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Bluetooth SIG予想

LE Audio機器は来年から本格投入、2024年までにスピーカーの97%がBluetooth搭載に

2020年04月15日 21時00分更新

 Bluetoothの標準化団体であるBluetooth SIG(Special Interest Group)は4月15日、Bluetooth市場の最新動向と市場予測について説明した。

 リモート会見には、Bluetooth SIGのシニア・ディレクターでマーケットデベロップメント(市場開発)を担当しているチャック・セイビン(Chuck Sabin)氏が登壇。2020年現在の市場動向と今後5年間の展望、さらに次世代のワイヤレスデバイス動向などをテーマとした。

 数値は、Bluetooth Market Update(ABIリサーチ)に基づくもの。会見の冒頭でセイビン氏は、調査については新型コロナウィルスのパンデミックを考慮に入れる以前のデータと前置きを入れたが、短期的な影響は合っても、Bluetooth SIGは長期的な展望として数字をとらえているとした。

 Bluetooth SIGでは、Bluetooth規格の「仕様策定」「認証」「認知向上」を3つの柱としている。会員数は現在3万5761(企業)。14のワークグループが動いており、80の仕様策定が進行中だという。

 2019年のBluetooth機器の出荷実績は約42億台。これが年平均成長率8%のペースで順調に伸び、2024年には62憶台のBluetooth機器が出荷されると予測している。その内訳としてPCおよびタブレットの採用事例が増えており、5年前の2015年に全出荷台数に占める割合が33.3%だったものが、2024年にはこの割合が携帯電話機と逆転し、出荷台数の2/3をPCおよびタブレットが占めるようになるという展望を示した。

LE AudioでBluetooth Audioは新しいステージに

 Bluetoothが担う「オーディオストリーミング」「データ転送」「位置情報サービス」「デバイスネットワーク」の4つのソリューションのうち、もっとも大きなボリュームを担うと期待されているのがオーディオ分野だ。年平均7%の割合で市場が拡大し、2024年までに15億台を超えるデバイスが出荷される見込みとなっている。2020年の予測も12憶台と昨年の予測を上方修正している。

 2024年にはスピーカー製品の97%がBluetooth搭載。また、完全ワイヤレスイヤホンはワイヤレスヘッドホンの38%を占めるという見通しだ。さらに「LE Audio」が補聴器を始めとした新しいデバイスに応用され、新しい市場機会を生み出すとする。

 次世代規格である「LE Audio」についてはASCIIでも何度か話題にしているが、大きく4つのポイントを持つ。「最新コーデック」「マルチストリームオーディオ」「聴覚補助技術(補聴器)の標準化」「オーディオシェアリング」だ。このうちオーディオシェアリングでは、個人が自分の端末で聞いている音を友人とシェアしたり、ライブ会場・空港・駅など同じ場所にいる人に対して広範に音声情報を届けるといった、Bluetoothの新しい応用方法を広げるものとなる。

 セイビン氏は、LE Audioは今年中に対応機器が市場投入される見込みだが、新たに追加されるLC3コーデックについては、複数のプラットフォームでテスト中で、搭載機器は少し遅れて来年から市場に出てくるという予測も示した。

 また、LE Audioは補聴器業界の関心も非常に高い技術だという。

IoTの普及がBluetoothデータ転送を後押しする

 データ転送分野では、IoT機器への応用が期待されている。

 Bluetoothは、現在IoT機器の通信技術としてシェア38%を占め、Wi-FiやRFIDなど競合技術を退けてトップの座にある。Bluetooth LEによって、ウェアラブル端末やスマートフォンのデバイストラッカーなどへの応用が進展。2019年には8億台の利きが出荷されたが、年平均13%の成長によって、2024年には15億台の出荷が見込まれている。

 2024年には、Bluetooth搭載のウェアラブル端末が4憶1100万台、玩具が1憶2000万台を占め、多数派となるが、8300万台の既存のカテゴリーに当てはまらない通信端末の出荷も期待できるという。Bluetooth 5.0で搭載された「2M PHY」ではBluetooth 4.0の1M PHYに対して2倍の転送速度を持ち、Bluetoothの長距離通信技術である「LE Coded PHY」では4倍の通信距離、そしてブロードキャストできるデータも8倍に増えたとする。これらはビーコンやセンサーなどへの応用でも有力な部分だ。

Bluetoothを使いcm単位の位置情報取得が可能に

 Bluetoothを使った位置情報サービスは、いま急速に拡大している分野で、2019年の1億3200万台にたいして2024年には5億3800台とほぼ4倍。年平均で32%の伸びを示す予測だ。

 Bluetoothを使うことで、GPSが上手く機能しない屋内でも安価にナビゲーション、トラッキング、紛失物探索などが実現できる点は強みとなる。2024年までに100万台のBluetoothリアルタイム位置情報サービスが実装され、18億台のハンドセットが位置情報サービスに対応する見込みだ。また、紛失タグ/在庫トラッカーの出荷数も1億3000万台に増加するとしている。

 その中で方向検知は、今後の応用が期待できる新しい機能だ。位置情報サービスの精度を上げるために重要で「到達角度」(AoA)と「発信角度」(AoD)の組み合わせによって、ある場所に対して近づいたかどうかだけでなく、より詳しい位置の情報が得られるようになる。距離についても、現状では1m単位での精度だが、数cm単位の精度に向上するという。高精度な距離測定は自動車業界にとっても意味のある技術と言える。例えば、スマートフォンを使って、駐車した車の位置や距離を正確に知ることができる。

商業施設で数千のBluetooth機器を束ねる未来も

 デバイスネットワークは、スマートビルディングなどを実現するための技術。特に中国市場での拡大を見込んでおり、アリババやシャオミといったIT大手が、単一のネットワークで数千のノードを扱えるMESH技術を商業施設などで活用し、2024年には8億9200万台の出荷があると予測している。

 アジア市場では、ホームオートメーションシステムの50%がBluetoothを使っているとし、照明・スイッチ・プラグなどがBluetoothを使ったデバイスネットワークに組み込まれている。また、中国ではスマートスピーカーの導入が2024年までに2.5倍、スマートライトやホームオートメーションシステムの導入が3倍に伸びると予測している。

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