アップルの圧倒的量産力が可能にした「iPhone 15 Pro」USB-C採用の背景は
3nm世代へ突入する「A17 Pro」
もうひとつ、量産の賜物なのが「A17 Pro」だ。
昨年からアップルは、「スタンダードラインでは昨年のハイエンドSoCを、Proラインでは新しい最新のSoCを」という選択をしている。
TSMCの新しい半導体製造プロセスを使うにしても、初期の生産量は限られる。そこで「上位モデルに使う」前提で数を押さえた上で、量産が安定した頃にはスタンダードラインに広げる、という選択をしているのだろう。
A17 Proは3nmプロセスで生産されるが、各種報道によれば、TSMCの3nmプロセスについて、アップルは年内分「ラインを全量」確保して独占的に利用するのだという。これが本当だとすると、アップルはそれなりに強気で「15 Proシリーズをガッツリ売る」つもりなのだろう。
A17 Proの面白いところは、3nmプロセスによるトランジスタ数の増加を、いわゆる汎用CPUコアの性能アップだけに使うのではなく、他の部分にもガッツリ回しているところだ。
GPUは完全に再設計されてモバイルながらレイトレーシングにも対応したし、機械学習コアの速度は倍になった。映像配信に使われるAV1コーデックのデコーダーも搭載されたし、なにより「USB 3向けのコア」も搭載されている。
モバイルプロセッサに求められる要素を考えた上で、バランスよくトランジスタを使って実効性能と消費電力のバランスを取ったのがA17 Pro、ということになる。もちろん、ここで使われた要素技術はMacやiPad向けである「M系プロセッサ」にもフィードバックされていくのだろう。
スマホ向けにSoCを作る企業を見渡しても、結局のところ「圧倒的な数」が必須になる。クアルコムは多数の企業ニーズをまとめて先を目指すというアップルとは異なるアプローチであり、グーグルの背後には、生産・開発パートナーとしてサムスンがいる。
ここから気になるのは、ライバルに対して優位に立ったSoCを今後どこまで広げていくのか、という点だ。
最新技術で作られる高性能パーツは、高価にならざるを得ない。量産で1つあたりのコストは希釈可能とはいえ、どんどん高くなってきたiPhoneをどうハンドルするのか、ということは、アップルにとって大きなテーマであるだろう。
日本には「円安」というファクターがあり、ドル建てよりも「高価格化」のインパクトは大きい。アップルは、ドル建てでは必死に価格維持を目指しているのがわかる。だが、日本からの目線は少し厳しいものになるかもしれない。
ただ、Proシリーズだけに目線を向けるのではなく「iPhone 15」も見据えると、コストパフォーマンスには別の側面が見えてくる。
デザインをまとめるための工夫は相当なものだ。ポップな色合いも好ましい。今年のiPhoneはどの機種が売れることになるのだろうか。
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