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GRヤリスの最上位「GRヤリス RZ High Performance」は一般道を走れるレースカーだ!

2021年02月20日 12時00分更新

ハイパフォーマンスに偽りナシの走行性能

走行するGRヤリス RZ High Performance

 法定速度で街に繰り出すと、あまりの硬派に驚くこと間違いナシ。さすがWRカーのホモロゲーションモデルです! ボディーがとんでもなく高剛性な上に、RZ High Performanceは専用サスですので足は思いっきり引き締められ、街乗りがツライと感じるのは最初からわかっている話ですが、ここまでボディーが高剛性なのか……と良い意味であきれるほど。「硬すぎて乗れない」と文句を言うのは筋違いで、そういう方にはRZグレードが用意されています。

交差点を曲がるGRヤリスRZ High Performance

 感動するのは操作系の良さ。ステアリングフィールも遊びはほとんどなく、適度な重たさで◎。マニュアルのシフトも、スコッと小気味よく入ります。クラッチも適度に重く、半クラッチのポイントも分かりやすい。全体的に精密という言葉がピッタリで、どこかポルシェに似ていると言ったら言い過ぎでしょうか。

 そして文句のつけようがないのが走りの良さ。エンジンは下からトルクフルで、何速に入れても、アクセルを踏んだ瞬間、シートと背中が一体化したかの如く猛突進。さらに低くとどろく排気音が室内にこだまし、とてもBセグメントのコンパクトカーとは思えません。ステアを切れば、オンザレールの気持ちよさで、特別な技術がなくても速く旋回可能。見た目の印象と大きく異なるとんでもないスポーツカーで、知らない人が見たら「何このクルマ」と思うこと間違いないでしょう。

ステアリングホイールも設けられたクルーズコントロール系スイッチ類

 トヨタらしく運転支援系などの装備が充実。高速道路で自動運転レベル2相当のクルーズコントロールを使うことができます。MT車で車間監視とかどうなのかな? と思ったのですが、ギア固定でもキチンと速度が下がって、また上がるのは面白いところ。ですが一方で「GRヤリス RZ High Performanceに必要なの?」と思う機能も。その一つがレーントレーシングアシスト(車線のはみ出しを防ぐ)で、教えてくれるのはいいのですが、抑制機能がかなり強力で、強い意志をもってグイっと戻ろうとします。ステアリングホイール右側のボタンを長押しすれば解除できるのですが、再始動すると復帰するので、いちいち長押しして切るのが面倒だったりも。

GRヤリス RZ High Performanceのヘッドアップディスプレイ

ルームミラーとディスプレイオーディオの間が狭いのが気になった

 また試乗車にはメーカーパッケージオプションのナビ表示対応ヘッドアップディスプレイが取り付けられていたのですが、それにわずらわしさを覚えたことも。スポーツカーの前方視界は広く明瞭な方が望ましいと思います。視界ついでに言えば、ディスプレイオーディオがかなり上までせり出している上に、ルームミラーが低い位置まであるものですから、ナビやルームミラーは見やすいものの、顔を動かさずに斜め左方向を見た時に、視界は狭く感じる印象。ナビを見続けて運転するわけではないので、できれば、もう少し下げるか画面を小さくしてもいいかもと感じました。

サイドブレーキレバー近傍に設けられたiMTスイッチ

 運転面で気になったのは、こういった装備面だけ。トルクがとても太く、しかもかなり下から立ち上がりますので、街乗りは乗り心地の面を除けば、扱いやすくてラク。スペックや生い立ちから、MT初心者には手強いように思えるGRヤリス RZ High Performanceですが、シフトダウン時に自動的にブリッピングを行ないシフトショックを和らげるiMT機能がそなえられていますので安心です。快適に走らせることができるでしょう。

走行するGRヤリスRZ High Performance

 このクルマが活きるステージは、都心部の街中ではなく、ワインディングロードや峠道であることに疑いの余地ありません。本来は箱根や御殿場に行き、富士山をバックに写真をパチリしたかったのですが、ちょうど取材時期が外出自粛期間であったため地方遠征は延期。今回はC1内回りにステアを向けることにしました。

 今まで色々なクルマで首都高環状線(C1)内回りを走りましたが、短いストレートの加速はもちろん、コーナーの旋回スピードにおいても、国産車のどのクルマよりも速い! と言いたくなるほど。硬く感じた足は、しなやかさを伴いはじめ、段差は相応の衝撃はあるものの、収束が早くて不快ではありません。ホイールベースが短いものですから、逆にそれがC1にピタリとハマり、ジェットコースターの如く、右へ左へ上へ下へと意のままにC1を駆け抜けます。コーナーでブレーキを残さなければ、小難しい事を考えなくてもクルマは速く、意のままに曲がり、アクセルを踏めば怒涛の加速。GRヤリス RZ High Performance、本当に反則なクルマです。

 ですが怒涛の加速ゆえ、公道ではアクセルを踏む時間は短いのがむしろストレスになることも。すぐに前のクルマに追い付いてしまうからです。さらに悪いことに、思いどおりに走るものですから、自分の運転が上手くなったように思い上がるばかりか、周りのクルマが遅すぎると錯覚し始めてしまいます。ほかのハイパフォーマンスカーはボディーサイズが大きかったりするので、C1で頑張る気にならないのですが、GRヤリス RZ High Performanceは、ジャストサイズなうえに、容易に操れてしまうので、その印象がより強く受けてしまうのです。よってステアリングを握る際は、かなりの自制心が必要になりそうです。

 気になる燃費ですが、アクセルをあまり踏むことがなかったためか、街乗りとC1で、リッター8km程度を記録。ちなみにハイオク仕様車ですので、燃料費はある程度の覚悟が必要かも。

デモ走行するヤリスWRC (モータースポーツジャパン2019で撮影)

 私は1度だけヤリスWRCの助手席に座り同乗走行をしたのですが、折角ですので、世界を戦うWRカーであるヤリスWRCとGRヤリス RZ High Performanceの違いについても少しだけ触れておきたいと思います。自分を中心にクルマがクイックに曲がるという点において、ヤリスWRCとGRヤリス RZ High Performanceは近似しています。このクイックに旋回しないと、モンテカルロの山道を下ることはできないのでしょう。体験したヤリスWRCがグラベル仕様だったため、あちらの方がサスがロングストロークでかつ柔らかいため、乗り心地がよくロール量が多く比較にはならないのですが、コーナーリング時に、どのタイヤに荷重がどの位かかって……というフィーリングも似ていたように感じました。

【まとめ】サーキットに行って帰って来られる
普通だけど普通じゃないコンパクトスポーツ

WRCのエンブレムがサイドブレーキ近傍に設けられている

 サイドブレーキレバー近傍のWRCの文字に偽りはナシですし、このクルマの先にWRカーがあると断言できます。GRヤリス RZ High Performanceは6MT仕様のみですが、WRカー同様に右手パドルでシフトチェンジができるDCT仕様があれば、雰囲気満点間違いナシなのに……。ない物ねだりでトヨタさん、MTもイイですが、DCT仕様のGRヤリス RZ High Performance、出してもらえませんでしょうか?

走行するGRヤリス RZ High Performance

 1990年から2000年代にかけて、三菱のランサー・エボリューションやSUBARUのインプレッサ WRX STIといったクルマがWRCに出ていました。読者の中には、若い頃これら「世界で戦う日本車」に憧れたのでは? なにより金額が4桁ではなく3桁で、しかも500万円以下ですから頑張れば買える。この夢ってとても大事ですよね。ですが、いま自動車市場を見回しても、こういったクルマは探さないと見つかりません。その中でGRヤリス RZ High Performanceは、免許を持たない若者に夢を見させてくれるに違いない1台といえそうです。

 ちなみにトヨタレンタカーでは3月31日まで「GRヤリス乗って体験キャンペーン」を実施していますので(6時間1万450円)一度体験してみてはいかがでしょう。でも乗ったら最後、欲しくなってしまうカモ。ちなみに今回の試乗取材に立ち会った担当編集のスピーディー末岡は「ヤリスのベストバイだ!」と手放しで喝采、夜な夜な電卓を叩いているとかいないとか……。

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