●子どもと親が離れる座席問題についての対応の遅れ
もうひとつ、私が今回最も危惧しているのが、最も安価な「シンプル運賃」で事前に座席指定ができないという点です。
現在のセール運賃を含むシンプル運賃では、事前の座席指定が一切できません。それだけでなく、追加料金を支払って座席を指定する仕組みすら現時点では用意されていないとして、座席指定システムの欠陥ではないかと指摘されています。
国内線は長くても2〜3時間程度なので、筆者のように一人で利用することが多い人なら、オンラインチェックイン時に空いている席へ座れば済む話で、あまり気になりません。問題は家族連れです。 運賃をできるだけ抑えたい子育て世代がこの運賃を利用した場合、オンラインチェックインの時点で隣同士の席が埋まっていれば、幼い子どもと保護者が離れた席に割り当てられてしまうといったリスクが生じてしまうのです。
実は今、世界の航空業界では「子どもと保護者が隣同士に座るために追加料金を課すこと」が、消費者保護の観点から問題視されるようになっています。例えばイギリスの競争・市場庁(CMA)は2026年6月、アイルランドのLCC「ライアンエアー」に対する調査を開始。同社は2歳から11歳の子どもと搭乗する際、保護者に「必須ファミリーシート」として約8ポンド(約1600円)の座席指定料の支払いを義務付けています。これが消費者法上の「不公正な契約条件」に当たる可能性があるとして、CMAは調査に乗り出しました。
ライアンエアーといえば、個人的に「キング・オブ・LCC」と呼んでいる航空会社です。手荷物や座席指定はもちろん、オンラインチェックインを忘れると追加料金が発生するなど、あらゆるサービスが徹底した有料制。世界でもトップクラスに“追加料金ビジネス”を追求している航空会社として知られています。
そんなライアンエアーですら、「子どもが保護者と隣り合って座るのは基本的人権であり、安全上の必須要件」という国際的な認識をしぶしぶながらも受け入れ、新ポリシーを発表。チェックイン後に大人と子どもが隣同士になる座席が「無料」で自動的に割り当てられることになりました。ただし、無料で割り当てられるのは機体後方の座席となる可能性が高く、予約時にあらかじめ座席を選んだり、前方の座席を希望したりする場合は、引き続き有料の座席指定料金が必要です。
そういった世界の流れを受け、ANA株主総会では「事前案内が不十分だった」と猛省。現在、最も安いシンプル運賃でも「いくばくかの追加料金で事前座席指定が可能になる付帯サービス」を早期に開始すべく、急ピッチでシステム改修を進めていると明かしました。
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