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Xperiaの先祖!? ソニーのモバイルギア「CLIE(クリエ)」は携帯と電子手帳のいいとこ取りだった

2023年04月10日 12時00分更新

スマホ以前にスマートだった情報端末
「CLIE」を知っているか?

 2000年代初頭の携帯端末といえば、Palm OSを搭載した「CLIE(クリエ)」でしょう! と言ってもほとんどの人がわかりませんよね。いや、ASCII.jp読者ならご存じかもしれません。

 携帯電話は電話をするもの、できてもショートメッセージしかできなかった頃、先んじて携帯端末として登場した“パーソナル エンターテインメント オーガナイザー”たるや、まさに近未来を感じさせるアイテムそのものだったのです。PlayStationやVAIOにAIBO、そしてCLIEと、ソニーのクリエイティブな怒涛の製品ラッシュに心躍る、そんな時代でした。

 国内でもまだ認知度の低かったPalm OSの日本語版をいち早く取り入れ、モバイルデバイスとしてCLIE初代モデルの「PEG-S500C」と「PEG-S300」が2000年9月に発売されました。

PEG-S500C

PEG-S300

 当時最大のガジェットとして君臨していたVAIOノートも、さすがにいつも持ち運ぶには無理があるし、起動は時間がかかるし、バッテリーは持たないし、持ち運んでハードディスクが壊れたらどうしよう……といった不安があったため、CLIEこそ真のモバイルガジェットだよ! と飛びついて買った記憶があります。

 この2モデルの違いは、カラー液晶かモノクロ液晶かの違い。そりゃ当然、カラー液晶一択でしょう! と手にしたものの、バックライトが異常に暗くて、これってカラーなの? というくらいに発色が良くない。カラー液晶は256色表示の反射型液晶を搭載して、明るい場所で見ればそこそこいい感じなのですが、暗がりや室内で見ると白黒なの? というくらいに見えづらかったんです。

ジョグダイヤルやメモリースティックなど
ソニーらしさが詰まった端末

 それはそれとして、さすがにソニーが作ったPalmデバイスというだけあって、独自規格の「メモリースティック」が使えたり、「ジョグダイヤル」がついていたり、「PEG-S500C」のブルーとシルバーのスタイリッシュなデザインは、所有欲がとても満たされました。Palm OSに不慣れながらも、オレは外でもデキル男になる! といって必死に使い道を探っていました。

ソニーの様々な機器で使われたメモリースティック

 VAIOやケータイに備わる「ジョグダイヤル」はもはやソニーのアイデンティティーのようなもの。紙のメモ帳でもケータイでもないデータビューワーを片手で持って、くるくるピッピの快適な操作に酔いしれたいのに、対応して動いてくれるアプリが少ないのはいつものソニーです。

 当時、CFスロットを備えるPalm端末とは違って、VAIOカラー(紫色)の細長い「メモリースティック」がそのままささる独自仕様でした。CLIEのスロットに小さなメモリースティックを差し込むと、小気味良いカチっという音とともにセットされ、軽く押し込むとスっとはずせるそのギミックすらステイタスを感じました。できることといえば、外部メモリーの役割として、本体を圧迫するアプリをメモリースティックから動かしたり、データをバックアップしたりと、今とあまり変わりませんね。

メモリースティックをそのまま挿せた

パソコンと連携して使えたのも
未来的でカッコ良かった

 CLIEは「予定表」「アドレス帳」「To Do」「メモ帳」といった個人のデータを管理することでき、専用のクレードルと合体させれば、パソコンと接続して使えました。「HotSync」ボタンをポチっと押すだけでパソコンにある静止画やソフトが転送される機能が便利でした。

 また、「Palm Desktop」というアプリをパソコンにインストールして同期するまでは良かったのですが、その頃Windowsで当たり前のように使っていた「Outlook」と同期できなくて、なんともモヤモヤしていた記憶があります。

 そもそも、「Graffiti<グラフィティ>」の手書き入力を覚えるのに必死になるも、結局はまどろっこしくてスクリーンキーボードをポチポチ押していたり。情報端末として使いたいのに、自分の脳みそが追いついていかなくて、イマイチ使いこなせてなかったような気もします。

 ソニーらしいなと思ったのは、パソコンから画像管理アプリ「PictureGear」を使って、クリエで動画や静止画を見られる形式に変換して送り込めること。デジカメで撮った静止画は、クリエにある「PictureGear Pocket」、動画は「gMedia」で楽しむという導線までうまくできていました。

外出先でインターネットに繋がる衝撃!

 そしてなんといっても真骨頂は、付属しているモバイルコミュニケーションアダプターをクリエに合体して、携帯電話とつなぐことでネットワークにつながること! ウェブサイトもメールもチェックできて、まさに今でいうところのスマートフォンにまで迫る便利さ。今から20年以上も前にですよ!

 ただ現実問題として、当時の激遅なネットワーク環境と、Palm OSのモサモサ感もあわさって、快適とは程遠いものだったのですが、外でインターネットを利用できるという事実がうれしかったのです。

 参考までに、もっとさかのぼること1990年に発売されたパームトップ「PTC-500」がソニーのPDAの原点でした。まだパソコンはWindow 95が出る前、Window 3.0の時代で、そもそもPDAという言葉すら生まれていないころです。大きさはA5サイズで上下にパカっと開いて、白黒のディスプレーに手書きペンを備えて、スケジュール管理や住所録といった電子手帳のようなものです。

1990年に発売された「PTC-500」

 ほかにも音声録音や、オプションパーツをつけることでFAXも使えたりと、当時で考えられるモバイル機能をふんだんにそなえていました。重さが1.3kgもあった事を除けば、10年間の進化のすえにCLIEが誕生したのだとも考えられます。

初代の弱点は次に必ず解消されるのがソニー

 このCLIE、初代モデルがツッコミどころ満載なのはいつもの事で、翌年2001年に登場した2世代目となる「PEG-N700C」は、あっさりと弱点を克服してきました。反射型のカラー液晶は視認性が上がり、サウンド機能を備えて、メモリースティックに記録したATRAC3形式の音楽ファイルをCLIE本体で再生して、ウォークマン的な使い方までできるようになりました。

 「だから初代は買うものじゃないよね!」と文句を言いつつも、またせっせと新しいモデルに買い替えるのがソニークラスタのいつものパターン。ちなみに、CLIEの未来は明るいなんてことはなく、2004年に終止符を突如打たれてしまいました。「はや!」とお思いでしょうか、その短命がゆえに今なお名機と呼べるモデルを生み出したのです。

 CLIEに関してはまだたくさん話したいことはあるのですが、それはまた今後にしまっておきます。

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筆者紹介───君国泰将

ソニー(とガンダム)をこよなく愛し、ソニーに生きる男・君国泰将氏

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