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憧れのポルシェ 911 ターボを初体験! その素晴らしさにクルマ選びのゴールを見た

2021年01月09日 12時00分更新

 人間だれしも「憧れの存在」があると思います。私にとって子供の頃から抱く憧れの存在は「M型ライカ」と「ポルシェ 911」でした。というのも、ドイツ生まれのこの2ブランドは、多くの人が絶賛する一方、高額で手が出ないから。見かけたことはあっても触れたことは当然なく、子ども心に「オトナになったら手に入れて……」と夢みたものです。念願叶い手に入れた「ライカ M3」のことを今も鮮烈に覚えています。「これで私も凄い写真が撮れる」と喜び、生涯の友を得た気分になりました。

筆者が購入したライカM3。M3にはいくつかレパートリーがあるが、購入したのは2ストロークと呼ばれる初期型モデル。レンズはエルマー50mm F3.5を取り付けていた

 ですが実際に使ったところ、操作方法はもちろんのこと、シャッターの感触やファインダーの見え方、そしてでき上がった写真と、何ひとつ満足することができず。抱いていた夢は見事に崩壊。勝手に恋焦がれていながら、勝手に裏切られたという逆恨みともいえる感情が沸き起こります。結局、M型ライカは「自分の肌には合わない」と結論づけて手放しました。この経験から、私はポルシェに対して、憧れの存在のまま触れることなく人生を終えることを決意していたのですが……。

ポルシェ 911 ターボS カブリオレ(3180万円~)

 そんな私の事情を知らないASCII.jpの編集スピーディー末岡は、常日頃「ポルシェに乗りましょう」から言い続けてきました。ついに自分が乗りたいのか、私が抱く夢を壊したいのか、最新の911 ターボS カブリオレという3180万円もするクルマを勝手に手配! 京都でのタイカン試乗会のときにもう1台乗れるとの話だったのですが、「911 ターボS カブリオレにしましたんで!」と当日言われる始末。乗ってみたい気持ちと、裏切られたら怖いという気持ちが複雑に入り混じります。それは恋焦がれた異性へ告白する前のドキドキに似た思いにも。そんなこんなで、半ば強制的に試乗することと相成りました。

憧れを裏切らないクルマ・ポルシェ 911

 3000万円超えのクルマというと、ランボルギーニやアウディ、フェラーリといったブランドのクルマが頭をよぎります。もう少し金額を下げてもHonda NSXやNISSAN GT-R NISMOといった車種が、911 ターボS カブリオレのライバルとして挙げられるでしょう。

ポルシェ 911 ターボSとほぼ同じ金額である1台、ランボルギーニ ウラカンEVO

 これらのクルマは周囲を威圧するかのような外観とオーラが漂い、街中で見かけてもスグに道を譲りたくなるもの。ですが、目の前に現れた911 ターボS カブリオレは、そういった「いかにも!」な印象が希薄。失礼承知で率直に申し上げれば「本当に3000万円もするクルマなの?」というのが正直なところ。「お前はモノの価値がわかっていない」とお叱りを受けそうですが、きっと街中で見かけたポルシェ 911の値段を正確に言い当てられる方はマニアやファン以外いないのでは?

ポルシェ911 ターボS カブリオレのフロントビュー。車幅は1900mm

ポルシェ911 ターボS カブリオレのサイドビュー。全長は4535mm

ポルシェ911 ターボS カブリオレのリアビュー。マフラーは左右2本出しで、可動ウイングを搭載する

 そう思う要因の1つに、この金額のクルマとしてはコンパクトであることが挙げられます。ボディーサイズは全長4535×全幅1900×全高1301mmと「車幅は若干広いけれど、日本の道で取り回しに苦労はしない」サイズ。スーパースポーツの多くは、日本の車線幅に対して車幅が広すぎたり車高がとても低いなど、取り回しに苦労しがち。なので、この大きさはうれしく思うとともに一安心。

NISSAN GT-R NISMO(MY20)

 ちなみにこのボディーサイズ、NISSAN GT-R NISMO(MY20)とほぼ同等だったりします。ですが、あちらが「いかにも!」なカーボン製パーツで武装して速そうなオーラが全開であるのに対して、911 ターボS カブリオレにはそういったものは一切ありません。これが「見た目と値段が異なる」2つ目の要因。クルマ好き男子は、高いカーボンパーツが大好きで、カーボンパーツがついていると高いと思ってしまうのです。

 NISSAN GT-R NISMOの名を出したついでに申し上げると、似ているのはボディーサイズだけではありません。車両重量は1.7トンあること、出力が600馬力オーバーであること、その出力を四輪駆動で地面に伝えること。ちなみに911 ターボS カブリオレの方が、50馬力ほど出力が高く650馬力を発生します。そのような高出力を生み出すパワーユニットは、言うまでもなく伝統のエンジン・フラット6。そして名前のとおりカタツムリ(ターボ)付き。

エンジンフードを開けようとしたところ

エンジンフードを開けて見えたのは、冷却ファンのみで、エンジンを拝むことはできず

ファンの横につけられたラジエター冷却水とエンジンオイルの給油口

ポルシェが推奨するエンジンオイルはMobil 1

2つのラジエーターファンの間には、3.8リッターのフラット6を搭載するという銘鈑プレートが設けられていた

 ならばご自慢のフラット6を拝もうとしたところ……何をどうやって見ることができないではありませんか。外から見えたのは冷却用ファンとラジエーター液とエンジンオイルの給油口と、その近くに推称オイルがMobil 1であると明示したシールのみ。3000万円級スポーツカーの多くは、エンジンルームを見せる演出が多いだけに、これにはションボリします。と、ここまでお読みになられた方はお気づきでしょう。この時点において私は「やはりポルシェには近づかず、憧れと夢のままにしておけばよかった」とスピーディー末岡を恨みました。

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