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「第13回横浜ベンチャーピッチ」レポート

耳から体内情報を得る技術などヘルスケアベンチャーが横浜でピッチ

2020年02月10日 11時00分更新

微弱振動センサーを活用した見守り機器を開発

株式会社リキッド・デザイン・システムズ 熊田 幸次氏

 株式会社リキッド・デザイン・システムズは2008年設立で、もともとは半導体の開発をしていたところ事業転換して、現在のVitalセンサーを活用した製品の開発を行なっている。

 Vitalセンサーはもともとソニーの技術者が開発したもので、体の微弱な信号や動きを、圧電素子を使って電気信号に変えるというもの。それを利用して、介護や幼児の見守りシステム、美顔器にも応用している。

ソニーのViralセンサーを活用して開発。保育園などの現場の意見を聞くことで調整しているという

 幼児の見守り機器は、保育園などの法人向けの「IBUKI」と個人向けの「Baby Ai」を開発・販売している。就寝時の子供の事故を未然に防いだりするもので、海外のものは画像認識だけで判断しているものもが多く精度はいまいちだという。その点この製品は、呼吸を捉えて正確に異常を伝えるようになっており精度は高い。IBUKIの方は、すでに1300以上が販売されている。

 さらに保育園だけでなく介護の世界でも活用してもらおうと営業中だ。当初は「人の面倒を見てなんぼなので、こんなセンサーはいらない」と言われていたが、最近は介護現場の人からの声もあり、需要は増えてきているという。

 現在は、他社との差別化を目指し、眠りの質や、おむつの交換時期もわかるようにしたものを開発。ほぼ開発は完了しており実証実験を持つ段階だ。

 登壇した取締役の熊田 幸次氏は「すでに何社かと提携して、商品開発を行なっているが、SleepTech市場が大きくなる可能性があるので、そこへも注力していきたい。IPOも視野に入れており、2023年の6月期を目指しています」と語った。

Viralセンサーを活用した事業状況。今後中国市場も想定していて、中国の博覧会に出品している

変形性膝関節症を根本から治療する新薬を開発

SANSHO株式会社 諸星 敏郎氏

 SANSHO株式会社は、お茶の水女子大学の知財を利用して設立したベンチャーだ。諸星 敏郎代表は「医薬品がなく対処療法しかない病に焦点を絞ってニーズの高い創薬を目指しています」と語り、世界で初めて変形性膝関節症の根本的に解決するための治療薬の研究をしている。

 変形性膝関節症は、膝などの関節がすり減ることで骨が変形して動かすと痛みをともなうもの。日本でも2500万人が患っていると言われ、これまでステロイドやヒアルロン酸などの対処療法の治療薬しか存在しなかった。

 開発中の治療薬は、お茶の水女子大学の室伏きみ子名誉教授が発見した脂質、環状ホスファチジン酸(cPA)という化合物を利用したもので、純度を高くするため合成環状ホスファチジン酸(2ccPA)として使用。根本的な治療を可能にするものである。すでに米国FDA(Food and Drug Administration)に治験の開始を申請し、海外での臨床実験を開始している。

新薬は、これまでの薬と一線を画す画期的なものだと諸星代表は語った

 米国では優先的に開発できるよう、フェーズ1の段階では通常行なえない痛みを伴う患者に対して臨床試験を行なっていて、2019年末に終了する予定だ。

 この2ccPAの優位性は、1つの低分子の化合物でありながら、体内でヒアルロン酸の合成を増強する効果や、痛みを取りのぞき、炎症を抑え、膝にあるスポンジを壊す酵素を止めるなど、さまざまな効果・作用があるところ。うさぎでの実験では、病理体に治療薬を注入すると、42日後には完全に再生されたという。これまで再生をする治療薬はなく、ともすればこの物質は再生を引き起こすものかもしれないと、さらに研究中だ。

うさぎを使った動物実験では軟骨組織やプロテオグリカンが再生されている

 今後は、フェーズ2を2020年半ば、フェーズ3を2022年ごろ。そしてその年にはIPOも目指している。諸星代表は、「提携していただける大手の製薬企業を探しています。台湾の企業とは提携し、アジアの一部にロイヤリティーを与えていますが、日本や欧米はまだ空いています。資金調達も合わせて是非応援していただければと思います」と語った。

介護施設と専門医師チームをチャットで接続、診断

ドクターメイト株式会社 青柳 直樹氏

 ドクターメイト株式会社は、365日チャットや電話で医師に相談できる、介護スタッフ専用のサービスを展開している。登壇した青柳直樹代表も皮膚科の医師で、医療と介護の現場を知っているスタッフで構成している。

 現在、国の医療費の増加により、早期退院が求められている。そのため病院で完治しなかった人たちが介護施設へ流れてしまっている。そうすると、介護施設で医療的な対応が増えるが、介護スタッフは病気に対する知識が乏しく、間違った対応をしてしまう可能性が高い。提携している医師のほとんどが非常勤のため、週4時間以下しかおらず、すぐに相談もできないため、重症化するケースもあるという。

 2000年に介護保険ができてから、約20年で介護施設は8倍に増加。もともとは健康管理のために医者がいたのが、現状だと重症化した人が多く、週一の訪問だけではまかなえきれない状況となっている。この遠隔診断サービスにより介護施設の負担を軽減することを目指している。

 サービスの概要は、各施設からタブレットで写真を撮り、状態をテキストで送るだけで、専門の医師から平均30分以内に回答が送られてくる。介護施設で起こることの約60%は、この遠隔診断で十分だと考えていて、すべての診療科が揃っているので、365日どんなことでも相談ができる。また、やりとりの記録がデータとして残るメリットもある。

タブレットで写真を撮り、症状をテキストで送るだけ

ドクターメイトのサービスの概要

 実際に導入している施設では、皮膚科の通院数は70%減り、精神科の通院数も53%減っているという。これまで、通院するとなると介護スタッフが半日かけて連れて行っていたのが、遠隔診断だけで済むため、かなりの負担軽減につながっている。

 料金体系は収容施設の規模に応じて月額払いで、現在は25施設と契約。青柳氏は「今後世界中で高齢化社会となるため、このノウハウを日本で蓄積していくことで、世界に先んじてノウハウをためていけると考えています。難しい分野ではありますが、全員に関わることなので応援していただければ」とアピールした。

 

 横浜ベンチャーピッチは、定期的に開催されている。さらなる事業拡大を図るために、このイベントに参加してみてはいかがだろうか? また、オーディエンスの方々の募集も行なっている。詳しくは横浜市経済局のサイトを見てほしい。

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