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【前編】西田宗千佳×まつもとあつし対談~『レイヤー構造』で考察し直す動画視聴行動

日本ではYouTubeが地上波1チャンネル分の価値を持つ

テレビは「動画配信サービスを使うための機械」に

 そして、これはちょっと古いデータになるんですけれども、非常に重要な話なので基礎知識として理解していただきたいという内容が1つあります。

 それは、ある国に映像配信が導入されて、ユーザーの利用が進めば進むほど、ユーザーの視聴デバイスがスマートフォンやPCから、テレビに移るということです。

 この画面は、2018年にNetflixに取材に行ったときに彼らが示したものです。サインアップ時はPCやスマートフォンが使われています。やっぱり文字入力がラクなPCやスマートフォンの利用が多いわけですね。

動画配信サービスは利用期間が長くなるにつれ、テレビを使って視聴する人が増える傾向にある

 ところが半年間、会員の継続が続くと、全体の視聴デバイスの7割がテレビになるんです。これはグローバルな数値なので、国によっては当然違うわけですけれども、映像配信というものがその人の生活の中で当たり前になってくると、どんどん楽で大きな画面で見るようになるということが明確だと言えるでしょう。

 前述の通り、これはグローバルなデータなので、じゃあ日本は違うんじゃないの? という懸念を持つと思います。そこで、同じように開示されたデータをもう1つ見てもらいたいと思うんですが、これは国ごとの比率の違いです。ざっくり、青がテレビだと思ってください。サインアップしたときはどこの国もやっぱりテレビの比率が少ないのですが、比率の差はあれど、どの国もテレビの比率が上がっています。

テレビを使った視聴が増えるのは各国共通

 これは2022年になっても変わっていないと聞いていますし、日本においても同じだろうと思います。テレビメーカーに聞くと「映像配信の利用率が高まっている」という話なので、映像配信の利用が定着し始めた状況において、いわゆるテレビでの視聴が日本でも高まっているし、特別なものではなくなっているんじゃないかということが、こういった資料からもわかるわけです。

 この傾向が一番進んでいるのは当然アメリカです。アメリカにおいてはCATVがコンテンツの一番大きな供給源ですけれども、供給源としてのCATVをストリーミングが2022年に抜いたという話が出ました。

 ここに示しているデータは、アメリカのニールセンが、テレビの前に2人以上いる状態での視聴状況の統計を取って出したグラフです。

 左側は2021年の第3四半期(Q3)、すなわちだいたい半年くらい前のデータなんですけれども、このときにはまだCATVがトップで、ストリーミング全体は3割弱だったわけですが、気がついてみると、放送やCATVから少しずつユーザーが減って、第2四半期(Q2)にはストリーミングが33%になり、CATVを脅かすようになっている、と。

ストリーミングの存在感が高まっている

 このニールセンのデータはもう少し面白いことがわかるので、引き続き見てみようと思います。円グラフが見えると思いますが、注目していただきたいのは、ストリーミングに割り振られているパーセンテージです。Netflixが一番大きいんですけれども、その次にYouTubeが来て、そのほかの大手が3%か2%です。

 これ、トレンドで見るともう少し面白いんです。明らかにCATVが少しずつ減っていて、ストリーミングの比率がゆっくり増えています。その理由は、おそらく各社がヒットシリーズの続編を半期に一度出すようになった影響が大きいと思われます。

 一方で、一番上のOtherは録画やゲームなんですけれど、これが微妙に減っています。すなわち、テレビがゲーム利用の端末から、映像の端末に戻ってきているのかなという傾向が見て取れます。

 これは別の論なので詳細は省きますが、ゲームはPC向けの外付けディスプレーに映すようになりました。リビングにおける視聴は映像中心になり、ゲームは個室・個人に移行している、という状況があるんじゃないのかなと思っています。

 また、各社のシェアは全体がグッと上がっているわけです。どこが上げているのかというと、やっぱりYouTubeの伸びが若干強い、それからNetflixもなんだかんだ言いながら1%くらい伸ばしているので、世の中でサービスとして定着しているものが視聴量としてもそのまま伸び続けている、というような言い方ができるのかなと思います。

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