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新周波数で5G展開を進めるドコモ 4G周波数の5G転用は慎重

2020年08月25日 13時00分更新

 NTTドコモは、「5Gネットワークの展開戦略に関する記者説明会」と題するオンライン会見を開催。ドコモの5Gネットワーク展開について、同社ネットワーク部 技術企画担当部長の中南直樹氏が説明を行なった。

単なる4G周波数の5G転用では5Gのメリットは活かせない
エリアマップで区別するなどユーザー周知の必要性を強調

 5Gについては、「高速・大容量」「低遅延」「多数端末接続」という3つの特徴がよく知られているが、そのなかでも「高速・大容量」は、サブ6(ドコモは3.7GHz帯、4.5GHz帯)、ミリ波(28GHz帯)と呼ばれる周波数において、これまでとは比較にならない周波数幅が割り当てられていることで実現される。ドコモはこれらの新周波数を用いた5Gを積極的に展開していくことをあらためてアピールする。

5Gで常に紹介される3つの特徴

5Gが高速・大容量であるのは非常に広い周波数幅が利用できるため

ただし、この新しい周波数帯は電波が飛びにくく、エリア拡大は難しい側面もある

 一方で今後、総務省の省令改正により、4Gの周波数を5Gを転用することが可能になる。電波が比較的飛びやすい4Gの周波数での5G展開では、5Gエリアの早期の拡大が可能であり、KDDIやソフトバンクはこの方式に積極的な姿勢を示している。一方、ドコモは制度そのものには賛同しつつも、ユーザー保護の観点から懸念があるという見方を持っている。

 具体的には、4G周波数を5Gに転用しても、周波数幅自体は変わらないため、通信速度は4Gと同等になり、「5G」というキーワードから期待されるような「高速・大容量」は実現不可能である点、また現在の4Gの周波数は日々多数のユーザーによって利用されているにも関わらず、5Gに転用されることで4Gユーザーの通信速度が低下する可能性があるという点を指摘した。そしてユーザーの優良誤認を防ぐためにも、4G周波数を用いた5Gエリアと新周波数による5Gエリアをマップで色分け表示するなどして、ユーザーにしっかり周知すべきと強調した。

4Gの周波数を5Gに転用しても、周波数幅が広くなるわけではないので、実際には大きな速度向上が見込めるわけでは無い

限られた周波数幅を5Gに転用するため、4G側の速度が低下する可能性もある

「あまり速くならない5G」と「実際に速い5G」をエリアマップでわかるようにすることが、ユーザー保護の観点から必要だとドコモは主張する

 また、5Gのメリットとしてイメージされることが多い「低遅延」についても単純な周波数の転用では同様に不可能であるとして、5Gコアの導入を積極的に進め、2021年度中のSA(スタンドアローン)サービスを開始予定。5Gの特徴を活かしたサービスを提供できる段階での4G周波数の5G転用も検討するとしたが、具体的な時期などについては「現時点で開示できる情報はない」(ドコモ中南氏)とした。

5Gの本来の性能が利用できるSAへの進化を進める

4G周波数への5G導入によるエリア展開も将来的には予定している

 なお、質疑応答では、4G周波数の5G転用に積極的なKDDIやソフトバンクを念頭に、「たとえ速度が向上しなくても5Gで通信できること自体には意味があるのではないか」「マーケティング的にドコモが不利になるとしてもその方策を取るのか」といった質問が出たが、これについては前述した内容を再度説明。ユーザーが5Gスマホに買い替えて、端末上で「5G」と表示されているにも関わらず「(速度やサービスが)変わらないじゃないか」と感じる状況にならないようにしたいとした。

 また、国内ベンダーの設備を中心に5Gネットワークを構築しているドコモに対し、エリクソンが推進する、4Gの周波数を4Gと5Gとで動的に切り替え可能な「DSS(Dynamic Spectrum Sharing)」と呼ばれる技術への評価についての質問では、ドコモはO-RANでの標準化による設備のマルチベンダー化を進めており、DSSも現在技術を見極めている段階としつつ、DSS導入によって4G側のスループット低下の可能性があるという見方から、やや慎重な姿勢をうかがわせた。


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