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「IoTスタートアップ成長のカギとは? 上場を果たしたセーフィー佐渡島代表公開インタビュー」レポート

創って作って造って売り、オセロの四隅×金融を狙って成長し続けるセーフィーの戦略

2021年12月24日 08時00分更新

 2021年11月19日、「IoT H/W BIZ DAY 2021 by ASCII STARTUP」が開催された。今回で9回目となるIoT、ハードウェア事業者に向けたビジネスカンファレンスイベントで、今年はコロナ禍と言うことでオンライン配信となった。

 多数開催されたセッションから「IoTスタートアップ成長のカギとは? 上場を果たしたセーフィー佐渡島代表公開インタビュー」の様子をレポートする。聞き手はASCII STARTUPの北島幹雄が務めた。

 セーフィーは2014年に創業したスタートアップで、クラウド録画型映像プラットフォーム「Safie(セーフィー)」を提供している。2021年9月29日にIPOを行っており、現在の社員数は約240名。課金が発生しているカメラは約13.7万台で、クラウドモニタリング・録画サービスのシェアは47.5%を占め、業界シェアはトップとなっている。

セーフィー

 「カメラの中にファームウェアを仕込んでいまして、クラウドドリブンなOSとしてメーカーさんに無料でお配りしています。いろんなメーカーさんが当社のクラウドシステムに参入して、物売りから脱却できるような仕掛けを作っています」と代表取締役社長CEO 佐渡島隆平氏。

セーフィー 代表取締役社長CEO 佐渡島隆平氏

 一般的な据え置き型の監視カメラや防犯カメラが多いのだが、「Safie Pocket(セーフィー ポケット)」や「Safie Go(セーフィー ゴー)」のように工事現場や工場などで活躍するカメラも出している。

 コロナ禍でテレワークが増え、機動的なオフィス運営をする企業が増えたが、そこでも「Safie」が活躍しているそうだ。オフィスに行ったときだけ交通費を支払うようになると精算業務がとても手間がかかるが、ここを出社時の顔認証で勝手に精算されるようにした。他にも、「Safie Visitors(セーフィー ビジターズ)」は来店者の属性や来店回数をカウントするような店舗用マーケティングツールなどもラインナップしている。

 「当社は、”映像から未来をつくる”、がビジョンでして、家から街までをデータ化しながら、インフラとし、それをみんなの意思決定に役立つプラットフォームにしていこうとしています」(佐渡島氏)

 このビジョン・方針は創業したときからぶれていない。2015年に週刊アスキーの「大江戸スタートアップ」で取材した時と話している根底が変わっていないのだ。ちなみに、記事の画像が写されたのだが、なんと佐渡島氏のレザージャケットの姿も今と同じで、笑いが起きた。

 「スタートアップってお金がないんです。ハードウェアを全部自分たちで作っていると、キリがなくなってしまいますし、お金がいくらあってもたりません。逆に我々がハードウェアハックをしていくというところで、組み込み部分を作って、ハードウェア大手の会社を仲間に入れていくと、いう形で成長してきました。そこが我々の強みになっています」(佐渡島氏)

BtoCでの起業から気づきを得てBtoBにピボットした

 ソニー木原研究所が源流にある同社。ソニーグループということで、まずはコンシューマビジネスからスタートした。逆に言えば、それしかわからず、最初はクラウドファンディングサイト「Makuake」で、高画質で簡単に使える防犯カメラとして打ち出した。

 そもそもセーフィーを立ち上げたきっかけは、佐渡島氏が家を建てたことだった。小さなカメラを壁に付けておき、勝手にアップデートして勝手に賢くなってくれれば面白いし、夢があるよね、と会社を作った。しかし、ユーザーからはペットを見たいとか、ベビーモニタリングをしたいと要望をもらうが、全部が「あったらいいね」という意見だけで、ビジネスにはならなかった。実際、クラウドファンディングの購入者を見てみると、半数以上が店舗経営をしている人だったのだ。

 「あったらいいね、ではなく、ちゃんとお金を払ってでも、その課題を解決したい人たちのことを考えると、やっぱりBtoBだな、と思い始めました。そうなると、カメラを屋外で使いたいとか、厨房で使いたいとか、いろんなニーズが出てくるので、いろんなハードウェアのメーカーさんに、ファームウェアをお配りして、ラインナップを整えることで、皆さんの要望に応えることにしました」(佐渡島氏)

 製品作りの際にまずこだわったのはセキュリティーだった。カメラ映像を第三者に勝手にのぞかれてしまっては気持ちが悪い。とはいえ、従来の一般的なネットワークカメラはカメラ自体がサーバーになるプロダクトなので、インターネットにつないでしまうとハックされやすくなってしまう。

 次いで高画質、そして圧倒的な低価格を実現した。それまで、大手企業が手がけていたクラウド監視サービスは静止画が主流だったそうだが、セーフィーはHD動画にして、値段も5分の1や6分の1のレベルで実現できた。原価を考えてモノを作るのではなく、お客さんが欲しい値段にぴったり合わせようというのが着眼点だったという。

 「あとはAmazonに置いておけば売れるんでしょう、というノリでやっていたのですが、創業後数年ビジネス進めると、自分たちが営業していたら、一生世の中に根付かないことがわかりました」(佐渡島氏)

 BtoBのプロダクトは、例えば、建物に入れるなら基本30年保つものでなければ選ばれない。スタートアップやIoTといっても、新興企業が1~2年で作ったものでしょう、ととらえられてしまう。とはいえ、「それも事実」と佐渡島氏。自分たちで小さい規模の企画をするよりも、グローバルのカメラメーカーのハードをなんでも使えますよ、としたほうが広がりやすい。

 「社内でよく話すのですが、『おーいお茶』はめちゃめちゃ売れていると思いますが、日本で一番美味しいお茶かどうかというのはまた別の議論です。目の前に並んでるから、みんなが買いやすいというのが重要なポイントです。どうしてもスタートアップはクオリティーが高いことがすべての世界だと勘違いしてしまうところがあります。売り手よし買い手よし世間よしの三方よしが整わない限り、絶対広がらないというのが大変なところです」(佐渡島氏)

 セーフィーでは、プロダクトマーケットフィット(PMF)の考え方も変わってくる。ウェブでスマホアプリやSaaSを作る場合はソフトウェアで完結するので、顧客から課題をヒアリングし、どんどんアジャイルで解決していけばいい。しかし、ハードウェアは一回企画して出してしまうと、少なくとも1~2年はフィックスされてしまう。顧客が設置してほしいと言えば、工事や電源の話なども絡んでくる。

 「ハードウェアとソフトウェアのビジネスを組み合わせて、アプリケーションをソリューション化していくと、少なくとも3年、4年かかる、というのが実感です」(佐渡島氏)

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