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「IoTスタートアップ成長のカギとは? 上場を果たしたセーフィー佐渡島代表公開インタビュー」レポート

創って作って造って売り、オセロの四隅×金融を狙って成長し続けるセーフィーの戦略

2021年12月24日 08時00分更新

スケールするには「創って作って造って売る」必要がある

 佐渡島氏はよく社内で「創って作って造って売る」と言っているという。1つ目の「創る」というのはアジャイルで早くプロダクトアウトしていくこと。最初のプロダクトは軽く創って、500台くらいを顧客に渡してしまう。ニーズや課題を把握したらそれは全部回収して、何回もハードウェアを作り直すという。

 2番目の「作る」は、顧客を巻き込むこと。顧客と一緒になって、プロダクトが本当に必要なのか、お金を払っていただけるのかを検証する。例えば、某大手ファストファッションメーカーもセーフィー製品を長く利用しているが、簡単に使い始めたいというニーズがあったので、Wi-FiのSSIDをセーフィーの出荷センターであらかじめセットしたり、電池パックも一緒に送るようになった。「これもUXだと思います。ちょっとしたUXにこだわるのがとても大事です」と佐渡島氏。

 3番目の「造る」は商流やキッティング、工事のこと。そうして、ビジネス的な三方よしを作ってはじめて、スケールするビジネスプロセスになるという。

 「最初の創って作って造って売ることがキモで、そこからお客さまがずっと継続して使っていただくか、という仕掛けが始まります。ソフトウェアのSaaSモデルと比べると、ハードウェアのモデルの方が2~3ステップ多く、時間と労力がかかってしまうのが大きな違いです」(佐渡島氏)

大手企業との取り組みには「オセロの四隅×金融」戦略が有効

モデレーターを担当したASCII STARTUPの北島幹雄

 佐渡島氏は顧客がカメラを導入したい、というときにどこにお願いするかを考えたという。まずは、防犯カメラだから警備会社にお願いするはず。2つ目がカメラなのだからデバイスメーカーにお願いする。3つ目が、インターネットに繋がっている企業に聞いてみる。4つ目が、ビルの設備でメーカーが決まっているから。

 この4つをオセロの四隅に見立てて、金融とかけ算する戦略が有効だという。特に4つ目の設備は現在攻略中とのこと。三井不動産やオリックスグループに出資してもらい、デベロッパーや顧客として、使いたいというところまで持って行くそうだ。

 「ゼネコンさんとの取り組みをずっとやっていると、施工管理とか現場の方だけでなく、設計の方も当然見るので、会社をよりよく知ってもらえます。信頼が得られれば、スマートビルディングのところにも行けるようになります」(佐渡島氏)

 そしてセーフィーでは、それら四隅の会社に資本を渡し、出向者の受け入れを積極的に行っている。その際は、まず一緒の部署を創って本気でやりましょう、と持ちかけるそうだ。スタートアップと大手では、企業文化も違えば、コミュニケーションのプロトコルも合わない。そこで、その会社の中のファーストペンギンに出向してもらい、時間をかけてプロトコルを合わせるようにしているという。

 資金面だけで言えば、ベンチャーキャピタルや金融機関など選択肢はいくらでもあるが、あくまでセーフィーは仲間作りへ徹底的に注力している。上場したことで上述した付き合いもどんどんと深くなっているという。

 連携する企業を見ると、以前からオープンイノベーションに積極的だったところが多く見える。しかし、関西電力のように、セーフィーに出資したのが初めてだという企業もある。

 「将来の自動運転時代(のインフラ)には電気・ガス・水道、そしてデータという世界が来るであろうと考えた時に、電力会社さんは我々にとって魅力的なアセットをたくさん持っていらっしゃいます。とはいえ、その世界が実現するのはだいぶ先なので、まずは出向者を送っていただき、関係性を築いて、アフター5Gくらいから、やりましょう、と長い目線でつき合っていただけるのも事業会社さんの特徴だと思います」(佐渡島氏)

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