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世界を見逃さない眼を獲得したアクセルスペース社の衛星コンステレーション

AxelGlobeは安全・安心そしてあらゆる産業を支えるインフラに成長した

2022年02月16日 07時00分更新

活用が進むAxelGlobeのユースケース7例

 AxelGlobe事業の現況説明に続いて、国内外での利用事例の紹介がなされた。海外の事例として最初に紹介されたのはオーストラリアの尿業テック系のスタートアップData Farming社で、世界中の農家に衛星画像を活用した作物の生育管理サービスを提供している。

 「以前はESA/EUの衛星から分解能10m超の衛星画像を利用していたが、米や綿、サトウキビのような成長の早い作物に対してはさらに高解像度の画像データが必要だった。2021年11月末から12月にかけて合計約100万ヘクタールに及ぶ地域の撮影を行った。その中から約13万ヘクタールのデータをさらに加工して顧客に提供している。今後もアクセルスペースとのパートナーシップを強化し、より多くの顧客にサービスを提供していきたいと思っている。」(DataFarming Managing Director & CEO, Time Neale氏)

 ロシアのExactFarming社も同様にAxelGlobeの衛星画像を農業におけるリスク管理や意思決定の基礎情報として活用するサービスを提供している。既に8500もの農家が同社のサービスを利用しており、農地を合計すると860万ヘクタールに達するとのことだ。また、AxelGlobeの衛星画像にNDVI解析を行って、将来的に安定した収穫が得られる土地の発見にも活用する農地生産インデックス・マップサービスの開発も進めている。

 フランスのHEAD Aerospace社は農業以外にも広範な分野でのリモートセンシング画像提供サービスを行っている。

 「わが社は高分解能及び中分解能のリモートセンシング画像をヨーロッパ、アフリカ、中東、アジア太平洋、北アメリカ、ラテンアメリカ、ロシア周辺地域など世界中のパートナーに提供している。地上分解能2.5mでレッドエッジセンサーを搭載したGRUS衛星は、私たちの保有する45基の衛星ポートフォリオを上手く保管してくれると感じている。」(HEAD Aerospace Managing Director, HEAD Aerospace Group, Kammy Brun)

 海外事例の4つ目はザンビアで資源管理及び投資顧問サービスを提供しているLloyds Financial社で、アクセルスペースと共同でザンビアやアフリカ諸国における道路などのインフラ監視および金融セクターのソリューション開発に取り組んでいる。

 「ザンビアの発展及び課題解決のため、データというものがこれほど必要とされたことはありません。私たちは公共・民間の双方に対して実用的な空間・時間分解能を持った衛星データおよびその解析能力を提供することを目的にLloydsデータスペシャルセンターを設立しており、地理的BI等の様々な用途に利用可能なデータへのアクセス機能を実現しました。アクセルスペースの持つ衛星技術・リモートセンシング技術は、当社がザンビア及びアフリカ全体を支えるための強力な基盤となるでしょう。」(Lloyds Financials CEO Lloyds Chingambo, 他3名)

 国内事例の1つ目は文部科学省設立の国立研究開発法人 防災科学研究所で進められている災害発生時の被害把握に対する衛星データの活用で、すでに2021年10月の阿蘇山の噴火ではGRUSのデータに基づいて被害状況をサイト上に公開している。

 防災科学研究所は自然災害に対する予測力、予防力、対応力、回復力の総合的な向上を図る研究機関だが、特に対応力については情報を上手く活用して自然災害に対峙し、被害の軽減から素早い回復・復興へと結びつけるところが重要になってくる。

 「例えば令和元年の台風15号では災害発生直後の第1報時点ではほとんど状況把握ができておらず、1か月くらい経って情報が出揃ってきた。いち早く被害の全容を把握する必要があり、現状の情報だけでは不十分。やはり衛星が重要になると考えている。」(国立研究開発法人 防災科学研究所 理事長補佐 防災情報研究部門 副部門長 田口 仁氏)

国立研究開発法人 防災科学研究所 理事長補佐 防災情報研究部門 副部門長 田口 仁氏

 災害発生直後はSNSなどで断片的に被害状況の発信がなされるが、それらは広域かつ面的な情報ではなく、具体的なオペレーションを起動するには衛星を使った被害全体像の把握が重要になる。特に航空写真やドローンなどを活用できるようになる災害発生後24時間経過までの間は、衛星からのデータが頼りとなる。

  南海トラフのような巨大地震では被害が極めて広域に及ぶことが想定され、被害状況の早期把握のために、複数の国・機関・企業の衛星を束ねて衛星データの即時性・広域性を高めるシステム「ワンストップシステム」の研究開発を内閣府の主導で進めている。現在5基運用のAxelGlobeに対しても、さらに多くの衛星を打ち上げて時間的・空間的カバレッジを拡大していくことが期待されている。

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