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アニメってどんな人がつくっているの? アニプレックスの人に聞いてみよう!

【SAOの周りにある仕事を紹介】ソニー主催「CurioStep サマーチャレンジ2023」オンライントークイベント

2023年09月20日 19時00分更新

CurioStep サマーチャレンジ

 ソニーは8月各日のおよそ1ヵ月間、子ども向けイベント「CurioStep サマーチャレンジ2023」を開催。

 子どもたちの学びや好奇心をサポートし、未来を拓く夢と力を育てることを目的として、夏休み期間に自由研究のヒントになるワークショップやトークイベントを多数実施した。

ソードアート・オンライン

 8月27日には、テレビアニメ「ソードアート・オンライン」(以下、SAO)シリーズに関わる大人たちが、どのような仕事をしているのかを紹介するオンライントークイベントを開催。

 アニプレックス 丹羽将己氏と栃木淑人氏、A-1 Pictures 金子敦史氏、ソニー・ミュージックソリューションズ 松崎知子氏が登壇し、オンラインで参加する子どもたちに向け、SAOのアニメに関わる様々な仕事を紹介した。

ソードアート・オンライン

(写真左から)司会 碧井エリ氏、金子敦史氏、松崎知子氏、栃木淑人氏、丹羽将己氏

 子ども向けに分かりやすく解説するイベントではあるものの「SAOに関わる仕事がしたい」と思う人には魅力的なトークが広がり、さまざまな分野で仕事が広がっていることを知る貴重な機会となった。それではイベントの内容を紹介しよう。

アニメは映像を作るだけじゃない
“SAOの周りにある仕事”とは

 トークイベントでは、アニメを「企画する人」「つくる人」「届ける人」の3つのカテゴリーから仕事を紹介。それぞれに役割を担う登壇者が、司会者の質問に答えながら仕事の魅力を語る。

「アニメ作品制作のリーダー」アニプレックス 丹羽将己氏

アニプレックス 丹羽将己

――丹羽さんはどんな仕事をされているのでしょうか

丹羽:僕の仕事には「企画」というものがあって、そこではアニメを作りたい作品を決めます。その次は「仲間集め」です。たとえば小説やコミックといった原作がある場合、原作者さんの協力が必要ですし、アニメの方向性が決まったら監督さんやアニメーション会社さんに仕事のオファーをします。仲間を集めながらアニメを作っていく全体のまとめ役のような仕事をしています。

――多くの人と関わる仕事に思えますが、コミュニケーション能力が必要なのでしょうか?

丹羽:そんなことないですよ(笑)ただ、アニメ作りはいろいろな人が関わるので僕が目標を明確にしないと方向性がブレてしまいます。なので、「こんな作品を作りたいんだ!」と熱意を持って、プロジェクトが向かう目標を周りに伝えていくことは大事にしています。

――SAOのアニメ作りではどんなことを目標にしていましたか?

丹羽:SAOは原作読者の年齢層が若いので、その人たちをターゲットに面白さを伝えようと試みました。主人公のキリトがとにかくかっこいいキャラクターで、そのかっこよさをどう伝えるか、共感を持たせるかを紐解いていって、ファンが寄り添えるような存在にしたいと目標を掲げました。

――お仕事のやりがいはどんな時に感じますか?

ソードアート・オンライン 完全新作オリジナル劇場版

アニメ10周年記念イベント「ソードアート・オンライン -フルダイブ-」にて、イベントの最後に「完全新作オリジナル劇場版」の制作を発表

丹羽:続編を発表した瞬間のファンの反応を見ることです。この歓声を聞くために仕事をしているといっても過言ではないほどエネルギーをもらえる瞬間ですね。「続編がある」というファンの喜びと期待は、次のアニメを作る時に励みになっています。これからも作品の発表に対して反応をいただけると嬉しいです。

「アニメーションをつくる人」A-1 Pictures 金子敦史氏

A-1 Pictures 金子敦史

――金子さんはどんな仕事をされているのでしょうか?

金子:私は「アニメーションプロデューサー」という仕事をしています。アニプレックスからいただいた企画(予算・スケジュールなど)の中で「誰にどんな仕事をお願いするのか」を配分していく仕事です。僕自身はアニメを作る人というよりも、アニメを作っていただく仕事というほうが近いかもしれません。

――仕事で制作したイラストを実際に見せていただけると伺っております

「劇場版ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-」第4弾キービジュアル

SAO オーディナルスケール

A-1 Picturesからアニプレックスへ納品時の状態。原画や色彩設計など、さまざまな過程を経て1枚のイラストが完成

SAO オーディナルスケール

アニプレックスがフレーズやキャストなどの情報を加えた完成形。一般に公開されたのがこの状態

©2016 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス刊/SAO MOVIE Project

金子:「キービジュアル」は多くの人が見る作品の大事な一枚絵です。アニプレックスから「こういう絵が欲しいです」と依頼をもらって、現場にいるアニメーターさんとイラストのコンセプトを決めます。SAOは毎回模索しながら1つのテーマを決めてキービジュアルのイラストを制作しています。

――仕事をする上で気を付けていることはありますか?

金子:お客さんとクリエイターさんの間でバランスを取ることを気をつけています。クリエイターさんはプロ意識を強く持っていて、どちらかというと自分の糧となるようなアニメを作っている人が多いです。作品を見てもらうために僕がお客さんとの間に入って、バランスを取りながらアニメを作っていくことは意識しています。

――絵が描けないとアニメの仕事はできないのでしょうか?

金子:絵が描けなくてもアニメの仕事はできます。僕も小学生の頃は趣味でイラストとか描いていましたが、とても人に見せられる画力ではなかったです。それでも今アニメの仕事をしていますし、いくらでもアニメに関わる仕事はあります。

「作品を世界に届ける人」アニプレックス 栃木淑人氏

アニプレックス 栃木淑人

――栃木さんはどんな仕事をされているのでしょうか?

栃木:私が担当している仕事は2つあります。1つは地域の担当で、東南アジアや中東でパートナーを探し、アニメのイベントなどを展開しています。もう1つは作品担当で、その作品に対し全世界での発信に責任を持つ「製作委員会」の仕事をしています。SAOも製作委員会の1人として関わっています。

――国や地域によってイベントの内容が変わるのでしょうか?

栃木:海外のアニメに対する熱量は日本とはまた違って規模も大きいです。「劇場版ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 星なき夜のアリア」のアメリカ上映では、シーンが盛り上がると上映中でも観客が声を出して盛り上がっていました。サウジアラビアでは、1つのイベントのために街を作ってしまう「アニメタウン」を展開しました。国や地域でイベントの内容は異なりますし、その土地の慣習でアニメの楽しみ方も変わります。

――イラストを用意していただいていると伺っております

ソードアート・オンライン
ソードアート・オンライン

SAOのメインキャラクター キリトとアスナが世界各国の民族衣装に扮したイラスト。アメリカ(写真左)と中国(写真右)

栃木:2017年の映画公開に合わせて作成した「ご当地版権」になります。キリトとアスナがさまざまな国と地域の衣装を着たイラストを作成しました。こういうものを作ることによって地域でのイベントに特別感を与えられますし、「世界で人気のアニメ」だとアピールできる材料になります。

――作品を世界に届ける上で気をつけていることはありますか?

栃木:作品の魅力を伝えることと展開する国や地域の文化とのバランスを気をつけています。国によって映像に規制があったりするので、それぞれの国のルールを受け入れつつ、ストーリーをそのまま楽しめるように、規制のあるシーンはトリミングして流すなどの対応しています。

「作品から新しい体験をつくる人」ソニー・ミュージックソリューションズ 松崎知子氏

ソニー・ミュージックソリューションズ 松崎知子

――“作品から新しい体験をつくる”とはどういうことなのでしょうか?

松崎:普段アニメは見るものだと思いますが、私は“アニメの世界に入ることができる”エンタメのプロジェクトリーダーをしています。現実とVRの両方から体験できることを目指していて、現実の体験に関しては今年の4月に新しい施設を作りました。

SAOアノマリークエスト

「ソードアート・オンライン -アノマリー・クエスト-」プレイ中の様子。実際に自分の身体を動かしてダンジョンを攻略していく

 「ソードアート・オンライン -アノマリー・クエスト-」(以下、SAOアノマリー・クエスト)は企画から始めて、“ソニーの最新技術をどのように組み込んでいくのか”などたくさん検討を重ねて誕生しました。

――ソニーの技術はどのように使われているのですか?

SAOアノマリークエスト

体験型ゲームは、ユイのガイドと共に進行していく

松崎:SAOのキャラクターであるユイちゃんがガイドをしてくれますが、このキャラクターの声を「音声合成」という技術で出しています。文章を入力するとユイちゃんの音声で出力する技術で、声優さんが吹き込んだような滑らかな音声を出してくれるんですよ。

――仕事をする上で気をつけていることはありますか?

松崎: SAOアノマリー・クエストは、アニメの体験を楽しむ場所ですが、アニメをよく知らない人にも楽しめるように気をつけています。“興味があって来たけどアニメが分からなかったから…”となっては体験価値が下がってしまいますし、逆に体験が楽しかったからアニメに興味を持ったと思えるような、そんな施設にしたいと思っています。

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