週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード
and SORACOM

第8回

IoTプロジェクトを軌道に乗せるSORACOM Professional Serviceにも高い評価

プラントの巡回点検を自動化する防爆ロボット「EX ROVR」とSORACOM

2022年08月22日 09時00分更新

 オイル・ガスのプラントにおける巡回点検を自動化する三菱重工業の「EX ROVR(エクスローバー)」は、ロボットとクラウドの間のセキュアな通信にSORACOMを活用している。三菱重工の開発チームの方々に、製品の概要やSORACOM導入のインパクト、IoTプロジェクトの推進に役立った「SORACOM Professional Service」について話を聞いた。

EX ROVRと三菱重工の開発チーム

災害対策からプラントの巡回点検へ 防爆ロボット「EX ROVR」の道程

 「防爆モビリティ」と名付けられた三菱重工のEX ROVRは、プラント巡回点検に特化した専用ロボットだ。防爆とは爆発源にならないという意味。通常のロボットを発火性がある空間で動作させると、ロボット自体が発火源になってしまう。防爆ロボットの場合、高い内圧をキープすることで、ガスの引火や電気火花などから火災や爆発を引き起こさない特殊な構造を持つ。

 三菱重工ではこれまで原子力発電所や災害場所など過酷環境で動作するロボットを手がけてきたが、EX ROVR開発のきっかけは2012年に起こった中央自動車道の笹子トンネルで起こった天井版の落下事故だ。原子力発電所の検査用ロボットのメンバーが集まり、爆発性雰囲気のトンネル内を移動して、調査できるロボットの開発プロジェクトとして2014年にスタート。災害現場に立ち入り、遠隔操作で災害現場を調べるべく開発されたのが第一世代のEX ROVRだった。

 しかし、実際にこうした防爆モビリティのニーズが高かったのは、実はオイル・ガスのプラントでの巡回点検だった。海上・洋上プラットフォーム、製油所や化学プラント、製鉄所などでは、各設備に異常がないか計器類を調べたり、異音や温度上昇がないかを調べる日常的な巡回点検が必要だ。だが、オイルやガス漏れが発生した場合、引火する可能性があるため、人間がやるのはまず危険。また、悪天候や深夜でも人手の点検が必要で、大きなコストがかかっていたという。

 EX ROVRのソフトウェア開発を手がけた三菱重工業 原子力セグメント 機器設計部 装置設計課の小島弘義氏は、「プラントの計器の数値を書き取ったり、温度を調べたり、小規模のプラントでも100項目以上のチェックリストがあります。それを人が1回につき1時間、1日数回巡回して書き取っていくので、負担の大きい作業です」と語る。

三菱重工業 原子力セグメント 機器設計部 装置設計課 小島弘義氏

 こうした課題の解決を狙った第二世代のEX ROVRは、巡回点検を人間の代わりに請け負えるロボットとして開発された。平常時はプラントの稼働中の巡回点検、インシデント時には遠隔操作による現地調査。これを実現すべく、プラントの点検や監視を省力化する第二世代のEX ROVRは学習済みルートの自動走行機能も搭載することになった。また、オイル・ガスプラントでの利用を前提として、階段の昇降能力を徹底的に追求。オイル・ガスのプラントは配管を短くするため、フットプリントを小さく、上に積み上がる構造になるため、どうしても階段が多くなるからだ。

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

この連載の記事