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私たちはいかにしてコンピューターを愛するようになったか?

2020年09月28日 13時00分更新

私がはじめて買ったコンピューター「Apple //c」と「Kano PC」

コンピューターはカッコよくあるべき

 今週、私は2つのオンラインイベント(4日間)に参加させてらいます。1つが、9月30日(水)の『これからコンピューターをはじめるキミたちへ! または、私たちはいかにしてコンピューターを愛するようになったか』。もう1つが、9月31日(木)から3日連続の映画『GENERAL MAGIC』オンライン上映と同時に行われる座談会です(どちらも直前のお話で申し訳ない)。

 実は、この2つの座談会(『GENERAL MAGIC』のほうは3日間ですが)、共通するものがあると思ってこれを書いています。それは、我々がコンピューターやテクノロジーで仕事をすることの本質にかかわるものではないかと思えるものです。

 『これからコンピューターをはじめるキミたちへ! または、私たちはいかにしてコンピューターを愛するようになったか』は、GOROmanさんこと株式会社エクシヴィ社長の近藤義仁さん、IT エンジニア兼マンガ家千代田まどか(ちょまど)さん、株式会社ProjectWhite(TSUKUMO)の駒形一憲さんに来ていただきます。

 この座談会をなぜやることになったかは、告知申し込みページにも書いたとおりなのですが、今年からはじまる小学校のプログラミング教育の必修化というのがあります。さらには、全生徒に1人1台のPCを持たせる《GIGAスクール構想》も新型コロナの影響で前倒しで実施されるようになったという背景があります。

 とても素晴らしい状況になってきているのですが、なんとなく《プログラミング偏重》というかコンピューターってもっと楽しくいろんなことができる。コンピューターを大好きになって肌身離さず持ち歩いて使い潰すことが、デジタルの世界で自由に生きるいちばんいい方法ではないか? それを実践しているGOROmanさん、ちょまどさん、駒形さんと、学習指導要領にはけして書かれていない《体験的コンピューター入門論》を展開できないかというわけです。

 駒形さんには、子どもたち向けに発売された「Kano PC」を紹介いただく予定です。Kano PC自体は、ただのWindows 10マシンで性能的にもなんでもできるわけではなく、小中学生がプログラミングやワープロなどのツール類やウェブを使うことを想定したものなのでありますが。

 それでも、米国や英国では、業界内はもちろん有名スポーツ選手やアーチストに応援する人がいるらしい。というのは、たぶんこのマシン自体というよりもKanoというブランドの取り組みがまじめに子どものことを考えているからだと思います。

Kano PC。本体背面は透明樹脂製、持ってだけけると「必ずそれなんですか?」という雰囲気になる。

誰かがどこかで跳ばないと本当の未来はこない

 映画『GENERAL MAGIC』については、「イノベーションを語ろうという人は絶対にこの映画を見ておくべき」という内容でいちどこの連載で書かせてもらいました。記事のあと、公式トレーラーも公開されたのでぜひ見ていただきたい。

 この2分30秒のムービーを見るだけでも分かるのが、1990年代に、iPhoneやAndroidが生まれる直接のきっかけとなったマシンが、どのような姿勢で作られようとしていたかです。なぜGENERAL MAGICは、その後、iPodの企画をアップルに持ち込みiPhoneの開発を率いる人物やAndroidの生みの親となる人物を輩出することになったのか? ヒントは、若い女性エンジニア(ミーガン・スミス)が、「私たちは人に愛されるものを作ろうとしています、時計やメガネや財布のようにね」と喋るシーンがあります。

 GENERAL MAGICの製品が発売された1994年のモバイル事情のことを振り返りたくて、携帯情報端末を特集した『 月刊アスキー』(1994年10月号)を引っ張り出してきて眺めていて考えることがありました。

 この中で「GENERAL MAGIC」は、《次世代コミュニケーションへのパラダイム》と副題されて特集記事のいちばん最後のほうに最も多くのページ(といっても3ページですが)を割いて紹介していました(編集部記事)。その次に長いのがニュートンでもHP200LXでもザウルスでもなく、IBMと三菱電機が作ったベルサウスの世界初と思われる携帯電話+PDA製品「Simon」。PDAブームのさなかに《情報端末にはネットワークだろ!》とぶつけた内容の特集だったのでした。

 読んでいくと「ソニーやモトローラのほかに、松下、東芝、IBMなど30社をこえる企業がGENERAL MAGICのライセンスを受け、同社のMagicを搭載した端末を開発している」とある。「Telescript(後述)が“情報スーパーハイウェイ”の基盤技術として期待されていることは確かである」(これがインターネット普及の前夜の感覚なのだとすると感慨深い)などともあります。なお、編集部が日本テレビで提供していた『週刊パソコン丼』によると「Magic Capの日本語版は1997年に提供される」ということだったらしい。

 Magic Capは、よく知られているように3種類の画面からなっていました。PDAライクな机の上、そしてライブラリやアプリに相当するドアが並ぶ廊下、ビルの形でさまざまなオンラインサービスがならぶダウンタウンです。

 これは、ゼロックスのStarやMacintoshが自分の仕事環境にあるフォルダーやドロワーやネットワークをメタファーとしたものを、一般ユーザーのために生まれ変わらせたものに見えます。あるいは、ルーカスフィルムのオンラインサービス「Habitat」のようなゲーム感覚のコミュニケーション環境を連想させます(富士通もFM TWONSから展開)。みんなそういうのが好きだったのに必ずしもやれなかった。

 それは、携帯情報端末のほとんどが、手帳的な「PDA」だったのとはまったく別の世界です。それに加えて「Telescript」というエージェント指向言語をサポート。当時の通信環境を考えると人間が対話型に処理するよりも、ユーザーが手順を託したエージェントがサービスを渡り歩くほうが有効と考えられた。これも、ほかの携帯情報端末がメールやファクスモデムだったことを考えると別次元の世界といえます。

 しかし、その先進性と理想主義ゆえ端末はなかなか動かなかった。映画の中でもソックリの表現が出てきますが《待ち》状態になると回るシルクハットがなかなか止まりませんでした。しかし、そんなたぶん間違っていたけど確実に楽しいプロジェクトから未来は生まれてきたわけです。

 

これからコンピューターをはじめるキミたちへ! または、私たちはいかにしてコンピューターを愛するようになったか
開催日時:2020年9月30日(水)20:00~21:30
主催:全国小中学生プログラミング大会実行委員会
      (株式会社角川アスキー総合研究所、NPO法人CANVAS)
共催:株式会社朝日新聞社
協力:株式会社リンクスイターナショナル、株式会社インテル
参加費:無料
申込みサイト:https://jjpc-webinar002.peatix.com/

<日本未公開>映画『GENERAL MAGIC』(日本語字幕付き)特別上映会 ×特別座談会
開催日時:
第1回 10月1日(木)19:00 上映開始
            20:30 座談会(ゲスト:川島優志氏、齋藤洋氏)
第2回 10月2日(金)19:00 上映開始
           20:30 座談会(ゲスト:清水亮氏、原野守弘氏)
第3回 10月3日(土)16:00 上映開始
           17:30 座談会(ゲスト:鈴木直也氏、林信行氏)
主催:株式会社角川アスキー総合研究所
参加費:1300円(税別)
申込みサイト:https://generalmagic-movie-1001.peatix.com/

 

遠藤諭(えんどうさとし)

 株式会社角川アスキー総合研究所 主席研究員。プログラマを経て1985年に株式会社アスキー入社。月刊アスキー編集長などを経て、2013年より現職。角川アスキー総研では、スマートフォンとネットの時代の人々のライフスタイルに関して、調査・コンサルティングを行っている。「AMSCLS」(LHAで全面的に使われている)や「親指ぴゅん」(親指シフトキーボードエミュレーター)などフリーソフトウェアの作者でもある。趣味は、カレーと錯視と文具作り。2018、2019年に日本基礎心理学会の「錯視・錯聴コンテスト」で2年連続入賞。著書に、『計算機屋かく戦えり』(アスキー)、『頭のいい人が変えた10の世界 NHK ITホワイトボックス』(共著、講談社)など。

Twitter:@hortense667
Facebook:https://www.facebook.com/satoshi.endo.773

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