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Tiger Lake-H世代のクリエイティブ/ゲーミングモデルはスゴイ

厚み16mm切りでデスクトップ級の性能を実現!Core i9-11980HK搭載ノートPCレビュー

2021年09月08日 11時00分更新

薄型デザインだけにCPU温度は高め

 最後にゲーム(Cyberpunk 2077)や動画エンコード(Media Encoder 2021)実行中のCPUやGPUの温度やクロックはどの程度なのかも見てみよう。薄型ノートPCなので冷却性能に制限があるのは明らかだが、どの程度まで冷え、どの程度までクロックが上がるのかを調べてみる。温度やクロックの追跡にはHWiNFO64 Proを使用した。なお、検証時の室温は約28度だった。

ゲーム及びエンコード時のCPU温度(Tcase)およびGPU温度

 CPU温度のピークはどちらの利用ケースでも97度が最大値。エンコード時のみ94度前後で安定する時期があったが2分程度しか持続せず、最終的には80〜82度のあたりを変動する感じになった。一方で、GPUはゲーム中で78度付近、エンコード中は75度付近で安定。CPU/GPUともに温度は高めだがしっかり温度制御が効いているといった感じだ。

ゲームおよびエンコード時のCPU/GPUクロック

 CPUクロックを2つ記載しているが、1つはタスクマネージャーで観測できる値に近い各コアの平均値だが、も う1つは各コアの占有率を加味した平均実効クロック(グラフでは「Effective」と表記)となる。例えば、ゲーム時のCPUクロック(オレンジ色、「ゲーム/最高」と表記)は最初の3分程度では3.3GHzで安定し、その後は2.8GHzあたりになるが、平均実効クロック(青色、「ゲーム/Effective」と表記)を見ると1.8〜1.6GHz程度。つまり、各コアの平均的な占有率は60%をやや下回ることを示している。

 一方、動画エンコード時はほぼCPU占有率が100%に近いので、各コアの平均値(水色、「エンコード/最高」と表記)と占有率を加味した平均実効クロック(黄色、「エンコード/Effective」と表記)は途中まで一致している。しかし、13分あたりで処理が終わると前者(見かけのクロック)は4.8GHzあたりまで上昇するかわりにCPUがほぼアイドル状態になるため、後者(平均実効クロック)は200MHzあたりを示す。Core i9-11980HKの全コアブースト時は最大4.8GHzまで上昇するというが、エンコード中は大半の時間が2.1GHz程度にとどまるということだ。

 なお、GPUクロックはCPUよりもさらに下のクロックで動作しているが、ずっと高負荷が続くゲーム中よりも間欠的に負荷がかかるエンコード時のほうが高くなる点も興味深い。

 ゲームやエンコード中のCPUのPackage PowerやPL1の値の変動からも、CPUクロックが抑えめに調整されていることがわかる。次のグラフは上のグラフ計測と同じタイミングでCPU Package PowerやPL1の推移を追跡したものだ。

ゲームおよびエンコード中のCPU Package PowerやPL1の推移

 ゲームでもエンコードでもPL1が65W(検証機のデフォルト設定)にとどまっていられる時間は約45〜90秒と短く、最初からCPUが全力で回るエンコード時のほうがより早い段階でPL1が絞られることを示している。最大5GHz動作のCPUでも、高負荷をかければ最終的にPL1は30Wまで絞られるため、クロックも落ちるというわけだ。CPU Package Powerも瞬間的に76Wまで上がる(PL2は109Wまで許容している)が、ゲームが始まると37W前後に落ち、3分過ぎあたりで30Wに絞られる。

 薄型ノートPCのため、デスクトップPCのような長時間高クロックを維持するような使い方は設計的に難しい。とはいえ、CPUのクロックをブーストして一気呵成に仕上げるような短時間作業や、高負荷でも間欠的に負荷のかかる作業であればデスクトップPCと遜色のない性能が期待できるだろう。

まとめ:Tiger Lake-Hなら重さ2.2kg、厚さ16mm切りのノートPCでもデスクトップ級の性能を実現できる

 今回のTiger Lake-H搭載リファレンスノートPCはMSI製の市販モデルプラスαのスペックであったが、CPUパワーを盛りすぎて逆にハンデになっている印象すら受けた。しかし、Lightroom Classicの結果が示す通り、マイルドな負荷の作業ならデスクトップPCに近いスピード処理が期待できる。

 ゲームのパフォーマンスはRainbow Six Siegeのように負荷が軽いものを除けばパッとしない印象だが、これはノートPC向けのGeForce RTX 3060の性能が大きく関係しているので致し方ないが、ノートPCとしては十分快適な部類だ。また、厚み16mm弱のボディーにこれ以上のスペックのGPUを入れても冷却が難しいことは容易に想像がつくわけで、むしろ今回のリファレンス機はバランスがとれているとも言えるだろう。

 すでに様々なメーカーがTiger Lake-Hを搭載したノートPCが多くのジャンル(ゲーム/クリエイティブ/ビジネスなど)向けに展開している。この検証がTiger Lake-H搭載ノートPCの特性をつかむヒントになれば幸いだ。

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