。

島田:先日合宿をして、最終的に子供たちでペアプログラミングをやってもらったんです。3人1組で1つのゲームを作ってもらいました。大人や大学生でもペアプログラミングってなかなか難しいんですけど、やはりものすごく学びがあるんです。他の人のコードを見ることで自分のコードの変なところに気づいたり、周りとくっつけるプロセスで、よりわかりやすくする必要などの気づきがあります。

 私自身もすごく印象的だったんですけど、小学三年生2人と中学一年生で、ひとり1ステージ合計3ステージのゲームを、丸一日かけて作ることができたんです。中学生の子はかなりプログラミングができ、小学生の2人もアイデアは多彩なんですね。

 好き放題作ったものを最後に統合する過程で、中学一年生の彼は聞くんですよね。「こういう動きであってる?」とか「こういう風にしていいの?」と作っていると小学生2人が「いやそこ違う違う」みたいな感じで声をかけると。「難しすぎるからもっと簡単にしよう」みたいなことも言うんですが、そこは譲らないんですよね。デバッグの過程で、全然クリアできないので進まないんですけど、「ゲームバランス的に素晴らしいので残してくれ」みたいなことを横からガーガー言いながら作っていました。

 彼らはある種内向きで自分のモノを作るっていうことに興味が行きがちなんですけど、この経験を通してチームで作る楽しさ、難しさみたいなものを本当に痛感したのが良かったんじゃないかなと思っています。

――Qremoとしてもチャレンジだったんですか?

島田:そうですね。チームで作るとすごく難しいので、そもそも完成しなかった時にどうなんだろうって思っていて、実際何チームか完成しなかったところも出てきたんです。ただそこで結局完成できなくても、サポートする大人からの直そうかという問いに対しては、「私らがやる」っていう事を曲げないで言ってくれていて。発表会の時には将来こういう機能を付けるつもりでしたと発表してくれました。

 ある子供はキャンプが終わった後、自分のコードがチームにとっていかにわかりづらかったかを反省したらしく、ものすごく教科書に取り組むようになったんです。今までは自分の好き放題なゲームを作っていくことが彼の楽しみだったので、教科書以外のものを作っていたんですけど、今はプログラム自体を学び始めています。ある種のいい挫折体験だったと思います。

渡辺:コミュニティーの話だと『スクラッチ』の動きは良いなと思っています。作ったプログラミングをみんなアップして、それをまたベースに改造して、どんどんシェアしつつさらにその上に行くっていうのをやっていて、昔のLinuxやApacheだとか含めたオープンソースが活性化していた時代の良い雰囲気があります。

 ただこういう流れに対して前の会社の後輩から「渡辺さんのやっているロボコンってシェアじゃなくて競争ですよね」と言われて、ちょっとショックを受けて、今はオープンソースの時代でその競争だけやってていいのかなんて自問自答したことがありました。ロボコンの良い所は、コードでのシェアはしないんだけど、1つの同じ課題に対して、どういうアプローチで解決するかっていう、何千種類とか出てくるんですね。

 その中で成功したアプローチ、確実にできている所を見ながら勉強することもできるし、大会では競技が終わった後にまたコミュニケーション取りながら教えてもらうとか、そういった事も積極的にやっている子供たちもいると。そういった部分で、ロボットコンテストで競争するものと、スクラッチみたいなシェアするコミュニティーがうまく両方できたらいいなと思っています。

島田:先週教室内でロボコンをやったんですけども、じゃあそこでの競争がシェアではないかっていうと、私はそうは思わなくて。やっぱり優勝する子とそうじゃない子はいます。

 応援に来ていた親御さんもいて、子供のシーンをムービーで撮るんですが、負けて家に帰って子供は親御さんといろいろ話したんでしょうね。後ほど親御さんから連絡をいただいたんですけれども、自分の子供の作品だけを撮っていたら「優勝した子の写真とかムービーをなんで撮っておいてくれなかったの」って怒られたらしいです。「僕は優勝したいからプログラムや動き方を研究して次は勝ちたいのに、なんで僕の負けたやつを撮ってるの」と言われたらしく、これは素晴らしいと思ったんですね。

 子供たち自身も負けて悔しい思いはありつつ、そこから学ぶっていうのはやっているんです。フォローはしっかりしてあげた方がいいですが、競争も大事だと思いました。

菅原:競争の方がいいですよ。年齢の若い子供同士だと、ひとつのグループに入れるとなんだかんだチーム組んで、やってくれるんです。一方でビジネスとしてやっている人なら利害関係で結びつくんですけど、大学生同士だと利害関係もないし、我も強い。似たようなことをしているグループがイデオロギーで対立して、コミュニティーとして全然発達しないこともあります。

 我々から見ると同じ方向を向いているので「一緒のコミュニティーで仲良くやればいいじゃん」と言うと、「あいつとは気が合わない」って対立して全然シェアされない。ただ、それを解決させるためのツールとして競争の場を与えてあげると、実はまとまってしまう。形のうえで、全部シェアしましょうとはならないですが、最終的にはシェアしあっているというかお互いに学んでいる状況を作り出せるので、むしろ大学生には競争できる場を与えないと、対立している者同士が一緒にならない状況があります。

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当日会場に展示されていたレゴ マインドストーム。


●面白いサービスやデバイスを展開できる人がどれだけ増えているか

――ありがとうございます。最後にみなさんが考える成果、どのような展望を描いているかを伺えればと思います。

島田:わかりやすい今日の成果で言うと、WRO(小中高校生のロボットコンテスト)でQremo出身の子供たちが優勝して、そのあとに東大でそれこそSXSWに行けるような流れがわかりやすいのかなとはもちろん思っています。ただそういった目標は掲げつつも、やはりスーパースターだけではなくいろんな子供に良い教育の場を提供していきたい思いがあります。

 みなさんは、暗記ではなくて新しいモノを生むような教育がすごく大事だって思ってらっしゃいますし、創造力とか課題解決力みたいなものも本当に日本だけではなくいろんな国で大事だよねって考えられていると思うんです。ですが、やはりまだまだアンサーが出せてないなっていうのは私自身が教育に関わっていて感じています。せっかくこういうモノづくりというかプログラミングなど、手段も答えも自由度のあるツールを使っている中で、理想の教育のやり方というか、答えをひとつ出していきたというのが、長期的な展望になります。

菅原:教育の成果って、その回収までに非常にタイムラグがあると思うんです。大学は多くの人にとって最終教育機関なので、そのアウトプットがいつ効果として表れるのかは出てみないとわからないし、いきなり教育効果が表れるというものでもないと思っています。

 ただ、最終的にはそれまで我々が、我々っていうのはここにいる皆さんも含めた関係者で培ってきたようなIT教育を通り抜けた人たちが社会的に活躍しているのが成果だろうと。たとえば東大になぜ入るのかという部分で、官僚になるとか、とりあえず入っておけば就職がいいみたいなのが、世間的なイメージとしてあると思うんです。そうではなくてITじゃなくてもいいんですが、東大に入ったらSXSWに行けるらしいぜとなって、自分の力を試す目的で入る学生が増えるといいかなと。

 そういった人たちを見て、全然興味のなかった学生が、「あいつにできるんだったら俺にできる」と言って、底上げがなされて、それこそ5年後、グローバルにインパクト与えるような人材になってくれれば、やっとそこで教育成果があったんだなという風に言えるんじゃないかなと思ってます。

渡辺:この先は読み書きそろばんじゃなくて、読み書きプログラミング、ないしはマインドストームとなるような未来を見据えていかなくてはなりません(笑)。教育効果測定の話がありましたけど、どれだけそのビジネスとしての成果が国力として上がっているのか、評価軸を作れるかどうかは1つあると思います。

 ただ我々現場のレベルでは、どれだけプログラミングを好きな人が増えて、いろいろな面白いサービス、面白いデバイスを、グローバルに展開できる人が増えているかを見たい。仮に今が1だったら、50倍くらいに増えている所を目指して、またこのパネルをやった時にそうなったねなんて話ができればいいかなと思っています。

次回の大江戸スタートアップアカデミーは、サードウェーブコーヒー文化と西海岸スタートアップを語り尽すセミナーを開催します。日程は5月29日金曜日。詳細はこちらでご確認ください。

 

写真:編集部

●関連サイト
教育版レゴ マインドストーム 正規代理店アフレル
東京大学 産学連携本部
IT×ものづくり教室Qremo

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