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知的財産権への意識が日本の将来を変える! 特許庁広報室のバズらせ普及戦略とは?

 グローバルビジネスの時代に、技術やトレードマーク、デザインなどの権利を守る知的財産権(知財)の重要性は、ますます高まるばかり。でも知財って何? 特許って何? 巷にあふれているのに、よく分からない「知財」について、広く知ってもらうために活動しているのが特許庁の広報室だ。広報誌はもちろん、最近ではTwitterYouTubeを駆使したSNS活動にも力を入れており、お堅いイメージを覆す動画もバズらせている。今回は特許庁広報室の皆さんへリレー・インタビュー形式で、それぞれ専門分野の活動や目標を、元ウォーカー総編集長の玉置泰紀が聞いた。

今回のチャレンジャー/(写真左から)特許庁総務部 総務課広報室の佐藤純也(広報室係員)、松浦安紀子(広報室長)、小髙絢子(広報室係員)、中野裕之(総務課長補佐・広報班長)

特許庁広報はどんな仕事をしている?

 リレー・インタビューの一番手は、広報班長の中野裕之さん。まずは広報活動全般、広報誌やコロナの影響について聞いた。

――主な活動について教えてください

中野「特許庁のホームページには、特許に関する手続きや、皆様を支援させていただく施策などについての詳細を掲載しております。ほか、広報誌『とっきょ』は、企業のインタビューや特許庁自体の政策などを載せて、なるべく親しみやすく、裾野を広げられるような媒体になっております」

――Twitter、YouTubeといったSNSも活用されています

中野「YouTubeに関しては、セミナーの動画など専門的な内容のものがある一方で、知財に馴染みのない方々でも馴染みやすい動画も含まれています。Twitterでは、まず情報に触れていただくことを目的に、比較的親しみやすい情報を発信しています。

 またツールという意味で、広くイベントも含めますと、特許庁の見学コースがあります。コロナ禍前には、大学生や企業の知財部の新人の方々に、実際に来庁していただいていました。新型コロナウイルス感染症の影響でオンラインにて実施していますが、特許庁がどんな仕事をしているか、どのように審査を行なうかなどを含めてご紹介する機会を設けております」

――SNSの普及前に比べると、情報発信が非常に立体的になっています。事業者などに幅広く特許について伝えていかなきゃいけないってことですね

中野「実際に仕事として必要な専門家の方には、引き続き伝えていかなければいけないですし、裾野を広げていくという意味では本来、知財を取得したり活用したりしてほしい方、まだ情報に気付いていない方にもしっかり届けていきたい。

 日本全体としても、知財に対してもう少し意識していただいて、クリエイティブな活動が権利として保護され、産業の発展に貢献しているというところに目を向けてほしいとも思います。玉置さんがおっしゃったように各ツールを使って、いろんな層へ立体的に発信していきたいですね」

――特許庁による情報発信で、コロナ禍で影響を受けたり、意識したところは?

中野「やはり物理的にイベントが難しくなりました。例えば特許庁では毎年『こども霞が関見学デー』を実施しております。子どもたちに、ひらめきや創造性が世の中や産業を支えていることを伝えるイベントですが、2020年度は中止に。でも、2021年度はオンラインに切り替えて開催できました。

 オンラインでの“こどもデー”は、今までのイベントのやり方と全然違うので、大変苦労した部分も多かったのですが、新たな発見もありましたね。オンライン開催したことで、普段来られない地方の方々にも参加していただけました。画面越しのワークショップでも、本当に多くのお子さんや今まで届けられなかった人たちにも、特許庁が扱う産業財産権、創作や創造を楽しむことを知ってもらえました。これはコロナ禍で、ひとつ気付きになった部分かと思っています」

――子どもや大人もオンラインに慣れてきたでしょうからね

中野「そうですね。さらに、オンラインでの実施に切り替えた特許庁の見学コースについても、東京以外の大学生などが気軽に参加できるようになり、裾野を広げる良い機会になったと前向きに捉えています」

――KADOKAWAでもクールジャパントラベルで「リモトラ」というリモートツアーをやっていますが、リモートで何かを見てもらうのもいいかもしれない

中野「真剣に向き合ってみると、オンラインでも実はしっかり実施できて、より利便性が高いということもあり、新たな気付きとして考えるきっかけとなりました」

「広報誌・とっきょ第52号」

――広報誌『とっきょ』にも非常に皆さんに親近感のある、いろいろな会社や商品のこと、知財というものにどうやって目覚めて取り組んだのか、などが紹介されています。最新号(52号)の見どころは?

中野「52号は鉄道特集です。鉄道はよく目にする身近なものですが、この鉄道を運行するに当たっては、とても多くの技術が集積されているんです。信号や車両の制御システムや車体の製造などもそうですし、特許などの知的財産が活用されています。コロナ禍にも、本当にさまざまな挑戦をされている業界なので、そういうところを広報誌を通じて発信していきたいと考えています。

 また今回は、JR西日本と日本信号の社長インタビューをぜひ読んでいただきたいですね。会社の経営や、その会社全体の大きなビジョンの中で、知財がどういう役割を果たすのか、ということを語って下さっていて、実に読み応えのある記事になっています。

 特にJR西日本は知財功労賞を受賞されていて、知財に対して精力的に取り組んでいる企業です。その様子も取り上げさせていただき、読者にアピールしつつ横展開もしていければいいなと思います」

――広報誌『とっきょ』の制作時に意識されていることは?

中野「合計16ページで企画によって誌面ごとに特色があり、読者層も違います。全体としては、いろいろな層に訴求できるようになっております。

 例えば、独立行政法人 工業所有権情報・研修館(INPIT)の知財総合支援窓口の活用事例を紹介するページがあります。出願したいけど勝手がよく分からない方々には、ぜひこれらの情報を届けたいですし、企業の知財戦略を漫画で紹介するページもあるんです。文字で書くだけだと、これまで知財をあまり意識して来なかった方々には、読んでいただくまでのハードルが高いと思いますので、漫画で分かりやすく説明しています」

――漫画で分かりやすく伝えられたらいいよね

中野「ほかに今年度は、知財に関する最新ニュースを取り上げる『知財TOPICS​​』というぺージを作りました。ニュースで聞いたことはあるような事柄を改めて解説して、少しでも関心を持っていただけるような企画です。馴染みのない方にも特許や意匠、商標がどのようなものかということを、ちゃんと理解していただくきっかけになれば。引き続き誌面の企画ごとにターゲット層を意識しながら、多くの方に情報を届けたいと思っています」

――これからもっと伝えていきたいことは?

中野「知財って、実はいろんなところで世の中に貢献しているんです。目に見えないところで技術を権利にして、実際その製品をしっかり守っている。日常生活からSDGsなどのすごく大きなテーマまで、知財は本当に多くの場面で貢献できていると思っています。その重要性を、読者の皆さんに伝えられるような誌面を作っていきたいですね」

特許庁の本庁舎前にて

――SDGsとか、産業の形態もどんどん変わっていく

中野「そういった状況でも、例えば特許で言えば、技術がある限り貢献できる。そこを伝えたい」

――特許庁の人は、幅広くいろんなことに興味を持って調べないといけないってことですね

中野「商標やデザイン、特許であっても、知財はありとあらゆる製品や、あらゆる技術分野に使われています。車からカーボンニュートラル、燃料電池でも何でも。だからアンテナは高くしておかなければならないと思います」

――カーボンニュートラルは注目が高まっていますね

中野「知財の蓄積がどれくらいあるかと関連して、日本が強い分野や貢献できる分野がある。直接的には見え辛いですが、そういった部分もしっかり発信したいですね」

国民的お菓子の形が立体商標に!
Twitterで身近な知財情報を発信

 二番目は、Twitter関係で主担当をしている係員の小髙絢子さんに、現在の活動とこれから行なってみたいことを聞いた。

――特許庁のTwitterと関連アカウントは、たくさんありますけども

小髙「広報室で扱っているのは公式の日英版、@jpo_nipponと@jpo_JPNになります」

――特許庁絡みの他アカウントや、フォローされているところを見ると、内閣もある。Twitterの運営という意味では、省庁全般を見ながらしているんですか?

小髙「他省庁のものまで全部巡回するのは、なかなか難しいですけれども、目に付いたツイートがあれば参考にさせてもらっております。また、『特許庁』等のキーワードで何が今つぶやかれているか、というリサーチは日常的に行なっています」

――アカウントの運営について、コロナ禍となった一昨年から現在にかけて、何か変わってきた部分は?

小髙「基本的には、特許庁ホームページに新着情報として掲載されているものと連動する形で毎回ツイートしていますけれど、『〇〇のお知らせ』『〇〇について』といった、いわゆる定型的な堅い発信が多かったんです。でもターゲット層への効果的な訴求が重要なことを再認識したので、目に留まるような画像を貼り付けたり、どうすれば見てもらえるかを、広報室内でもより一層検討するようになりました」

――これまでに一番バズったツイートとは?

小髙「株式会社明治さんのお菓子『たけのこの里』の形が、立体商標に登録されたというツイートですね。予想以上に拡散されて、かなり驚きました。これがバズるということか! と。商品自体の魅力という部分が大きいとは思いますが、身近なお菓子にも、こんな制度でこういう権利が登録されていることを、皆さんへかなり広く訴求できた良い機会になったと感激しました。

――「たけのこの里」は「きのこの山」とどっちが好きか、国民的に論争を楽しむぐらいの人気商品ですからね

小髙「ただ実際には、自分たちの投稿が直接バズったのではなくて、それを引用リツイートで解説して下さった一般の方のツイートが、一番バズっていたようでしたね」

――元ツイートが目立たないという(笑)。今後してみたいこと、現在もしているけど、もっと面白くしたいことはありますか?

小髙「一時期、クイズ形式のツイートを行なったんですよ。良い反応をいただけたので、また参加型の企画をやりたいですね。

 省庁関係では、農林水産省の公式アカウントとリプライをし合うことがあったので、省庁をまたいだコラボツイートがまたできたらいいな、という夢を抱いています」

――YouTubeコラボでも面白いものがありました

小髙「知財は緻密な取り組みが多いので、過去の広報誌『とっきょ』などで紹介した案件をツイッターで改めて紹介することで、『こんな記事があったのか』『この商品にはこんな知財が』と再発見していただく機会になります。過去のものが現在につながっていることも多いので、タイミングよく再発信を行なっていきたいなと。

 また個人的には“中の人”ネタも、チラホラやりたいと考えていますね」

—―ぜひやって下さい! ほかにもTwitterでよくある「今日は何の日」的なネタで『発明の日』や、歴史に残る発明や発明者、知財で有名な方の誕生日や記念日を取り上げても面白いのでは

小髙「『今日は何の日』は、確かに有効な手段のひとつだと認識していまして、最近だと2月22日の猫の日ですね。たまたま広報誌『とっきょ』のバックナンバーで猫グッズ紹介記事が2回もあったので、猫の日に改めて紹介しました。

 あとは『発明の日』より少しマイナーですが、『特許の日』と呼ばれる日もあるんです。特許第1号が認められた日(8月14日)で、その日には毎年、第1号案件についての情報発信などしています」

バズる動画で特許庁の堅物イメージが激変?
面白くて知財がよく分かるYouTubeは必見!

 次は、YouTubeへの出演などでも活躍中の佐藤純也さん。バズったあのコラボ動画の反響や裏話を聞いた。

特許庁にバズマフ襲来!? 知財愛をBUZZ MAFFにぶつけてみた! 

――佐藤さんの出演したYouTubeについてですが、まず言わせてください。農水省のBUZZ MAFF(ばずまふ)とのコラボ動画、最高でしたね!

佐藤「ありがとうございます。特許庁に、農水省の官僚系YouTuber集団・BUZZ MAFFが襲来という動画でして、我ながらやり切りました」

――再生回数3万3000回超え。でも実はBUZZ MAFFの方でも同じ内容をYouTubeで流していて、こちらが13万回超え。登録者数では特許庁のJPO Channelが2790人、BUZZ MAFFは14万3000人。強敵をあえて土俵に引き込んだのは大成功だったのでは?

※データは2022年3月15日現在

佐藤「そうですね。あの有名なBUZZ MAFFとコラボできたのは特許庁としてもとてもありがたいことです。特許庁のYouTube登録者数が約2800人にも関わらず、3万回以上再生されたのは、登録者以外の方々にたくさん観ていただいたということなので、やりがいも感じているところです」

――どうしてコラボを企画されたんですか?

佐藤「もともとは農水省の広報室さんと意見交換の機会がありました。農水省は、先進的な広報の取組で有名でしたので、我々もいろいろとヒアリングをさせていただきまして。そんな中で、霞ヶ関初の官僚系YouTuber集団であるBUZZ MAFFさんとのコラボ企画が持ち上がりました。

 と言いますのも、農林水産業と知財とは、実は切っても切れない関係があります。例えば、農水省さんが管轄している地理的表示(GI)保護制度と、特許庁の地域団体商標制度は、どちらも地域ブランドを保護するためのものという共通点があります。ほかにも、最近話題のスマート農業なども最先端の特許技術が支えておりますので、農水省さんと特許庁とで、そのあたりの関わりを発信できたらいいな、と。

 こういったことも含めて、コラボ動画を作りましょうという話になりました。多くの方にこういった両省庁の取組を紹介できたことは、すごく良かったと思っております」

――YouTubeを観て、特許審査官がみんな理系というのも面白かった

佐藤「特許審査官は、全員理系出身の方々なのです。私も同じ庁内とはいえ特許審査の現場に伺う機会はめったにないので、BUZZ MAFFさんをお連れする立場ではありましたが、私自身、特許審査官からすごく楽しく話を聞かせていただきました」

――でも佐藤さんは、とても場慣れしてるというか、BUZZ MAFFのお二人も「佐藤さん凄いですね」と褒めてましたよね

佐藤「いやいや全然ですよ、コツも何も分からなくて。実はBUZZ MAFFさんと特許庁のコラボ動画は、同日に2本撮りました。私も最初は緊張していましたが、先にBUZZ MAFFさん側の撮影を行ないまして、その後に特許庁側の撮影という流れだったので、緊張もほぐれ、おかげで自然体で撮れたのかな、と。

――BUZZ MAFFもですが、特許庁のYouTubeではアクション仕立ての「商標拳〜ビジネスを守る奥義~」の完成度が凄い! 168万回以上も再生されてますね

商標拳~ビジネスを守る奥義~

佐藤「この動画は、特許庁にあるデザイン経営プロジェクトチームが一丸となって作成した動画ですが、非常にクオリティが高いですよね。あの再生回数を目標に今後頑張りたいと思っています(笑)」

――『商標拳』を超えるためというのもあるし、官公庁だから当然ちゃんと伝えなきゃいけないことはしっかり伝える、そのバランスがすごく重要ですよね。今後はどんな挑戦をしていきたいですか?

佐藤「BUZZ MAFFの視聴者は、我々が普段接する知財関係者ではなくて、むしろまったく関わりのない方々です。       

 そんな皆さんにも、知財を身近に感じていただきたいという気持ちがありますし、また、面白さと真面目さのバランスを取るのがかなり難しいです。ふざけ過ぎると、ちょっと何をやっているの? となりますし、あまり堅すぎても観てもらえない。それでも動画を公開した後には、外部の方や友人からも『動画観たよ』『面白かったよ』などの声が寄せられました」

――反響は大きかったんですね

佐藤「YouTubeのコメント欄に『特許庁の堅いイメージがガラリと変わった』『見学に行きたい』『特許庁のJPOチャンネルを初めて知った』といった感想が多々ありました。また、今まで特許庁に興味なかった方々までが、動画を視聴し、チャンネル登録して下さったことがすごく嬉しかったです。今後、動画を作成する機会があれば、その気持ちを忘れずに、そして面白さと真面目さのバランスを保ちながら撮影に臨みたいですね」

――BUZZ MAFFが農水省のYouTuberとして、あれだけ浸透したわけだから、今度は特許庁のJPOチャンネルの番ですよ。これからも面白い動画を期待しています!

子供たちに創造の楽しさを広めることが
日本のイノベーションと産業を変えていく

 ラストは広報室長の松浦安紀子さんに、総括とこれからの目標を語ってもらった。

――今回の取材で、特許庁広報室が多彩なツールを駆使しながらチャレンジしていることを感じました。松浦さんが、室長として今後さらに注力したいこと、目指すところを教えてください

松浦「先ほど真面目なところとキャッチーで面白いところ、という硬軟のバランスの話がありましたけれども、広報室の業務としては両方の側面がありますね。

 今回のインタビューでは、広報誌やTwitter、YouTubeといった知財のライトユーザーや、一般の方向けの広報活動を中心にお話しさせていただきましたが、もともと特許庁の本分としては特許・意匠・商標といった知的財産を適切に保護すること、そしてそれを通じてイノベーションを促進することにあります。

 昨年6月に特許庁MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)という組織が向かうべき旗印を更新しまして、そのうちのミッションとは「『知』が尊重され、一人ひとりが創造力を発揮したくなる社会を実現する」というものです。

 なので、我々は単なる手続官庁ではなく、一人ひとりに寄り添い、そのような社会を実現するためにイノベーションを促進する存在になりたい。そのために必須である情報発信、例えば手続料金や運用の改定のお知らせですとか、そういった知財を普段から利用していただいている層に向かって、重要なお知らせとしてご理解いただかなくてはいけないことはきっちりお伝えする、そこはしっかり押さえていきたい。

 その上で、知財の取り組みがまだまだで、これから本腰を入れようとする中小企業やスタートアップの方々にも、ハードルを下げるような分かりやすい制度説明をしていきたいですし、知財に無関心だった方に振り向いてもらえるような、親しみの持てるコンテンツ発信もしていきたいなと考えています」

—――特にスタートアップや商品を作り始めたばかりの人は、なかなか知財にまで気が回らないことが多い。でも知財のことを最初から考えていった方が絶対いいんだよ、と意識してもらえるといいですね

松浦「はい。スタートアップや中小企業の方々は、我々が重視している広報ターゲット層のひとつです。一方で、広報室独自の取り組みとして言及させていただきたいのは、子どもとか青少年向けの広報ですね。もちろん、特許庁ってこんな仕事してるんですよ、というお仕事紹介もしていきたいのですが、それだけではなく、若者への知財の普及啓発を通じて、日本の将来的な技術力、競争力の強化も目指していきたい。例えば中国では、PCT出願(国際特許出願)​​数が近年すごく伸びていますが、聞くところによると中国では、若年層からの知財教育を強化してるらしいんですね。

 出願数の伸びとの因果関係は分かりませんけれども、若い頃からの啓発は、やっぱりとても大切だなと。しかし知財啓発といっても、若年層にどうやってアプローチしていくのか? 我々が考えているのは、冒頭で中野からもお話がありましたけど創造力ですね。自らの手で創造することの楽しさを知ってもらいたい、そういう取り組み方です。我々は『ジュニアイノベーションフェス』と銘打って、子どもの創造性を高めるためのイベントやコンテンツ発信を年1、2回実施していますが、『こども霞が関見学デー』もその一環という位置付けです。

 子どもたちに、自らの手でイノベーションを作ることを目指す体験をしてもらうことで、創造への意欲を高めてほしい。将来的に産業競争力の源泉となってくれたらいいなという思いです」

――最近ではプログラミング教育などもありますが、知財の知識も子供の頃から身に着けられるといい。これからビジネスが、さらにグローバルになっていく時代に必要ですよね

松浦「そうですね。小学校低学年くらいの層に知財の概念が分かるかというと、なかなか難しいと思います。まずは創造って楽しいな! とモノ作りに目覚めてくれた子が、将来イノベーターになってくれたらすごく嬉しいじゃないですか。そういったところから地道に活動していけたらと考えています」

――ITも全部知財に関わっているということを、ぜひ若い人にも知ってもらいたいですね。本当は伝えなきゃいけない人がたくさんいて、知財の裾野は実に広い

松浦「特に青少年層、大学生ぐらいの方々に、そういったアプローチから、創造の裏には知財があると理解していただけるようになれば、すごくいいですよね」

――最後にメッセージを

松浦「知財と聞いても馴染みのない方も多いと思いますが、ビジネスをされている方であれば、経営資源としての知財という点から、もう今の世の中では避けては通れない話題です。

 最近では『IPランドスケープ』という言葉が流行っていますが、経営・事業情報に知財情報を取り込んだ分析を行なうなど、そういった動きも必須になってきています。特許庁では、広報誌などを通じて、ビジネスに役立つ知財情報をこれからも発信していきたいと思っています。

 一般の方も、身近な商品に実はこんな知財が仕込まれていた、しかもその知財によって世の中が良くなっているということを、折に触れて感じていただけたら嬉しいですね。そのためのきっかけを、いろいろな切り口から提供していきたいと考えていますので、ぜひご期待下さい」

 知的財産権や特許、意匠といった言葉は、ニュースなどでよく耳にするものの、その意味や大切さを知らない人も少なくないのが実情だ。でも企業や個人事業家、これから起業を考えている人や学生から、未来の日本を背負う発明家を育てているかもしれない親御さんまで、みんなが知っておいて損はなし。

 今回の取材でもお分かりのように、特許庁の広報室は、知財についてもっと大勢に広めるために、初心者からヘビーユーザー、大人から子どもまで、さまざまなターゲットに向けてコンテンツ発信を行なっている。なお、Twitter、YouTubeだけでなく、広報誌もネットで公開されているので、ぜひ一度ご覧あれ。

佐藤純也(さとう・じゅんや)●岩手県盛岡市出身。2017年、特許庁へ商標審査官採用として入庁。2021年、商標審査室から総務課広報室へ異動。最近の楽しみは都内のラーメン店・サウナ施設を巡ること。また、中学生の修学旅行の際に、月島で食べたもんじゃの味が忘れられず、社会人になると同時に都内に引っ越してからは、月島に足繁く通う。大好物は明太チーズもんじゃ。

松浦安紀子(まつうら・あきこ)●群馬県出身。2003年特許庁入庁。特許審査官・審判官として医薬品やバイオ技術を担当。調整課、スイス・チューリッヒ工科大学、INPIT、審判課などを経て現職に至る。某人気料理家YouTuberのレシピで料理を作って、ワインを開けるのが週末の何よりの楽しみ。お気に入りはネギ納豆アヒージョ。

小髙絢子(こだか・あやこ)●神奈川県出身。2013年、特許庁へ事務系職員採用として入庁。2020年、総務課広報室へ異動。高校から吹奏楽でオーボエを始め、ブランクはありつつ現在まで続けている。最近のほかの楽しみは、無心で水引細工を作ること。大好物は柑橘類。

中野裕之(なかの・ひろゆき)●茨城県つくば市出身。2008年特許庁入庁。機械系の特許審査の傍ら、審査調査室、内閣官房、英国インペリアル・カレッジ・ロンドン客員研究員、調整課審査企画室を経て現職。週末は、息子とサンドボックス系ゲームにて建築に挑戦している。

聞き手=玉置泰紀(たまき・やすのり)●1961年生まれ、大阪府出身。元ウォーカー総編集長、現KADOKAWA・2021年室エグゼクティブプロデューサー担当部長。ほか日本型IRビジネスリポート編集委員など。座右の銘は「さよならだけが人生だ」。近況は「アニメの『平家物語』と大河ドラマの『鎌倉殿の13人』を同時に見ていた(「平家物語』は終わったが)。同じ歴史を平家と源氏から眺める経験は初めてで実に刺激的だ。平家物語の原文と鎌倉幕府の正史、吾妻鏡まで読み始めた。ベクトルはまったく違うが、これもまた際立った知的財産で人を動かす力に満ちている。そんなことを考えるこの頃です」

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