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ゲーム性能からクリエイティブ性能まで、インテル/AMD最上位CPUを比較

Core i9-12900KS最速レビュー!最大5.5GHzの第12世代Core最上位CPUはライバルを圧倒する?

2022年04月05日 22時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集● ジサトラユージ/ASCII

消費電力と温度上昇は高クロック版の宿命

 Core i9-12900KSのパフォーマンスはCore i9-12900Kよりもせいぜい4〜5%増、場合によっては差がないこともある、という傾向が見えた。だが消費電力や発熱はどう変わるのだろうか?Core i9-9900KSがそうだったように、選別品の高クロックモデルは消費電力や発熱が激増していることが多い。

 まずはシステム全体の消費電力を比較しよう。ここでは「RS-WFWATTCH1」を使用し、システム起動後10分後の安定値(アイドル時)と、Handbrakeテスト(前述と同じ)時のピーク値を比較した。

システム全体の消費電力

 第12世代Coreはアイドル時の消費電力がRyzenよりも低いが、高負荷になると一変。特にDDR5環境だと消費電力が激増することが分かっているが、Core i9-12900K→12900KSになるとさらに60W以上消費電力が増えるのは驚くしかない。一方、Ryzen 9 5950Xや5900Xの消費電力が250W程度に収まっている。前掲のエンコード時間と合わせてワットパフォーマンスを考えると、Ryzenが極めて優秀となり、Core i9-12900KSはむしろCore i9-12900Kよりも悪化している。

 Core i9-12900KSの消費電力がさらに増えたことは分かったが、実際にCPUの補助電源コネクター(2系統のEPS12V)からどの程度の電力がマザーボードに流れ込んでいるのだろうか?そこで今回はElmorlabs製「PMD(Power Measurement Device)」と「EVCX2X」を利用し、Handbrakeで処理中のEPS12Vに流れる電力と、その際のCPUパッケージ温度を追跡した。データの追跡にはHWiNFO Proを使用している。

Handbrakeでエンコード中にEPS12Vを流れた電力の合計値。横軸は処理時間で、左から右に流れる

 こうしてグラフにすると、Core i9-12900KSの消費電力の高さは圧巻である。消費電力が安定している前半(左半分、H.264の処理中)で比較すると、Core i9-12900Kが主に250〜290Wあたりを行き来しているのに対し、Core i9-12900KSでは300W〜370Wあたりまで増加する。

Handbrakeエンコード中にEPS12Vを流れた電力の最大値(Elmorlabs PMDによる計測値)

 Core i9-12900KS/12900Kに加え、Ryzen 9 5950X/5900Xの最大値をまとめたのが上のグラフとなる。Ryzenはせいぜい190W前後なのに対して、Core i9-12900Kは300W弱、Core i9-12900KSになると最大370W弱消費する。今回使用したZ690マザーはEPS12Vが2系統あるので、各EPS12Vからはざっと15.5Aずつ消費されていることになる(15.5A×12V×2=372W)。Core i9-12900KSで組もうと考えているなら、電源ユニットの12V出力に十分注意したい。

Handbrakeエンコード中のCPUパッケージ温度

 消費電力が増えれば発熱量も増える。上のグラフはHandbrakeエンコード中のCPUパッケージ温度だ。Core i9-12900Kで80℃をやや超える程度だったが、Core i9-12900KSにすると93℃前後まで上がる。検証に使用したのは360mmラジエーターを搭載した簡易水冷CPUクーラーなので、導入にはかなりの覚悟が必要だろう。

最大クロック5.5GHzを誇るCore i9-12900KSは
肝の据わったファンのためのコレクターズアイテム

 以上でCore i9-12900KSのレビューは終了だ。Core i9-12900KSは「選ばれしAlder Lake-S」であることは間違いないが、実用性についてはかなり疑問が残る。プレミアムモデルの性能をフルに引き出したいならCore i9-12900KSはMTP無制限で使うべきだが、そうすると消費電力が牙をむく。ワットパフォーマンスで考えるならCore i9-12900Kを使うべきなのは明らかだ。コストを度外視できる胆力を備え、かつ強力な水冷CPUクーラーを利用できる上級者向けのパーツだ。

 ただ、これまでのCPUの歴史を振り返っても、クロックを盛った選別個体だけで構成されたプレミアムモデルにおいてコストパフォーマンスが見合っていた例は(筆者の記憶する限り)存在しなかった。今回のCore i9-12900KSもこの宿命からは逃れられなかったということだろう。

 温度や消費電力のマージンをギリギリまで攻めた設定で出荷できる特別な個体が、Core i9-12900KSなのである。「俺たちはこんなぶっ飛んだCPU(Core i9-12900KS)も出せるんだぜ?でもお前ら(Ryzen)はどうだ?」というインテルのマイクパフォーマンスの声が聞こえてくるようだ。

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