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至高の消費電力測定デバイス「Powenetics v2」を手に入れた

2023年08月08日 19時30分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集● ジサトラユージ/ASCII

画質や解像度が変わると消費電力はどう変わる?

 ここまでに提示した、2種類のGPU/2ないし3通りの画質設定/2通りの解像度設定を使ったフレームレート測定において、その時CPU/GPU/システム全体の消費電力がどうなっているか、Powenetics v2の実測値を利用してチェックしてみよう。まずはOverwatch 2から。

至高の消費電力測定デバイス「Powenetics v2」を手に入れた

Overwatch 2:1920×1080ドット時のCPU/GPU/システム全体の消費電力

至高の消費電力測定デバイス「Powenetics v2」を手に入れた

Overwatch 2:3840×2160ドット時のCPU/GPU/システム全体の消費電力

 まずRTX 4080の場合、解像度が同じでも画質を上げるとGPUの実消費電力(TBP)は増えるが、フルHDの時の増え方は極めて大きい。一方RTX 4060は画質を上げると逆に減ってしまう。RTX 4060の場合、エピック設定では負荷に対してGPUの処理が間に合わず、結果として消費電力が下がってしまったと読み取れる。もう少し画質の上げ幅を緩くすれば、順当にGPUの消費電力が上がる可能性もあるが、今回のテストからはそこまで断言はできない。

 一方、画質が同じで解像度を引き上げた場合については、RTX 4080もRTX 4060も消費電力は増えたが、RTX 4080のほうが増え方が大きい。RTX 4060の場合、フルHDと4Kでは3Wしか違っていない。それだけフルHDの段階で余力がないことを示している。RTX 4080の場合は、エピック設定時のほうが伸び幅が小さいが、これは4K+エピック設定では描画負荷が高く、RTX 4080でも余力があまりないことを示している。

 次にCPUに目を向けてみると、RTX 4080とRTX 4060では傾向が微妙に異なる。解像度がフルHDの場合、RTX 4080では画質を低→エピックに上げるとCPUの消費電力が8W増えたのに対し、RTX 4060では24Wも減った。だが4Kの場合は画質を上げるとCPUの消費電力が下がる。

 フルHDの場合、Core i9-13900K+RTX 4080の組み合わせでは、まだCPUが若干遊んでいる(CPU以外がボトルネックになっている)状態だが、Core i9-13900K+RTX 4060の組み合わせでは、画質を高くするとGPU側がボトルネックになりCPUが遊んでしまう傾向にあるということだ。前掲のフレームレートのデータを見ると、大きくフレームレートが下がった部分がこのGPUのボトルネックになっている部分に当たると見られる。

 続いてはCall of Duty: Modern Warfare IIのデータも見てみよう。

至高の消費電力測定デバイス「Powenetics v2」を手に入れた

Call of Duty: Modern Warfare II:1920×1080ドット時のCPU/GPU/システム全体の消費電力

至高の消費電力測定デバイス「Powenetics v2」を手に入れた

Call of Duty: Modern Warfare II:3840×2160ドット時のCPU/GPU/システム全体の消費電力

 解像度は同じでも画質を上げるとGPUの消費電力は増え、その一方でCPUの消費電力は下がる。画質を下げるとフレームレートが上がるため、これを維持するためにCPUが必死で処理を回す必要があるためだ。画質を上げるとGPU側が律速になるため、CPUは若干手を緩めてもよくなる。

 さらに解像度を上げるとGPU性能が足枷になるため、フルHDより4KのほうがCPUの消費電力は少なくて済む一方、GPUは限界まで回るためGPUの消費電力は増える。ただし、GPUの消費電力増加はGPUの余力次第であるため、素の性能が控えめなRTX 4060の場合、消費電力は微増にとどまる。素の性能が高いGPUほど、画質設定や解像度を上げた時のGPU消費電力は大きくなる。

 次はTiny Tina's Wonderlandsの消費電力データだ。

至高の消費電力測定デバイス「Powenetics v2」を手に入れた

Tiny Tina's Wonderlands:1920×1080ドット時のCPU/GPU/システム全体の消費電力

至高の消費電力測定デバイス「Powenetics v2」を手に入れた

Tiny Tina's Wonderlands:3840×2160ドット時のCPU/GPU/システム全体の消費電力

 全体傾向としてはCall of Duty: Modern Warfare IIと同じだが、電力の使われ方は違う。例えばフルHDかつRTX 4080の場合、CPUは最低設定で125Wしか使われていないが、Call of Duty: Modern Warfare IIの同条件では166W。だがGPUはTiny Tina's Wonderlandsが204Wに対してCall of Duty: Modern Warfare IIは156W。ゲームの処理が違うのだから差があって当然だが、Tiny Tina's WonderlandsはCPUよりGPUの消費電力のほうが大きい。つまり、このゲームではGPU性能が決め手になりやすい処理という事を示唆している。

 最後はCyberpunk 2077のデータだ。

至高の消費電力測定デバイス「Powenetics v2」を手に入れた

Cyberpunk 2077:1920×1080ドット時のCPU/GPU/システム全体の消費電力

至高の消費電力測定デバイス「Powenetics v2」を手に入れた

Cyberpunk 2077:3840×2160ドット時のCPU/GPU/システム全体の消費電力

 基本的に画質や解像度が上がればCPUの消費電力が段々小さくなる一方で、GPUの消費電力は増加傾向になる。ここまではこれまで見てきた傾向と共通している。ただ、レイトレーシング設定を使用するとRTコアが動くぶん消費電力が必ず上がるわけではなく、4K設定では逆に消費電力は下がった。

 これはアップスケーラー(DLSSやFSR 2)を使わない状態での4KレンダリングではGPUパワーが圧倒的に不足してしまうためだ。RTX 4080は微減程度だが、RTX 4060は通常レンダリング時の半分程度になっている理由は、RTX 4060は4Kでのレイトレーシング処理はもう限界(VRAMも少なすぎるので色々と間に合っていない)であることを示している。

 さらに、ここまでの情報から読み取れるのは、現時点で消費電力が大きいと評価されているCore i9-13900Kでも、ゲーム中の平均実消費電力は300W程度で、解像度と画質設定次第ではもっと下がる時もある、ということだ。GPUがRTX 4060のように処理性能が低い場合は、さらにCPUの消費電力は下がる。今回試したCore i9-13900Kの場合、RTX 4060ではRTX 4080を使った時よりもCPUの消費電力が全体的に低い。つまり、RTX 4060はゲームにおいてCore i9-13900Kのパワーを引き出せずにいるというわけだ。

 ゲーミングPC構成においては、CPUとGPUのどちらがボトルネックか判定するのは難しく、ざっくりとした話になりがちだ。しかし、消費電力というデータを加味することで、もう少し具体性と説得力を持たせることができるかもしれない。

消費電力検証の旅はまだ始まったばかり

 Powenetics v2の紹介と検証はひとまず終了だ。Powenetics v2は誰でも買えるものではないし、Powenetics v2を使っていないからと言って信頼できないベンチマークと言いたいわけでもない。ただ、消費電力という数値化しにくいデータをもっと検証に役立てていきたいという筆者の思いを叶えてくれるPowenetics v2は凄い! という話がしたかっただけだし、決して安くない投資をした甲斐はあったと自分を納得させることができた。

 だが、筆者の消費電力検証の旅はここで終わりというわけではない。次回はPowenetics v2を用いて、CPUの消費電力の検証、マザーボードの設計の違いと消費電力の関係についてなど、誰得な検証をしていきたいと思う。

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