クリエイティブ系アプリでは
VRAM 12GBにメリットはある?
RTX 3060のVRAMは12GBであり、これは上位のRTX 3060 Tiどころか、RTX 3080よりも多い。最近はVRAMを“あればあるだけ確保する”スタイルのゲームも増えてきたので、VRAMリッチなRTX 3060はゲームに向いているといえるが、クリエイティブ系用途には効くのだろうか?
そこで簡単ではあるが、「DaVinci Resolve Studio」「Premiere Pro 2021」そして「Redshift Demo」の3つを利用して、RTX 3060のパフォーマンスをチェックしてみた。この検証ではドライバーはやや古いStudio Driver 461.92を利用している。
まず「DaVinci Resolve Studio」だが、フルHDの動画をSuper Scale処理で4K化した“SuperScale”と、BlackMagic RAW形式の4K動画に対し、Optical Flow+SpeedWarpでスローモーション化する“Retime”の2本のクリップを用意。それぞれ4KのH.264 MP4形式(50Mbps)に書き出した時の時間を計測した。
グラフ中“Native”とあるのは“Nativeエンコーダー”を、“GPU”とあるのは文字通りGPUを使うやり方である。
このテストでは、エンコードはもとより再生中でも強烈にGPU(CUDAコア)を使用し、VRAM使用量もかなり多い。まず注目したいのは、どちらのクリップでもTuring勢(RTX 2060 SUPER FEとRTX 2060 FE)は特に処理時間が遅い点だ。また、RTX 2060 FEはRetime+GPUエンコーダーの組み合わせではエラーでエンコードができない。
RTX 3060 Ti FEは、SuperScaleではRTX 3060よりも短時間で処理を終えることができるものの、RetimeではRTX 3060より微妙に遅くなる。RTX 2060のエラーと合わせて考えると、VRAM消費量が原因になっていると考えられる。8GBでは微妙に足らないが、12GBなら十分余裕をもって処理できる、というわけだ。
2枚のRTX 3060搭載カードの性能差は最大でもわずか1秒と小さく、ゲームにおける性能差はこのテストでは発揮できていない。
続いては「Premiere Pro 2021」だが、タイムライン上に構成した再生時間約3分の4Kクリップを、最初から最後までレンダリングした時間(※エンコードではない!)を比較する。レンダリング終了時にコンソールに表示される時間を利用した。
この検証ではタイムライン上に3本のフルHD動画を配置し、さらに調整レイヤーなどで様々な補正を施している。これもVRAM消費量が7GB弱にまで達したが、VRAM 6GBのRTX 2060 FEであっても普通に完走した。ただ、RTX 2060 FEの処理時間は突出して遅いため、VRAM搭載量の少なさやメモリーバス幅の狭さ等が影響していることが示唆される。
ただ、VRAM 12GBのRTX 3060はというと、今回試したASUS/ZOTAC製カードはどちらも“まあまあ”の結果しか出しておらず、VRAM 8GBと少ないRTX 2060 SUPER FEに逆転されている。どうやらGPUのメモリーバス幅がある程度太くないとレンダリング時間は短縮できないようだ。
最後に「Redshift Demo」でRTコアを利用したレンダリング速度を比べてみよう。デフォルトでインストールされる「RunBenchmark.bat」を実行し、出力画像に焼き込まれるレンダリング時間で比較する。
ここでもRTX 2060 FEが最も遅いが、RTX 2060 SUPERがRTX 3060を下すという展開は見られなかった。このテストではVRAMを搭載量の9割方消費するが、VRAM搭載量が鍵であるとは言いがたい。
RTX 3060よりもVRAMの少ないRTX 3060 Ti FEが最短時間で処理を終えているので、単純にRTコアの性能(Ampere世代は第2世代RTコアを搭載している)とRTコア数が最も重要で、VRAMは補助的なものであると考えられる。
わずか3例ではあるが、ここまでの検証で分かったことは、VRAM 12GBだからといってクリエイティブ系アプリに極端に強くなるわけではない、ということだ。
今回は、「6GBだと確実にエラーが出るが8GBではギリギリ動いてしまう」素材であったため、VRAM 8GBのRTX 3060 Ti FEがRTX 3060をほとんどの場合において上回るという結果が出た。だがもっと強烈に重い素材や作品であれば、12GBのVRAMも活きてくる可能性がある。
この結果から導き出される結論は、素材や作品が適度に軽ければ(とはいえ今回は4K動画で試しているのだが……)RTX 3060よりもCUDAコアの多い3060 Tiや3070の方が快適に処理できることもある。VRAM 12GBだからといってRTX 3060に執着する必要はないのだ。
まとめ:ドライバー熟成によってより魅力がアップ
以上でASUS製「ROG-STRIX-RTX 3060-O12G-GAMING」を交えたRTX 3060の追加検証は終了だ。ゲームでは常にRTX 3060 Tiを下回るものの、大抵のゲームにおいて良好なフレームレートを叩き出しており、高リフレッシュレートディスプレーのスペック限界を攻めるような使い方でなければ、最新ゲームも快適に楽しめることがわかったはずだ。
12GBのVRAMでなければダメだったという局面はなかったが、負荷の高いAAA級のゲームタイトルを動かしたい人にとっては、検討に値すべきGPUに仕上がったといえるだろう。ZOTAC製の「ZOTAC Gaming GeForce RTX 3060 Twin Edge OC」も良くまとまったカードではあるが、やはり3連ファン搭載クーラーと強OC設定を武器にしたROG-STRIX-RTX 3060は使っていて面白い。
ZOTAC製とゲームで数fpsしか違わないという考え方もできるが、その数fpsを引き出すために投入されたメーカーの工夫や情熱が我々ユーザーを惹きつけるのだ。
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