ゲーマー向けの新たなフラッグシップ
「GeForce RTX 3080 Ti Founders Edition」の実力を検証する
NVIDIAはCOMPUTEX 2021のキーノートスピーチにおいて、Ampere世代のゲーマー向けフラッグシップGPU「GeForce RTX 3080 Ti」および準ハイエンド「GeForce RTX 3070 Ti」を発表した。発売は6月3日22時にワールドワイドで解禁、国内での発売は実質的に6月4日の営業時間以降になる見込みだ。
国内販売価格についてはRTX 3080 Tiが17万5800円より、RTX 3070 Tiが8万9980円よりとNVIDIAが予想(FOB価格などから弾き出したもの)しているが、Tiがつかない下位モデルのGeForce RTX 3080で現在の実売価格が23万円前後、GeForce RTX 3070で16万円前後ということを考えれば、NVIDIAの予想価格そのままで出るとは考えにくい。この値段で買えたとしても、初期出荷分が捌けたらあとは値が上がってしまう可能性は十分にある。
今回筆者は、幸運にもRTX 3080 TiのFE版(Founders Edition)をテストする機会に恵まれ、6月2日22時をもってRTX 3080 Tiのレビューが解禁となった(RTX 3070 Tiは後日レビュー解禁)。RTX 3080 TiはCEOジェンスン・ファン氏の執念(狂気)の塊ともいえるGeForce RTX 3090にどこまで近づけるのか? RTX 3080とはどの程度違うのか? 極めて限られた時間しか検証時間が得られなかったためごく簡単ではあるが、ベンチマークを通じて検証していきたい。
SLI削除とハッシュレート制限を施した
“RTX 3090 SE”と言うべき存在
ではRTX 3080 Tiのスペックを見てみよう。基本的に今回投入されたGPUはこれまでのAmpereアーキテクチャーと同じものが使われており、技術的な新要素はない。即ちFP32専用ラインとINT32/FP32兼用ラインを備えたCUDAコア、第2世代のRTコアや第3世代Tensorコア、さらにRTコアとTensorコアの非同期処理といったAmpereアーキテクチャーの要素は全て搭載されている(この辺に興味が湧いたら「GeForce RTX 30-Series Tech SessionsでわかったAmpereが超進化した理由」をご一読いただくとよいだろう)。RTX 3060で初搭載されたResizable BARについても、RTX 3080 TiやRTX 3070 Tiは最初から対応済みのvBIOSが入っている。
RTX 3080 Tiのことを「フラッグシップ」と評するには違和感を憶えるかもしれない。8KゲーミングやコンテンツクリエーションのためのRTX 3090がAmpere世代の「真の」フラッグシップである点に間違いはない。ただ8Kディスプレーはまだ高価であり、24GBものVRAMは4Kゲーミングにはあまりにも無駄が多すぎる(Modが~とかVRChatが~と言う人は黙ってRTX 3090を選ぶべきだが)。
その点、RTX 3080 TiはRTX 3090からSM2基分、パーセンテージにして3%に満たない程度のダウンサイジングで、VRAM搭載量を抑えてコストを抑えた製品になっている。8Kは射程圏外だが、4K+最高画質あるいはWQHD+ハイフレームレートでプレイしたいゲーマーのためのフラッグシップという表現は適切だ。
※掲載当初、GeForce RTX 3070 Tiの一部スペックを誤って記載していました。訂正してお詫びいたします。
RTX 3080 Tiのメモリーバスが384bitである事は、RTX 3080 TiはRTX 3090と同じGA102コアがベースになっていることを示している。しかしRTX 3080 Tiと3090の間には2つ大きな仕様変更が入っている。
まずはNVLinkサポートの排除だ。今回手にしたRTX 3080 Ti FEの他に、サードパーティー製のRTX 3080 Ti搭載カードも確認したが、いずれのカードにもNVLinkブリッジコネクターは搭載されていない。
NVIDIAによれば、「NVLinkはRTX 3080 Ti搭載カードでは利用できなくなっている。NVLinkの目的は世界最高のゲーミングPCを作るためにあるため、世界最速のビデオカード(RTX 3090)のみをNVLink対応にしている」とのことだ。すでにNVIDIAはRTX 30シリーズのSLIは“ゲーム側でSLI対応が作り込まれているものだけ対応”というスタンスに変えている(NVIDIAの告知はこちら)。それを考えると、NVLink非対応にしてもデメリットと感じるユーザーは少ないだろう。
もう1つ重要なのは、RTX 3080 TiにもRTX 3060と同様の“ハッシュレートリミッター”、つまり仮想通貨マイニング(Ethereum)の処理を検知したら処理効率を下げる機能が実装されている点だ。既にRTX 3080/3070/3060 TiにはLite Hash Rate、所謂“LHR”版のモデルが出ているが、NVIDIA的にはRTX 3080 TiはLHR版ではなく、そもそもハッシュレートリミッターを搭載したGPUである、という表現が適切となる。
これはRTX 3080 Tiのシリコン自体がかなり前、恐らく昨年の段階から存在していたことを示唆している(RTX 3090になれなかった個体が3080 Tiになったと考えれば自明だが)。
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