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確かに、ビールで「糖質ゼロ」って今までなかった!

日本初、キリンの「糖質ゼロビール」が売行き絶好調!“ビール戻り”が巻き起こるか

2020年11月12日 17時00分更新

文● ナベコ 編集●ASCII

「キリン一番搾り 糖質ゼロ」350ml缶、500ml缶が10月6日から発売スタート。販売後5日で年間販売目標の5割強を達成するほど売行き好調だそうです。

 日常的にスーパーやコンビニのお酒売り場に足を運んでいる人は、10月ごろから紺碧に輝く「キリン一番搾り」を見かけるようになったかと思います。気になってつい手に取ってしまいますね。はい、こちら「キリン一番搾り 糖質ゼロ」です。日本で初めて「糖質ゼロ」を実現したビール。

 意外に思うかもしれませんが、糖質ゼロや糖質オフの新ジャンル、発泡酒は珍しくないものの、ビールで糖質ゼロは今までありませんでした。原料や製造上の関係で、ビールで糖質ゼロは実現不可能との声もあったくらい。

 そんな中、キリンビールは5年の開発期間を費やして「キリン一番搾り 糖質ゼロ」を世に出しました。一番搾りブランドから出すだけあって味も期待を裏切らないクオリティーです。

 一番搾りのマーケティング担当である北島苑さんに、本商品へこめた想いを聞かせていただきました。

一番搾りのマーケティング担当北島苑さんにインタビューしました。

ビールを買わない理由は“価格”だけではなかった

――“ビールで糖質ゼロ”を実現するまでは並たいていの道のりではなかったはず。なぜ開発に着手したんですか?

北島:ビールを多くの人に気兼ねなく楽しんでもらいたい、その想いからでした。ビール市場はここ10年位で見ても少しずつ落ちています。いわゆるビール離れと言われていますね。

ビールで糖質ゼロは日本初。

――私自身ビール大好きですが、まわりを見ると以前より“ビールじゃない“ものを飲む人が増えてきた気がします。

北島:新ジャンルやRTD(※)がいろいろ出てきましたからね。そこで、お酒を飲む習慣があるお客様を対象に「ビールを飲む量が減った理由」を調査したところ、「太りそう」とか「糖質が高いから」といった、健康面の理由を上げる方も多いことに気が付きました。

※RTDとは購入してそのまま飲める飲料のことを指します。Ready To Drink → RTD。アルコールでいうと、缶チューハイや瓶入りカクテルなどをRTDと呼ぶことが多いです。

――ビールを買わない理由は価格面が大きいと思っていました。

北島:まさに、一番多かった回答が「値段が高いから」でした。その次が健康面です。社会的に健康意識が年々と高まっている背景もあるのでしょう。ビールの“糖質”を気にしてハイボールに切り替える方もいらっしゃいますね。

――糖質ゼロやオフは新ジャンル、発泡酒だとすでにあると思いますが。

北島:新ジャンルや発泡酒は低価格で「気軽に飲める」という点で市場のニーズを満たしています。ですが、調査をしたところ「おいしさ」という点に関してはビールで期待している人が多い、とわかりました。

 つまり「本当はビールが一番好き」「本音ではビールを飲みたい!」という人は少なくないのです。そこであえて“ビール”で、飲むハードルを取り除こうと糖質ゼロを目指しました。

酒税改正期に世に大きなインパクトを与えるビールを!

新ジャンルでもなく「ビール」で糖質ゼロに挑戦。

――お酒好きにとって今年10月は、酒税改革の第一弾で種類ごとにお酒の税金が変わったことが大きなトピックでしたが、一番搾り 糖質ゼロはそのタイミングに合わせたんですか?

北島:おっしゃる通りで、酒税一本化に向けて、新ジャンルの税金は上がる一方で、ビールの税金は下がりました。高いイメージがあるビールにとって、価格が下がるのはチャンス。そのタイミングで大きな商品を世に出したく思っていました。

――ビールにとって酒税一本化は追い風だと。

北島:そう言えるでしょうけど、ビール各社はここ数年、新ジャンル、RTDの新商品はどんどん出してきたものの、ビールで目立った新商品はなかなか出せていませんでした。酒税もすぐに一本化されるわけではないので、低価格路線の新ジャンルやRTDは勢いがありますから。

 そんな中、ビールでなにか世間の注目を集めるインパクトのある商品を出して、ビール離れに歯止めをかけたい、と。

 ビールカンパニーとしての使命感も今回の一番搾り 糖質ゼロを開発した原動力となっています。

開発期間は異例の5年
「糖質ゼロ」だけを実現してもだめ

――開発は非常に困難だったと聞いています。

北島:困難づくしでした。開発期間は異例の5年。試験醸造は350回以上も行ないました。今年の10月に販売開始する計画で進めていましたが、最終の生産テストをクリアしたのが今年の6月。それまでは本当に、このタイミングで発売できるかわからないくらいでした。

■なぜ、ビールで糖質ゼロが難しいのか
 ビール作りでは麦芽でんぷん由来の糖質を酵母が食べることで、アルコールが生まれます。つまり糖質はビール作りで必然的に生み出され、なおかつ醸造に不可欠な要素。一般的なビール作りでは、酵母が全ての糖質を食べきることはなく、大きな糖質はビール中に残ってしまいます。

■一番搾り 糖質ゼロでは
→酵母が糖質を食べきることで「糖質ゼロ」に

<原材料の見直しや、仕込み発酵工程を見直すことで実現>
・酵母が食べ残す糖質が少なくなるよう、麦芽から新しく選定。

・麦芽由来のでんぷんを糖質に分解する仕込み工程を見直しをすることで、酵母が食べやすいサイズにでんぷんを分解する。

・通常のビールよりも元気な酵母を使用することで、糖質の食べ残しを低減。

およそ5年もの年月を費やして独自製法を採用してようやく完成させた。

――開発にあたって一番大変だったポイントは?

北島:「ビールで糖質ゼロ」と「味として満足できる」の2つを両立させる点でした。ビールで糖質ゼロを実現させること自体が挑戦ですが、糖質ゼロのビールができただけではダメ。ビールとして味も満足いただけるものではないと受け入れてもらえない、と。

――“糖質ゼロ”だけではなく、味にもこだわったと。

北島:はい。その両方を兼ね揃えた商品を作りあげるために、何度も何度も試験醸造を繰り返して試飲を重ねてきました。

糖質ゼロでありながら、一番搾り麦汁のみを使用した「一番搾り」ブランド。

――確かに私は、糖質由来のビールのおいしさもあると思っていたので、糖質ゼロビールと聞いた時は「おいしいかな?」と半信半疑でした。ですが飲んでみると、ビールの爽快さ、麦の香り、苦みはそのままで「ちゃんとビール」でしたね。

北島:ありがとうございます。一番搾りブランド同様に、一番搾り麦汁を使用した雑味のない麦の旨味をお楽しみいただけると思います。

――一番搾りブランドではなく単体のブランドで出すことは考えていなかったのですか?

北島:まったくの開発の初期段階では様々な可能性がありましたが、スタートして初期の段階でフラグシップブランドである「一番搾り」ブランドで出すにふさわしい中味づくりをしようと方針が決まりました。中味開発はこれで一層開発にプレッシャーがかかったと思います。

――なるほど「糖質ゼロをビール」「糖質ゼロビールを一番搾りで」の2つが課題だったのですね。結果、味としてもレベルが高い糖質ゼロビールが世に出てきて、ビール好きとしてはうれしいです。

販売後5日で年間販売目標の5割強を達成

――販売後のお客さんの反応はどうでしょうか?

北島:発表当初からお引き合いが多く、10月5日に販売スタートしてからわずか5日間で65万ケースを出荷し、年間販売目標の5割強を達成しました。

スーパーなどで一番搾り 糖質ゼロの濃い青の缶が目立ちます。

――年間目標の5割を5日間で! 絶好調ですね!

北島:ありがたいことです。以前から今年10月に発売する計画でしたが、今年はコロナ禍で家飲み需要が高まり、同時に健康志向も高まったため、ニーズに合致したのでしょう。

――品薄の心配はありませんか?

北島:現在、キリンの工場が全国で9つあるなかで、取手、名古屋、岡山の3工場で生産体制を整えており、出荷は間に合っています。今後さらに出荷が増えれば工場増設も検討するかもしれませんが、今回の一番搾り糖質ゼロには特別な設備が必要です。

――通常の一番搾り製造ラインでは作れないとは、特別に設備投資されているんですね。それにしても、すごい売れ行き。

北島:市場へのインパクトとしては、「ビールだけど糖質ゼロ」が、ビールの新しい価値として世に投げかけられたのではないかと。

――そうですね。ビールというと、なんとなく太りそう、糖質がある……そんなイメージが崩れました。

北島:実は今でこそ定着したノンアルコールビールを日本で最初に出したのはキリンなんですよ。ノンアルビールはビールの代替品の枠を超えて、新しいビールのジャンル、飲用体験として受け入れられていますよね。今回の一番搾り 糖質ゼロも新しい価値としてビールの幅を広げる存在になればいいと思っています。

定番の「一番搾り」と「糖質ゼロ」とで、シチュエーションによって飲み分けるのもアリ。

――私はやっぱり、味としてはふつうの一番搾りが“一番”だと思っていますが、どう飲み分けるのがオススメですか?

北島:糖質を気にされる方が「1本目は一番搾りで、2本目から糖質ゼロを」と飲まれることもあるでしょうし、アルコール分も4%なので「平日の夜、軽めに飲みたい時にぴったり」とか「お風呂上がりの一杯に罪悪感なく飲める」という声もいただいています。

――お風呂上りに軽めに飲みたい時にいいですね。あと、BBQなど昼からガッツリお肉料理を食べながらお酒を飲む時にもいいかもしれません。ビールだとすぐお腹が一杯になってしまうので。

北島:そうですね、これからの季節は、お正月など飲酒機会も増えると思いますが、そういう時にも糖質ゼロなので飲みやすいと思います。

――考えてみると「ビールが好きだけど、今は糖質ゼロがいい」というタイミングはけっこうありますね。酒税改正や糖質ゼロビールの登場をフックに“ビール戻り”があるとビール好きとてしてはうれしいです。

北島:ありがとうございます。ぜひ、味もこだわった一番搾り 糖質ゼロを多くの人に飲んでもらいたいです!


 以上、一番搾り 糖質ゼロのご担当者インタビューでした。飲酒の機会が増えるこれからの季節、これまでなかった糖質ゼロのビールも手に取ってみてはいかがでしょうか!


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ナベコ

酒好きライター、編集者。カンパイからすべてが始まるはず。「TVチャンピオン極~KIWAMI~ せんべろ女王決定戦」に出演するなど酒活動しつつ食トレンドを追っています。♪アスキーグルメでおいしい情報配信中♪

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