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JR西日本とソフトバンク、自動運転レベル4のバスを公道で走らせる!

2023年09月18日 15時00分更新

◆縁石ギリギリに停まったバスに乗り込む

 野洲に作られた専用テストコースは、全長約1.1kmで、直線の長い楕円形。2ヵ所あるコーナーは非常にきつく、全長の長い連節バスには厳しい環境です。2つある直線部には、それぞれ停留所を模した場所があり、片側には分岐路と縁石も用意されています。また、踏切を模した遮断機と、交差点を模した信号も用意されていました。

自動運転

「自動運転・隊列走行BRT」に使われた小型バス。バスのサイズは小さいけれど、大型バスと同様のセンサー類、通信機器が搭載されている

自動運転

路面の黒い小さな丸が磁気マーカー。数mおきに走行レーンに埋め込まれていた。写真は停留所側(左)と走行レーン(中央)の2つの走行レーンに埋め込まれた磁気マーカー

自動運転

地面に埋め込まれた磁気マーカー。バスの床下に磁気センサーを読み取る機器が備わっている

 最初は、隊列走行するバスを外から見学します。バス同士の間隔は、走行中は15m(±5m)ほどで、停止中は4mほど。3台のバスには、それぞれドライバーが乗っていますが、運転操作は一切しません。ただし、外から見ている限りは、ドライバーが操作する普通のバスと違いはわかりません。ところが、縁石に寄せて停まったバスは、本当に縁石ギリギリ。これには驚きました。毎回必ずこの精度で停まれるのであれば、人間の運転手よりも運転がうまいかもしれません。

自動運転

自動運転にて停車したバス。自己位置精度が非常に高いため、縁石ギリギリに停めることができる

 車内に乗り込んでみると、発進・停止だけでなく、コーナーでもドライバーは何も操作していません。きついコーナーでは、先行するバスが後続バスの正面からズレてしまいます。これは、光信号が直進する光無線通信にとっては大問題。そこで採用されたのが、送受信部を左右に振る、光無線通信機のトラッキング制御です。コーナーで確認すると、前走車のバスの後ろにある光通信用の送信機は、しっかりと後続のバスの方向を向いています。

自動運転

自動運転レベル4で先行車を追従するバス。ドライバーは、運転操作をせずに監視している

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自動運転レベル4で走行するバス。車内には、LiDARによる周囲のセンシング状況を示すディスプレイが用意されていた

 また、急なコーナーに入るとバスは速度を落としますが、3台の隊列走行は1つの長い列車と同じ扱いとなるため、最後尾のバスがコーナーを出るまで先頭のバスは直線路に入っても加速を控えています。最後尾のバスが直進路に入ったところで、3台がほぼ同時に加速をしていました。

自動運転

きついコーナーを曲がる連節バス。追従する大型バスより撮影。この運転操作も自動で行なわれている

 停留所に停車すると、バスの室内にドライバーの案内が響きます。3台ある先頭車両のドライバーが、3台分のドアの開閉をするのです。乗客の乗り降りを確認してのドアの開閉は、自動化が難しい部分。一刻も早い実用化を考えれば、開閉をドライバーに任せるのは、妥当な判断と言えるでしょう。

◆「普通のバスと同じ」という感想こそ目指していたもの

 先頭車両と追従する後続の車両にも乗車しました。操作こそしませんが、どの車両にもドライバーがいましたし、ギクシャクした動きもありません。信号や踏切の協調制御も、乗って入れば、乗員的にも何も違和感はありません。そのため、乗った感想は「ごく普通のバスの運行と変わらないなあ」というものでした。ある意味「普通のバスと同じ」を目指して技術を磨いてきたのですから、当然のこととも言えるでしょう。

自動運転

先行するバスの後部には、光無線通信用の機器(緑色の部分)が備わっており、後続車を見失わないように、センサー部が後続車側に向いている

 次なるステップとなる、11月からの東広島市での公道での実証実験でも、違和感を見つけ出して、それを解消してゆき、最終的に「普通のバスと同じ」を目指すことになります。JR西日本とソフトバンクでは、2020年代半ばの社会実装と言っていますから、具体的には2024~26年がターゲットです。つまり、残された時間は2年ほど。それほど先の未来というわけではありません。

自動運転

「自動運転・隊列走行BRT」を行った3台のバス

 自動運転技術の実用化は、強く社会から求められているもの。ただし、その歩みはそれほど早いものではありません。今回のプロジェクトも、スタートからすでに3年が過ぎており、しかも道半ばという状態。しかし、記者会見の場で、JR西日本とソフトバンクは「階段を上るように、少しずつやっていきたい」との旨を語っていました。ゆっくりではあるけれど、一歩ずつ確実に技術検証をして、前進している。そんなことを実感できる取材会となりました。

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