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オフィスの紙を循環させる、シュレッダーが付く製紙機「PaperLab」、エプソン

2022年12月09日 13時00分更新

コピー用紙だけでなく、色紙や厚紙などへとアップサイクル

 セイコーエプソンが、2015年に発表したPaperLabは、2016年にA-8000として製品化。エプソン独自のドライファイバーテクノロジーにより、企業内などの現場で、使用済みの紙を、新たな紙に再生でき、環境負荷低減に大きく貢献できるのが特徴だ。大がかりな給排水設備が不要で、再生紙を作ることができるのも同テクノロジーの強みである。

 コピー用紙だけでなく、色紙や厚紙などへとアップサイクルすることができるため、それらを使ってノートや名刺などにも利用されてきた。小川社長をはじめとして、エプソングループの社員の名刺もPaperLabで作られた再生紙を使用している。

 また、PaperLabでは、古紙を本体のなかで、完全に繊維化することによって、機密情報を抹消することができ、廃棄から再生の過程で情報漏洩することがないというメリットもある。

 環境意識が高い自治体や民間企業が導入しており、北九州市の地域共創プロジェクト「KAMIKURU」では、自治体と企業の協力により、地域の紙を回収し、PaperLabで再生。再生紙は、企業や学校、地域イベントなどで利用したほか、使用済の古紙を学生自身が集めて、PaperLabを使って再生紙で卒業証書を作成。この活動は、「2021北九州SDGs未来都市アワード」の企業部門で大賞を受賞したという。

天然由来の素材で紙の繊維を結合

 今回発表したPaperLabの新コンセプトモデルは、A-8000に比べて、製品の高さを抑え、体積も約半分にまで小型化。導入時の設置自由度と操作性を向上し、より多くのオフィスへの導入を可能にしている。

 また、従来の製紙プロセスでは樹脂をベースとした結合材によって、紙の繊維同士の結合を行っていたが、新モデルでは、その成分を天然由来の素材に変更。さらに、成形時の条件を改良した新たな製紙プロセスを採用したことで、PaperLabで再生した紙を何度も繰り返し利用できるようにした。「さらなる環境性能の向上と、環境負荷の低減を実現している」という。

PaperLabで再生された紙

 さらに、従来製品では、古紙をそのままPaperLabに投入するため、PaperLabが設置してある場所まで、古紙を加工しないままで運搬しなくてはならなかった。その際に、紙に記載された機密情報などの漏洩リスクがあったが、新モデルでは、PaperLab専用シュレッダーにより、紙を裁断。機密情報を抹消した上で裁断された古紙を運搬し、PaperLabに投入できるようにした。

 「ひとつの企業が新型PaperLabを1台設置し、それぞれの企業には専用シュレッダーを設置。使用済の古紙を裁断して、PaperLabを設置している企業に提供し、リサイクルした紙を活用するといった活用提案も可能になる。紙循環の環境貢献の輪を築き、関連企業全体による環境貢献活動も可能にできる」という。

 ここでは、グループ企業内での活用だけでなく、異なる企業が入居するオフィスビル全体での紙の循環も想定。テナント各社にPaperLab専用シュレッダーを設置し、機密情報を処理。ビル管理室などに配置した新型PaperLaで再生させるといった使い方もできる。

シュレッダーして捨てるから、シュレッダーして再利用するへ

 新たなPaperLabの使い方を見てみよう。

 まずは、使用済みの古紙をPaperLab専用シュレッダーに投入すると、機密を担保できるレベルの細かさに裁断。この紙片は、PaperLab本体で再生するのに適した形に加工される。

 紙片を新たなPaperLabに投入すると、独自開発した機構によって発生する機械的衝撃により、水を使わずに綿のような繊維にまで分解する。この時点で文書情報は完全に抹消される。

 続いて、繊維同士を結着するため、結合材となる「ペーパープラス」を混合する。新たなPaperLabでは、この結合材を天然由来成分としたことで、環境への負荷をさらに軽減しているという。ここで作られた綿のような繊維は、シート状に堆積することになる。ここに、適切な圧力や温度を加えることで、ペーパープラスと繊維が結合して、強度が向上。最後に成形して、紙の厚さになるまで加圧、圧縮を行う。これを決められた用紙サイズにカットすると、新しい紙が完成する。

「エプソン独自の技術であるドライファイバーテクノロジーを活用することで、繊維化、結合、成形を行い、新たな紙を作ることができる」とする。

 今後、セイコーエプソンでは、PaperLab による環境貢献を可視化できるように、生産状況やCO2排出量、水と木材消費量の具体的な削減量などを、環境貢献量として、PCやモバイル端末から、いつでも確認できるアプリを開発するほか、メンテナンスのアナウンスなどを通じて、安定的な稼働と環境貢献へのサポートを行っていくという。

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