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ユーザー企業×ベンダー×メーカーの異色な勉強会合宿をレポート

星野リゾートと日清食品HDの情シスが軽井沢でkintone勉強会を開催

2023年02月15日 09時00分更新

日清食品グループで現場主導のアプリ作成が進んだ理由

 次は日清食品HDのターン。kintone導入について説明したのは自称「立ち上げ屋」の山本達郎氏。営業部門、経営戦略部、Business Innovation室などで、いろいろな組織やプロジェクトを立ち上げてきた。「デジタル化推進室も、現場主導によるデジタル化を推進する専門組織が必要だと考えて立ち上げた組織です」と山本氏は語る。

日清食品HD 情報企画部 デジタル化推進室のたつろこと山本達郎氏

 現場主導によるデジタル化を推進する背景には、経営トップの強い意向があった。日清食品グループは中長期成長戦略で既存事業のキャッシュ創出力強化、新規事業の推進、EARTH FOOD CHALLENGE 2030(「有限資源の有効活用と気候変動インパクト軽減へのチャレンジ)の3つを成長戦略テーマとして掲げている。これらを実現するためには事業構造改革が不可欠で、「純粋なデジタル化にとどまらない、ビジネスモデル自体の変革を目指した全社活動」を意味する「NBX(NISSIN Business Xformation)」を推進している。

 そして、事業構造改革に向けてもっとも重要になるのは「社員の意識改革」だ。日清食品グループでは、「DIGITIZE YOUR ARMS(デジタルを武装せよ)」のスローガンを掲げ、社員一人一人が自主的に自らの業務を見直し、自らデジタルを勉強し、活用していく組織文化の形成、意識改革の必要性を、経営トップ自らが社内報や朝礼などを通じて積極的に発信してきた。これがIT部門だけでなく、現場社員が自らノーコード・ローコード開発に取り組む大きな後押しとなった。現在は、ノーコード・ローコードツールとして、RPAツールのUiPath、kintoneとCustomine、マイクロソフトのPowerAppsを活用している。

日清食品が導入するRPA、ノーコード・ローコードツール

 kintone導入はコロナ感染拡大にともなうテレワークの推進がきっかけ。2020年2月に国内グループの約3000人が原則在宅勤務となったが、ここで紙や捺印を伴う業務のペーパレス化やハンコレス化を実現したのがkintoneだ。当初は情報企画部だけでアプリ化を進めていたが、徐々に現場部門でも開発が行なわれるようになる。

 こうした取り組みは、年に1回開催される社内表彰制度「NISSIN CREATORS AWARD」で、創造性や会社への貢献度が極めて高い取り組みとして優秀賞を受賞した。「これがきっかけとなって全社でアプリ化が進み、現在では申請や報告、データ管理などの業務に活用されています」と山本氏は振り返る。

 現場によるアプリやRPA開発が進んだことで、IT部門はシステム間連携などを要するようなアプリの開発に取り組めるようになった。また、スマホでも活用できるモバイルアプリを開発し、いつでもどこでも業務ができる環境の構築を進めている。現場主体でデジタル化が推進され、システム開発の内製化が進んだことで、短期間・低コストな開発が実現。急激な事業環境の変化にも、スピーディかつ柔軟に対応できるようになったという。

人材やスキルの不足に対応 社内でも業務改善やデジタル化に注目

 2022年3月に行なった社内アンケートで「働き方改革やDX推進を妨げている要因」について質問したところ、社員からは「推進できる人材やITスキルが足りない」「本業が忙しくて手が回らない」「関連部署との連携が難しい」といった声が多く上がり、これらの課題を解決するための施策に取り組んでいる。

働き方改革やDXでの課題に関する日清食品の社内アンケート

 まず「推進できる人材が足りない」という課題に関しては、業務改善やデジタル化を成功に導く、「8つの重点領域・39カ条のチェックリスト」の開発を進めている。さらに、開発者の育成については、スキルマップを作成し、RPAやノーコード・ローコードツール開発に必要なスキルを定義。この達成度合いに応じて、初心者、初級者、中級者の3レベルで教育プログラムを整備していく予定となっている。

 さらに「本業が忙しくて手が回らない」というユーザーに対しては、スキマ時間に勉強できるポータルサイトを構築。「短時間でできる学習教材やワンポイント動画を、もっと充実させていきたい。さらに、開発しているときに検索できるQ&AやAIチャットボットも整備していく」(山本氏)。そして、スキルを身につけた社員がチャレンジできる社内試験も用意し、合格したら社内の人材データベースに取得資格の1つとして登録することで、開発者のモチベーションを上げていきたいという。

 こうした一連の取り組みは社内報でも取り上げられ、営業部門でデジタル化を推進している担当者が熱い想いを語る特集も組まれた。デジタル化推進室の取り組みを紹介した記事は、月間アクセスランキングでも上位にランクイン。「業務改善やデジタル化に対する関心の高まりを感じている」と山本氏はまとめる。

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