普段はパティシエ、週末はレーサー
参加者に聞くポルシェやカレラカップの魅力
では、どのような方が参加されていらっしゃるのでしょう。2022年シーズンに参戦された「CASA MINGO(カサミンゴ―)」さんにお話を聞きました。気になる職業はなんとパティシエで、お若いのにケーキ屋さんの社長さんなのだそうです。「ヨーロッパでパティシエの修行をしていた時、街でカッコいいクルマが走っていて。当時、車のことはよくわからなかったのですが、“カッコいいなぁ。いつか乗りたい”と思いまして。それがポルシェとの出会いです」と笑顔で語ります。
「CASA MINGO」さんは帰国後、ポルシェが買いたい、という気持ちでケーキを作り続け、念願のポルシェを購入。ポルシェがモチベーションになるなんて、本当に素敵な話です。
ですが、CASA MINGOさんは1台でおさまることはなくエスカレート。ついには最上位モデルである911 GT3まで行ってしまったのだとか。「当然、サーキット走行とかもしていました。でも、もっと上があることを知って。たまたまカップカーのオーダーに空きがあることを知りまして、せっかくだからとカレラカップに挑戦しました」と、参戦の経緯を語ってくださいました。カップカーにケーキの写真が貼られているのは、お店の宣伝になるかな、ということから。
「ケーキ屋さんって、そんなに儲かるんですか?」と思い不躾ながら尋ねてみると「僕のお店は、通販専門なんですよ。注文してから作って、全国に冷凍で配送しているので、全国にお客様がいらっしゃるんです」。つまり街のケーキ屋さんではないのですね。
CASA MINGOさんは、「911 GT3のサーキット走行とは全然違って楽しすぎます!」と言葉を弾ませながら、カレラカップの魅力を語ります。「まず市販車の911 GT3は30分間、連続して走り続けることは難しいんですよ。でもカップカーは走れちゃいます。そこが大きな違いですね。もちろん速度も違いますよね。クルマの動きだって違う。最高にして究極のポルシェ体験ですよ」と、魅力は語っても語りつくせない様子。
一方「当然、30分走り続けるとタイヤがダメになるのですが、これが1セット30万円するので、練習走行30分だけで30万円使っちゃうことになるんです。結構ヤバいですよね(笑)。そのほかメンテナンスガレージの方へのお支払いもありますし、車はお預けしていますから、買っても普段見ることはないですし」と笑いながら語るCASA MINGOさん。そう言えるのも、得られるものが多いから。
「メンテナンスガレージの方から、こうした方がイイとアドバイスをもらったりして。で、ラップタイムが上がるのは達成感がありますね。しかも大好きな911で達成できるから、なおさらうれしいんですよ」。その目は、まるで玩具を与えられた子供のよう。「そして観客の前で走られるというのもいいですね」と、感動はプライスレスです。
「カレラカップは、ポルシェの神髄に触れられたような気がします」というCASA MINGOさん。クルマそのものはもちろんのこと、アメニティやサポート体制をみると、確かに神髄という言葉がピッタリな気がします。
最初は金額だけをみると「富裕層向けサービス」と思われることでしょう。ですが、実際は「レーシングカーでサーキット走行を楽む」良心的なプログラムに思えました。確かにお金はかかりますが、CASA MINGOさんの笑顔は満足に満ちたもの。
話は逸れますが、ポルシェは千葉県木更津に専用コースを設けた体験型施設「ポルシェ・エクスペリエンスセンター東京」をオープンさせています。最初その話を聞いた時「マイカーをガンガン走らせて、車が壊れればその場で修理までする富裕層向けサービス」と思いこんだのですが、いざ行ってみるとマイカーでの走行は不可で、キチンと整備したクルマで体験するだけでなく、ドライビング技術向上を図ろうとしているのだから驚いた次第。つまり「ポルシェで安全にクルマを走らせて、楽しんでください。ドライビング技術を磨いてください」というわけです。
エクスペリエンスセンターもカレラカップも、根幹にあるものは「望みうる限り、安全にクルマをハイレベルで楽しむ」というもの。ポルシェの神髄は、そのような志の高さにある気がしました。
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