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【潜入】飛行機ってこうやって作るの!? 「ボーイング737 MAX」工場、ANAはリベット1本までチェック!

2026年10月14日 07時30分更新

文● 中山智 編集●こーのス/ASCII

●ボーイングなのに「カイゼン」「道場」!? 工場にあった日本語

 さらに、現場の作業員さんが日常の中で「ここをもっとこうすれば作業しやすいのに」「この工具は使いづらいな」と思ったアイデアを書き込む「カイゼンカード」制度が導入されています。BPSマネージャーのデイビッド・パシリャス氏は、「一番素晴らしい改善のヒントは、毎日現場で飛行機に触れている従業員自身から生まれるんです」と語っていました。

工場内に設置され、現場の従業員から提案された改善プロジェクトが製造工程(フローデイ)ごとに掲示されている「カイゼン・レコグニション・ボード(Kaizen Recognition Board)」

完了を意味する「Complete」の文字が書かれた多数のプロジェクト書類が所狭しと貼られており、現場主導のカイゼンが日常的に活発に行われていることが伺える「オオベヤ(Oobeya)・レコグニション・ボード」

 もうひとつおもしろいポイントが、工場内にあり、作業員さんの怪我や体の負担を減らすためのアイデア基地「Safety Dojo(セーフティ道場)」です。

人間工学に基づいて開発した様々な補助具や独自のツールを展示している「セーフティ・道場(SAFETY DOJO)」

 EHSスペシャリストのアンドリュー・エドワーズ氏たちが開発したツールの中には、コカ・コーラ社で自動販売機を運んでいた経験から生まれた空気浮上器具「Air Sled」や、奥の配線を傷つけずに結束バンドだけをパチンと切れる特許取得のカッターなど、現場の「困った」を解決する神ツールがたくさん詰まっています。

機体の下など低い位置での作業負担を減らすために導入された電動台車(Battery-operated creeper)

現場の声を聞いて開発した便利・安全グッズの数々

●完成したら終わりじゃない! ANAが3カ月かけて機体をチェック

 飛行機を購入する際、航空会社は完成した機体をそのまま受け取るわけではありません。実は、製造の初期段階から自社の検査員たちを現地に派遣して、図面通りに正しく作られているかを何か月もかけて厳しくチェックする「領収検査(Acceptance Inspection)」を行っています。

工場での組み立てが終了した、ANAの「ボーイング 737 MAX」

尾翼のラダーなど、一部のパーツは塗装済みの状態で取り付けられています

 ANA(全日本空輸)には約300名の領収検査員資格を持つプロフェッショナルが在籍していますが、新しい機体を受け取るときは、その中の選り抜きチームを派遣。シアトルの工場に約3ヵ月間つきっきりで長期駐在しています。

●リベットまで1本ずつ見る!? ANA「領収検査」の現場

一番最初の大きな山場が、胴体が届いた日に行われる「Call Inspection(指定部位検査)」。緑の保護シートに包まれた胴体を前に、4名の検査員が手鏡とライトを手に、何十万本もあるリベット(金属鋲)の打ち込み具合や、外板に小さな傷がないかを1本ずつ目視で確かめていきます。丸一日かけて行われる、まさに気が遠くなるような集中力が必要な作業です。

領収検査員のANA 整備センター 品質保証室 航空機製造委託品質チーム マネージャー 桐澤直矢氏

●わずかな隙間や突起も見逃さない! “乗客目線”でもチェック

 また、ANAの検査員は「将来乗るお客さまの目線」も決して忘れません。搭乗客が服を引っかけたり怪我をしたりしないよう、客室パネルのわずかな隙間や突起までしっかりチェックします。

内装パネルが取り付けられる前の客室天井部分など、完成後は見えなくなってしまう内部構造までくまなくチェック

 さらに、ANAが今回新しく導入する「ボーイング 737 MAX」には、車いすを利用する乗客も安心して使えるよう、従来よりも広いスペースを持つバリアフリー対応の大型お手洗いを世界で初めて「ボーイング 737 MAX」に採用。こうした独自の仕様が正しく施工されているかも、ひとつひとつ手作業で確認していくとのこと。

 こうした厳しいチェックを受け止め、現場で一緒に対応するのがボーイングの顧客品質サポートチーム「CQS」。ANAとボーイングは70年以上の長いパートナーシップを築いており、お互いの技術者を派遣し合うプログラムなどを通じて、現場で気づいた改善点を次の飛行機づくりへと活かす信頼関係ができているそうです。

ボーイングとANAは、単なるメーカーと顧客という関係を超え、両社が一体となって高い品質を追求していることを強調

 領収検査員として現場で初号機の製造を見守る、ANA整備センター 品質保証室 航空機製造委託品質チーム マネージャーの桐澤直矢氏は、「現場で日々メカニックの方々の作業ぶりも間近で見ていますが、しっかりと規定や基準に沿った製造が行われています。この厳格な検査プロセスを通じて、間違いなく安全な機体であると確信していますし、自信を持って良い機体を皆様にお届けできます。私たちが運航現場のノウハウをボーイング側に還元することで、最終的にお客さまの安全性や快適性につながっていきます」と話していました。

 年間数百機レベルで製造が進む巨大メーカーの組み立てシステムと、それを根底から支える徹底した品質管理の「現場のリアリティ」。200万点におよぶ部品を1日単位で規則正しく組み上げる「Flow Day」の合理性。不具合があればラインを止める「Move Ready」や、現場の不便を物理的に取り除く「カイゼン」「Safety Dojo」といった具体的な品質ガバナンス。そして、運航会社の視点からリベット1本に至るまで厳格な検証を重ねるANA現地領収検査員の存在。

日本へやってくるのが待ち遠しい!

 1機の旅客機が世界の空へ飛び立つまでには、多角的なチェックと日米の技術的な連携が絶え間なく機能しています。ANAの「ボーイング 737 MAX」初号機の事業受領は12月を目標として、現地でANAの領収検査が進められています。実際に乗れるのは2027年となりそうですが、もし搭乗した際はシアトルの地でリベット1本まで目を光らせた日米の技術者や領収検査員たちの緻密な品質管理プロセスを思い出すと、フライトがより安心で、味わい深いものになると思います。

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この記事を書いた人──中山智(satoru nakayama)

世界60ヵ国・100都市以上の滞在経験があり、海外取材の合間に世界を旅しながら記事執筆を続けるノマド系テクニカルライター。雑誌・週刊アスキーの編集記者を経て独立。IT、特に通信業界やスマートフォンなどのモバイル系のテクノロジーを中心に取材・執筆活動を続けている。

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