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DXの追い風を受け、中核事業のLumadaを中心に安定成長を目指す、日立製作所 小島啓二社長

2023年05月08日 08時00分更新

安定的な成長へ

 今回の日立Astemoの非連結化も、この文脈で捉えることができる。

 日立Astemoは、日立オートモティブシステムズと、ホンダ系列だったケーヒン、ショーワ、日信工業を経営統合。日立製作所が66.6%、ホンダが33.4%の出資比率とし、日立の連結対象となっていた。

 2023年3月に発表した日立Astemoの新たな資本構成では、JICキャピタルが20%の株式を取得。日立とホンダはそれぞれに40%の出資比率とし、日立は日立Astemoを連結対象から外すことになった。2023年9月に持分法適用会社化する予定だ。

 「まずは日立が責任を持って4社をマージすることにした。だが、EVを取り巻く環境が大きく変化するなかで、今後は、自動車サプライヤーの1社として、OEM(自動車メーカー)とより深い関係を持つ必要があり、ホンダが主導権を取りやすくした方がいいと考えた。日立とホンダの出資比率をイコールにすることで、ホンダの関与を増やしていくことになる。だが、日立の持分を急激に減らすことは考えていない。いまは、IPOできる企業価値にまで持っていくことを優先する」(小島社長兼CEO)と語る。

 日立製作所が、「連結事業」における経営指標を、2024中期経営計画で重視するのは、社会イノベーション事業へのフォーカスをより高めること、上場を目指す日立Astemoを切り出して、経営指標を明確化し、経営判断する狙いがあるというわけだ。

 日立製作所の小島社長兼CEOは、「2024中期経営計画は、事業ポートフォリオ改革から、オーガニックな成長へとモードを変えて、One Hitachiで企業価値の向上を加速させるための重要な転換点と位置づけている」と語る。

 小島社長兼CEOのこの言葉を裏づける枠組みが「連結事業」ということになる。

 連結事業は、金融や官公庁、自治体、通信サービスなどの顧客を中心にDXを支援する「デジタルシステム&サービス」、エネルギーや鉄道分野での脱炭素社会の実現に貢献する「グリーンエナジー&モビリティ」、産業流通や水インフラ、ヘルスケア、家電・空調システム、計測分析システム、ビルシステムなどの幅広い領域でプロダクトをデジタルでつなぐ「コネクティブインダストリーズ」の3つのセクターで構成。「今後はこの3つの事業を回し、グローバルに成長させる」と語る。日立が注力するデジタル、グリーン、コネクティブにフォーカスした取り組みを加速することになる。

 そして、「これまでの構造改革のフェーズでは、大型資産の売却からの一過性利益や、事業徹底に伴う損失などの影響があり、ボトムラインが不安定であった。だが、今後は、こうした影響が減少することになる。2024中期経営計画中には、大型M&Aは考えていない」とする一方、「しかし、パンデミックや地政学リスクの顕在化に対応する必要がある。今後は、リスクマネジメントを強化し、一時費用や景気影響を最小化することに取り組む」と語る。

 安定的な成長が、2024中期経営計画での基本路線となる。

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