2012年06月12日18時30分

WWDC2012基調講演レポ前編:MacBook Pro“Retina対応”の衝撃

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WWDC2012基調講演
↑壇上でAppStoreの好調ぶりを話すティム・クックCEO。

「スティーブ・ジョブズ氏のあとを引き継ぐティム・クックCEOのキーノートはどうなるのか?」「いやそもそも、アップルは今回はどんな見せ方で参加者を驚かせるのか?」――多かれ少なかれ誰もがそういった“ハードルが上がった”状態で見守る中、WWDC2012のキーノートはSiriの軽妙な語りによるジョークではじまった。

「Siriです。ハロー、WWDCへようこそ」「あなたのアプリを支援してくれる人を探しましょう。 396社のベンチャーキャピタルが見つかりましたよ!」、さらにもうちょっとブラックなジョークを交えつつ数分間のバーチャル・アシスタント漫才が会場の雰囲気を一発で和ませる。これはうまいスピーチライターがいるな、と思わせる絶妙なカウンターパンチでWWDC2012は幕をあけた。

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↑午前5時ごろのWWDC会場・モスコーンセンター前の様子。この時間帯でもとても早くならんでいる、というわけでもないのがWWDCだ。

 関係者によれば、発表会場で生のキーノートを見ようとかけつけたアップル開発者たちは60カ国から約5300名。毎年恒例のWWDCキーノート参加者行列は、開演午前10時に対して、午前6時半にはほぼ会場をぐるっと1周取り囲むほどにのびるなど、例年変わらぬ人気がうかがえる。ちなみに、今回のWWDCチケットは発売からわずか1時間43分で完売している。もちろん過去最速の消化ペースだ。

 目ぼしいハードウェア製品の発表がなかった昨年のWWDCだが、今年はMacBookシリーズがモデルチェンジのサイクルにあたることもあって、何らかのハードウェア製品の発表が必ずあるだろうというのが、事前の予測だった。問題は、どのように変更がなされるのか? だ。

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↑今回のWWDCキーノートのテーマはこの3つ。

 基調講演冒頭、ティム・クックCEOは、AppStoreの会員数が4億アカウントにのぼること、AppStoreを通じて65万本のアプリが供給され、うち22万5000本がiPad向けであることなどを公表し、AppStoreのビジネスが好調であることを開発者向けにアピールした。

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↑Macユーザーにはおなじみ、代役でWWDCのメインスピーカーも担当した経験のあるフィル・シラー副社長。 ↑FaceTimeは720pのHD対応になった。
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↑MacBook Airの刷新について語る、フィル・シラー副社長。ユーザーには待望のIvyBridge搭載Macだ。

 そして、やや長めのPVが流れた後、フィル・シラー副社長が登場。MacBookシリーズ刷新の概要が公開された。
 すでにウェブの製品ページが更新されているとおり、MacBook Airの11/13インチは第3世代Core iシリーズ(IvyBridge)に変更。Flashが最大512GBまで選択可能になった。13インチと15インチMacBook Proも同様にIvy化され、GPUはGeForce GT650Mが採用される。なお、Air、ProともにUSB3.0を搭載する。
 これらはすべて既存モデルのアップグレードという位置づけであり、続投のMacBook Proシリーズには光学ドライブも付属する。

 え? これでおしまい?と思わせたところで、スライド上に黒幕で隠されたハードが登場、一気に歓声が上がった。これが、今回発表されたハードウェア製品の本命、Next Generation MacBook Proだ。

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↑既存機種のIvy化に言及した後、右端にベールにつつまれたなにかが登場。これが……
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↑おそらく正式名称ではないものの(ウェブ上の表記はMacBook Pro with Retina display)、マイナーアップデートされたシリーズとは差別化する意味で“next generation"という呼び名で公表された。

 新世代MBPは、光学ドライブレス、最大768GBのSSD、そして世界で最も高解像度なノートPC用ディスプレイ(Retinaディスプレイ)を採用。UniBodyのデザイン意匠は踏襲しつつも、厚み1.8cmの薄型で重量2.02キロ。壇上でフィル・シラー氏は、Airの最厚部と同程度の厚みということをアピールした。実際、15インチのノートブックという点を考えると非常に計量なマシンと言える。価格が$2199から(日本版は18万4800円から)であることが明らかにされると、場内はどよめきと拍手に包まれた。

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↑きっちり4倍解像度、iMac 27インチをも上回るハイレゾリューションなIPS液晶を採用。会場から感嘆の声が漏れていた。 ↑Retinaの高負荷を処理するのはGeForce GT 650M。ゲーミングノートなどにも採用されるノート向けのGPUだ。
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↑Retinaの効用について解説。メールやウェブの文字がとにかく美しくなる。情報量を増やすのではなく、表示を美しくするというのはnew iPadと同じアプローチだ。 ↑他方、Retina対応のFinalCutでは、動画ウィンドウ部分のみでドットバイドットのフルHD表示が可能。驚くほかない。

 Retina Displayの“2880×1800ドット”という解像度は、従来のMacBook Pro 15の標準モデルのちょうど4倍解像度にあたる。
 4倍解像度を選んだ理由は、new iPadと同様に、未対応ソフトの表示時の互換性をとりやすいためだと思われる。だが、従来の15インチには、1680×1050ドットの高解像度モデルもある。実機を見てみなければ最終判断はできないが、ひょっとすると高解像度モデルとの比較では、実質的な表示情報量が減ってしまうかもしれないのは、ちょっと気になる点だ。

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↑実機は会場外に設置されたショーケースでの展示。人だかりの凄さが注目度を物語る。タッチ&トライがあればいうことなしだが、実機を触るのは帰国後までお預けになりそうだ。
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↑側面と底面の境界付近にあるスリットは吸気口。ここから吸ったフレッシュエアをディスプレー付け根部分から排出する仕組み。 ↑magsafeコネクタは形状が変わり、magsafe2に。従来のmagsafe対応ACアダプタの端子部だけを変換する純正コンバーターも発売(980円)。
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↑magsafe2コネクタ右脇にある2つの小さなコネクターはThunderbolt端子。薄型化によりEtherポートがなくなったので、有線接続する際はこのどちらかに別売のEtherコンバーターを挿す。 ↑側面から見ると薄さが際立つ。ボディ形状のせいもあるが、コネクタ部分が平面ギリギリ。切削精度の高さもわかる。

 それにしても、市場のノートブックの大半が部材調達上の理由から16:9に流れるなかで、Retinaでも16:10を押し通してきたのはアップルのこだわりを感じさせる。全世界で共用パーツを可能な限り使い回せるアップルならでは、という部分もあるのだろう。

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↑キーノート後、閉店間際、午後8時半ごろのアップルストア。店内にはRetina対応MacBook Proの姿はなし。同時刻ごろ、日付が翌日の日本ではすでにアップルストアでの店頭販売が開始されていた。

 非常に尖った仕様の“Next Generation”登場にあたって、従来型ボディーもラインナップに残したのは賢明な選択といえる。これまでもMacBook Proはテレビ番組制作など映像編集を扱うクリエイターが、モバイル編集マシンとして使っているということをよく耳にする。
 そうした人たちにとっては、最大で768GBというディスク容量は、少なくはないけれど特に大容量というわけでもない。また放送業界以外の制作系の仕事なら、納品にDVDを使うというケースもまだまだ存在する。

 ノートブックとしての理想を追求しつつも、道具として仕事で使うクリエーターの需要も考えなくては、というアップルの会議室での議論が垣間見えるような気がした。
(後編に続く)

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