●意外な「香り」が果実を引き立てている
――エッセンスを加えているんですね。でも……飲んでみたところ「花」とか「ハーブ」とかの香りはよくわからなかったです。
吉田さん:それが正解です。花の香りを出したいのではなく、果実の香りを引き立たせるための隠し味のようなエッセンスですから。
――そういうことなんですね。「CRAFT -196℃」は最初にも話しましたが、味わいに奥行きがありますね。レモンは皮のほろ苦さも感じられて本格的ですし、みかんはみずみずしさと飛び抜けた甘さが同居していて、りんごはフレッシュな酸味と蜜の両方が感じられます。この厚みがエッセンスによるものなんでしょうか。
吉田さん:はい、丁寧に調整して、果実がもっともおいしく感じられるように設計しました。サントリーが長年に渡り蓄積してきた技術力があるからこそ、「果実以上に果実のおいしさ」を表現した果実感あふれる商品に仕上がっています。
――「アイデア」はゼロから出てきたんですか?
吉田さん:スピリッツや洋酒などを長年作ってきた経験から、この組み合わせはこれが引き立つといった知見があり、これが土台になっています。
――歴史と技術に裏打ちされているんですね。今回はアルコール度数が7%と6%。狙いは?
吉田さん:缶チューハイをメインで飲んでいる人が好む度数が7%前後、というデータもありますが、今回はアルコール度数を決めてから作ったのではなく、おいしさにこだわった缶チューハイを目指したところ、フレーバーによってそれぞれの果実の香りを最大限ひき出すためのアルコール度数が違ったので、それに合わせた、という経緯があります。
――レモンとみかんが7%で、りんごが6%ですよね。
吉田さん:〈ひきたつりんご〉は果実の味わいの性質上、甘みが強いほうがいいなと、おいしさを突き詰めていった結果6%になりました。度数というルールは特に設けず、今後も限定フレーバーを出していきますが、味わいから検証して最適な度数を探っていく予定です。
●実はお酒が飲めない!「想像力」がカギ
――最後に、吉田さん自身のお気持ちをふくめて、「CRAFT -196℃」をどんな人にどんなシーンで飲んでもらいたいと考えていますか?
吉田さん:商品のターゲットはまわりに配慮するお疲れ世代の人たち。ここ数年のコロナ禍の生活の変化によってすり減ることが増えてきたと思うんです。例えば、外食の機会が減り今まで以上に気分転換の時間がなかったり、家族の健康に気を遣われたりして、そんな人たちに、「お疲れ様」の気持ちと共に「CRAFT -196℃」をお届けしたいです。お酒を飲む時間が、ほっとする時間や癒しの時間になってほしいですね。実は私自身はお酒をほとんど飲めないのですが、お酒を好きな皆様がお酒を飲む時間をいかに大切にしているかを聞いているので。
ーーえ! お酒を飲まれないのですか!?
吉田さん:ええ、過去にアルコール感受性を調べる検査を受けたのですが、お酒が飲めないタイプに分類されました。それまで少量飲む機会はあったのですが、結果を受けて諦めましたね。
――開発にあたって試飲はしないんですか?
吉田さん:もちろん試飲(テイスティング、味見)はしますが、飲み込まないようにしています。私の場合はお酒を飲めないからそうしていますが、そうでなくても試飲は午前におこなう事が多いので、口に含んでも飲まないという事は多いですよ。もちろん、開発チーム内にお酒を飲める人もいて、一緒に開発を進めています。また、官能検査という中味を評価する経験値も積んだうえで製品開発に臨んでいます。
――社内では珍しくないですか?
吉田さん:サントリーはやはりお酒好きな人が多い会社ですが、お酒を飲めない人もいますよ。サントリーグループではソフトドリンクもやってますからね。私は飲み会では「オールフリー」「のんある晩酌」などノンアルを飲んでいます。お酒が入った雰囲気や人と話すことも好きなので、飲み会もとても楽しいですね。
――ノンアルは年々おいしくなってきてますからね。しかし、驚きました。「CRAFT -196℃」が単純に飲めて気持ちよくなるだけではなく、品質や味に自信があることの裏付けですね。
吉田さん:お酒が飲めない分、お客様のお声や同僚の声に必死で耳をかたむけて、お酒を飲んだらどういう気持ちになるか、お酒を飲みたい時はどういうシチュエーションかを、いつも想像力を働かせています……! 自分自身は飲めないのですが、飲んだ人にひとりでも多くおいしさを感じてもらって笑顔になってもらいたいです。
――お酒が好きな人以上に苦労して開発したことは想像に難くないです。吉田さんの「お疲れ様」のこもった「CRAFT -196℃」を家に帰ったら思いっきり飲みたいと思います。ありがとうございました!
■開発の裏側を聞けたところであらためて飲んでみます!
開発の背景の話をお聞きするとありがたさもひとしおです。あらためて3商品を飲んでみます!
●「CRAFT -196℃〈ひきたつレモン〉」
特徴 -196℃製法によるレモン浸漬酒に、ジューシーな香りと果実を感じさせるサントリー独自のレモンピール蒸溜酒を加えた。レモンの香りを引き立てるエッセンスとして、花の香りをそえている。グラスに注ぐとレモンの華やかな香り広がる。
飲んでみて「口に含むとレモン以上にジューシー。皮のほろ苦さも感じられて本格的。プワンと立ち上がるレモンの香りが華やかで、飲む前からレモンを感じられる!」
●「CRAFT -196℃〈ひきたつみかん〉」
特徴 -196℃製法によるみかん浸漬酒に、厚みのある複雑な味わいを感じさせるサントリー独自のオレンジピール蒸溜酒を加えた。こちらはほのかなハーブの香りがエッセンス。みかんの心地よい甘さと香りを引き立たせ、果実を感じる味わいに仕上げた。
飲んだみて「熟れたみかんの中央部をくりぬいたかのようで、みかん以上にジュワッと甘い。みかんらしい親しみやすいみずみずしい口当たりと、飛び抜けた甘さが同居していてスゴイ」
●「CRAFT -196℃〈ひきたつりんご〉」
特徴 -196℃製法によるりんご浸漬酒に、サントリー独自のホワイトブランデーを加えた。こちらはジューシーなフルーツの香りをエッセンスにプラス。りんごの芳醇な香りとすっきりした飲み口を楽しめ、果肉を食べているような果実感あふれる味わい。
飲んでみて 「口に含んだ瞬間、酸味ある甘さがシュワっとはじけて、りんご以上に爽やか。蜜をよく含んだりんごをかじった時のように甘みも濃く飲みごたえも十分あります」
パッケージは果実が随所に描かれた鮮やかな市松模様。缶上部のポットスチルのイラストが目印だ。明るい配色は春の陽気にもぴったりで、吸い込まれるように手にとってしまいますね。
(提供:サントリースピリッツ)
週刊アスキーの最新情報を購読しよう