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ユーザー企業×ベンダー×メーカーの異色な勉強会合宿をレポート

星野リゾートと日清食品HDの情シスが軽井沢でkintone勉強会を開催

2023年02月15日 09時00分更新

現場主導のデジタル化を加速するスキルマップを作成

 続いて登壇したのは、日清食品HD 情報企画部 デジタル化推進室のメンバーでkintone、PowerAppsを担当する上野夏穂氏だ。現場での支援状況を説明した。

 現在、日清食品グループでは部署やチームごとにアプリを作ってもらっているが、食品メーカーということもあって、ITに苦手意識を持っている人が少なからずいる。

 そこで、最初は30分から1時間程度で社内開発ルールや最低限の開発方法を教え、kintoneは難しいモノではないという意識を持ってもらう。その後は、公式マニュアルをもとに開発に取り組んでもらい、わからないところが出てきた場合は、個別の問い合わせで対応していくという。あくまで自分で調べて使ってもらうことに主眼を置いているわけだ。

 現在、アプリIDの数は1200以上。それに対して、問い合わせは1日8件程度。「問い合わせにはアカウントに関するものも含んでいるので、数は非常に少ないです。開発する手法を身につけてもらえれば、問い合わせの数も自ずと減っていく」(上野氏)とのこと。

 先ほど山本氏が紹介したとおり、現在はスキルマップを作成しており、アプリ作成で必ず知っておいてほしい機能を把握している初級、アプリ作成の幅が拡がりそうな情報を知っている中級を用意している。

kintoneのスキルマップを作成中

 現場主導のデジタル化をさらに加速させるために、今後は現場同士がつながる場を提供したいという。他の部署で作ったアプリを参考にしたり、部署間を跨る業務のアプリ作成につなげる。最終的には、デジタル化推進室が対応しているアプリ作成に関する問い合わせを、現場同士が質問しあえるようになることが理想。さらに、UiPathやPowerAppsなど他のツールとの連携も進めることで、デジタル化できる業務領域を広げていきたいという。

 少人数のイベントということで、質疑応答も闊達に行なわれた。「業務が忙しくてなかなかアプリが作れないという現場の声にどのように対応しているのか?」という質問に対しては、「業務を知っている人にアプリを作ってもらうのが基本方針なので、無理して作ってもらうことまではしていない。業務効率が大きく改善するのであれば、デジタル化推進室のメンバーがアプリ作成を担います。ただし、稼働後は現場で管理できるよう、各部署にアプリの設定内容を教えています」という説明があった。今後は、ローコードツールによるアプリ開発スキルの習得やアプリ開発による成果を人事評価にも組み込むなど、開発者のモチベーションを上げる施策を検討していきたいという。

顧客と開発の立場が逆転したワークショップの行方は?

 初日の後半戦では、顧客側・開発者側の立場に分かれ、顧客の要望にあったシステムを作るワークショップが行なわれた。今回は普段システムを開発する側のアールスリーが顧客を担当。開発側は、顧客の要望をうまく聞き出し、実現するための仕組みを考えるというのがアウトプットになる。

 お題としては、たとえば「紙で運用中の出張精算をkintoneでシステム化せよ」というもの。依頼者はR3商事の経理課という設定で、システム化に至るまでの経緯や現状の申請フローはテキスト化されているものの、システム化に必要な要件はヒアリングしなければならない。星野リゾートと日清食品HDの情報システム担当者、サイボウズのメンバーとしては、普段と立場が逆転したとも言えるし、現場部門とのヒアリング力が試されるとも言える。

アールスリー側が顧客側となり、お題を出す

 ワークショップは3つのテーブルに分かれて、全部で3回行なわれたが、のぞいてみると、どこもアプローチが違うのが面白かった。顧客のリクエストを聞きながらアプリを作るチームもあれば、いったんリクエストをすべて聞いて、アプリ化をスタートさせるチームもあった。また、既存の業務フローをそのままアプリ化するのか、解決したい課題を優先させて業務フロー自体を変更するのかもポイントだ。

いつもは受注側のアールスリーがお客さまに!

 紹介した出張申請システム以外の課題は、紙で行なっていた研修プログラムのシステム化、案件管理と見積管理で使っていたkintoneの改善など。どれも実際の事例から引っ張ってきたはずのリアリティの高い案件で、おそらくIT営業であれば「熱くなる」内容だったはずだ。

 ワークショップの終了後は、各自が感想を述べる。現場経験したメンバーで構成される星野リゾートは、登場人物と業務フロー図を整理してからアプリ化のステップを踏んでいるのが特徴的。また、kintone活用歴も長いため、業務改善のための道しるべである「kintone SIGNPOST」に準拠しているかもきちんとチェックしていた。

 一方の日清食品HDのメンバーはヒアリングスキルが高く、短い時間の中で質問を深掘りしているメンバーが多かったのが印象的。サイボウズの営業メンバーは、さすがメーカーということでkintoneのメリットと機能を熟知しており、「ここからはCustomineがあればできます!」という判断も早かった。

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