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「第3回 横浜ベンチャーマップ作成イベント」レポート

女性起業家が語る横浜で事業を始めるメリットとは

2020年04月13日 06時00分更新

 横浜市とASCII STARTUPは2020年2月14日、横浜市内のベンチャー交流イベント「第3回ベンチャーマップ作成イベント」を関内地区のベンチャー企業成長支援拠点「YOXO BOX」にて開催した。本イベントは、横浜市のイノベーションマップ情報の収集を目的として月1回、開催されている。今回は女性の起業に着目し、横浜市内で起業した女性起業家2名をゲストに迎え、横浜で起業するメリットや横浜らしいビジネスをテーマにトークセッションを行なった。

 ゲストは女性の起業支援事業を展開している株式会社ブルーコンパス 代表取締役の蜂谷詠子氏と、関内イノベーションイニシアティブ株式会社 代表取締役の治田友香氏の2名。

 前半はゲストの蜂谷氏と治田氏からそれぞれの事業の紹介と、有限責任監査法人トーマツ横浜事務所ベンチャー支援コンサルタントの村田茂雄氏より横浜ベンチャーマップ進捗状況の報告が行なわれた。

 株式会社ブルーコンパスは、1)コワーキング、2)起業支援、3)学習塾、4)女性キャリア支援――の4つの事業を展開している。2018年に女性専用コワーキングスペース「ブルーコンパス」を横浜駅東口に開設し、女性起業家向けの経理やPRの勉強会やセミナーイベント開催。また、コワーキングスペース内に女子専用学習塾を併設。定額で5教科の個別指導や受験対策に対応し、平日は毎日昼間から通える。女性のキャリア支援事業としては、プロジェクト型の講座を実施するほか、企業に勤める女性を対象に社内プロジェクトの支援も行なっている。

蜂谷詠子氏 株式会社ブルーコンパス 代表取締役

 関内イノベーションイニシアティブ株式会社は、関内地区を盛り上げるため、「想いを行動する力に変えて、街を育てる」をコンセプトに、関内の空き室を活用したシェアオフィスmass×mass関内フューチャーセンター、YOXO BOXとスクールの運営、地域課題の解決に取り組む社会起業家の育成、コンサル事業などを手掛けている。特にソーシャルビジネスの担い手育成に力を入れており、ソーシャルビジネスのコミュニティー形成に向けた講座やイベントを開催し、これまでに87名の社会起業家を輩出し、起業実績は40社を超える。ブルーコンパスの蜂谷氏も講座の受講生の1人だ。

治田友香氏 関内イノベーションイニシアティブ株式会社 代表取締役

 横浜ベンチャーマップは、現在約70社の情報が集まっており、公開へ向けて制作が進められている。トーマツ横浜事務所の村田氏からは、横浜ベンチャーマップに登録されているベンチャー企業として以下の9社が紹介された。

・株式会社TRIPLUS:外国人旅行者向けマッチングサービス「TRIPLUS」を運営
・アットドウス株式会社:モバイル投薬デバイス「atDose」を開発
・Trim株式会社:完全個室のスマートベビーケアルーム「mamaro」の開発・運営
・ユアスタンド株式会社:EV充電スタンドサービス
・DAS株式会社:リアル謎解きゲームを企画・制作する「謎解きタウン」ブランドを展開
・株式会社コードミー:オリジナルアロマの調合サービス
・株式会社CQ-Sネット:レーダー技術を活用した見守りサービス
・リアロップ株式会社:AIを用いたレンズの補正技術を開発
・株式会社ナノカム:抗菌・抗ウイルスポリマーの開発

村田茂雄氏 有限責任監査法人トーマツ横浜事務所 ベンチャー支援コンサルタント

変わりゆく「関内」を考える

 続いて、関内まちづくり振興会より、“変わりゆく「関内」を考える”をテーマに、関内エリアの現状と関内まちづくり振興会の組織概要について説明した。

左から、理事・事務次長の新村 繭子氏、理事/事務局の五十嵐 洋志氏、理事/事務局の後藤 清子氏

 関内が位置する横浜市中区は人口15万2168人、そのうち外国人は1万7132人と、全国で5番目に外国人の多い地域である。65歳以上の割合が高く、もともと郊外に住んでいた高齢者が終の棲家として中区に移住してくるケースが増えているのが特徴的だ。

 以前の関内は、飲食と美術の街で住宅は少なかったが、バブル崩壊以降、マンションが増え、飲食店が激減し、産業は多様化している。

 関内街づくり振興会は、2010年に「関内を愛する会」からスタートし、現在は事業者を中心に150の個人、団体、法人で構成される任意団体だ。当団体では、生活者の視点によるまちづくりのビジョンを策定し、「関内フードアンドハイカラフェスタ」、有志が運営する地域食堂「さくらホームレストラン」、大通り公園を保育園などの園庭として活用する「みんなの園庭プロジェクト」、緑化イベント「ZASSO Fes!」など、さまざまなまちづくりに関する主催・公園事業を展開している。

 これから取り組む町の課題として、商業活動の地盤低下、空き室・空きビルの増加を挙げた。今後の街のトピックとして、中高層住宅の建設やインバウンドの増加等、市庁移転と跡地開発、関東学院大学の立地、統合型リゾート計画への対応などを挙げた。これから大きく環境が変わる関内の街に、今後より一層の関心が集まりそうだ。

女性起業家が横浜で事業を始めるメリットとは?

 後半のトークセッションでは、「横浜で事業を始めた理由」、「横浜で起業するメリット・デメリット」、「横浜らしいビジネスとは」などをテーマに議論した。

ガチ鈴木 株式会社角川アスキー総合研究所 ASCII編集部

――横浜で事業を始めた理由は?

蜂谷氏(以下、敬称略):横浜生まれ、横浜育ちで、横浜が大好きだからと言うのが第一の理由ですね。娘を出産し、これからも世代を超えて住み続けたいと思っているので、娘の世代にもよい街であってほしいという思いで始めました。

治田氏(以下、敬称略):私は1999年から横浜に住み始めました。当時の関内は繁華街で活気があったんです。今はその雰囲気がなくなってしまったのが寂しくて、事業を通じてまた面白い街にできたらと思っています。

村田氏(以下、敬称略):私は静岡県に住んでいるのですが、横浜にはずっと憧れがあって、住みたい街、働きたい街ナンバーワンです。

ガチ鈴木氏(以下、敬称略):確かに、横浜のブランド力は今も顕在ですよね。ただ、東京と比べると、情報格差やスピード感で劣る部分があり、それをできるだけ縮めていきたい。

――横浜で起業するメリット、デメリットはありますか?

蜂谷:メリットは、家から職場が近いことです。子育てをしながら働いているので、地元で働けるのはとても助かります。もうひとつは行政が起業家支援にとても力を入れていることですね。デメリットは、やはり東京との情報格差。電車に乗るのが億劫になり、東京の情報が入ってこなくなりがちです。

ガチ鈴木:情報は、その場所にありますからね。横浜に閉じてしまうと人との出会いのきっかけも限られてしまう。

治田:横浜は広く、中区、青葉区、旭区、泉区とでは全然違う。その多様性が面白いので、地域の違いをもっと共有していけるといいですね。デメリットとして、情報格差はそこまで気にしていないのですが、それよりも資金不足を感じます。行政からの事業支援の金額が東京に比べて一桁くらい少ない。

村田:資金不足を含めて、情報格差かもしれません。起業家の質には差がなくても、知らなければ、選択肢に上がらない。もっと情報を発信していけば、資金が流れてくると思います。

鈴木:神奈川県は全国で2番目に投資金額が大きいというデータもあり、恵まれているほうなのですが、やはり東京に比べると少ない。地方都市の共通課題ですね。

村田:東京に近いことがかえってデメリットになっている部分もあります。VCや投資家が大阪や福岡に拠点を作っても、あえて横浜に事務所を構えようとはしない。横浜でファンドを立ち上げるなどの動きが起こるといいですね。

治田:資金面は行政ばかりに頼るのは難しい。民間が投資したくなるような機運を作っていく必要があります。今は横浜に住んでいる人の多くが東京で働いていますが、地元で働きたい、と考えてくれるような雰囲気を育てていきたいですね。

村田:YOXOが支援した横浜のベンチャーが上場して、エンジェルになってくれることを願っています。

――横浜らしいビジネスとは?

蜂谷:横浜市は林市長が「女性が日本でいちばん働きやすく、子育てしやすい地域にする」ことを政策に掲げています。横浜の女性が働きながら、子育てをしながら、新しい事業が起こせることが、横浜の女性らしいビジネスではないかと考えています。

治田:横浜市は約370万人の人口を抱えており、市内在住の人をターゲットにした適正サイズのビジネスも成立します。横浜らしいビジネスを長年続けている中小企業がたくさんあるので、こうした事業者とスタートアップをうまくマッチングして、いいビジネスを継続、進化させていきたいです。

――YOXO BOXができたことで横浜のベンチャー状況は変わってきた?

蜂谷:関内の行政や事業家の方の活動や目的が見えるようになったと思います。とくに女性には行政の情報が届きづらい部分があったので、こうしたお洒落なスペースで週に1度イベントを開催してくれるのはありがたいですね。

治田:YOXO BOXに来れば、否が応でも多くの人との接点ができます。関内の難しい状況を捉えながら、みなとみらいとやり取りできる場所ができたことはすごくいいと思っています。

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