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通常の花粉より2.25倍空間に滞留、呼吸で取り込まれやすい

ナノサイズで空間に長く滞留する「粉砕花粉」とは?

2022年03月16日 17時00分更新

粉砕花粉は、砕けて粉々になった花粉だ

春、温暖な気候は嬉しいが花粉の季節でもある

 春になり、穏やかな気候の日が増えた。暖かく過ごしやすいのは嬉しいが、花粉症の人にとっては、毎年悩ましい季節でもある。

 パナソニックでは、スギ花粉をサンプルとして、花粉の実態を把握するための実験を行なった。その結果、人がスギ花粉を踏んだり、スギ花粉の上を歩いたりすることで、花粉の外皮が粉砕され、粉々になった「粉砕花粉」になることを可視化できたという。

3分以上空間を漂う粉砕花粉

 粉砕花粉とは聞き慣れない言葉だ。一体どのような花粉なのだろう。パナソニックが粉砕花粉を顕微鏡で観察したところ、通常の花粉の大きさがおよそ30マイクロメートルほどなのに対し、粉々になった粉砕花粉は、ナノメートルレベルまで小さくなっていることがわかった。

パナソニックによる実験の模様。人が歩くだけで、これほどまでに舞ってしまう

 質量が低いために、人が歩いたり動いたりすることで、床から空間上に舞い上がりやすく、一度舞い上がると、3分以上も空間に漂い続けるのだという。通常の花粉は1分20秒ほどで舞い落ちていくというから、およそ2.25倍以上も、空間に滞留していることになる。

ナノメートルレベルの粉砕花粉は、空間に滞留する時間が通常の花粉より長い。その分、呼吸器を通じて体内に取り込まれやすくなる

 同社が環境化学や花粉含有物質を専門とする埼玉大学大学院理工学研の王 青躍氏に取材を行なったところ、「破裂した花粉の外皮や内容物がマイクロレベルやナノレベルで粒子化すると、舞い上がりやすくなるだけでなく、PM2.5などの有害化学物質と結びつきやすくなり、反応性の強い物質に修飾される」とのコメントが得られたという。

恐怖の花粉シーズン、その対策に必要なことは

 花粉症の人にとって、この季節は本当に苦しい。筆者も重度の花粉症に苦しめられている1人で、この季節になると毎年、朝はくしゃみで目覚め、日中は目や喉の痒み、しつこい鼻水に悩まされる。目や鼻を取り外して水洗いしたいとさえ思うが、そうもいかない。花粉は生態系の維持には不可欠で、消し去ることもできない。“いかに軽減するか”という視点でケアをするしかない。

 王 青躍氏は、「外出先から帰った時には花粉を払い、可能ならお風呂に入り、洗顔・洗眼・洗鼻する、そして服を着替えるなどして、室内に花粉を持ち込まないようにしてください。掃除を行なう際、掃除機をかける前に、床を濡れたクロスで拭いた後にから拭きをして、舞い散らないようにします」とコメントする一方で、「それでも、空気中に浮遊する目に見えないレベルの花粉を取り除き切ることは難しい」と話す。

 どれだけ気をつけても、花粉が室内に入り込むことを完全に防ぐのが難しい。なら、どうすればいいのか。王 青躍氏は、高性能な空気清浄機の使用が有効で、さらに風があまり立たない場所に設置することで効果を最大化できると話す。

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