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「第13回横浜ベンチャーピッチ」レポート

耳から体内情報を得る技術などヘルスケアベンチャーが横浜でピッチ

2020年02月10日 11時00分更新

 2019年12月3日、横浜関内にあるYOXO BOXにて「第13回横浜ベンチャーピッチ」が開催された。横浜市経済産業局が主催するこのイベントは、ベンチャー企業がさらなる事業拡大を図るべく、ベンチャーキャピタルや金融機関、企業などに対して自社の事業計画やビジネスモデルをプレゼンする機会が必要だ。その機会がこのピッチであり、地域経済の活性化につながるようサポートしていく。

 これまでは、パシフィコ横浜を中心に開催されてきた当イベントは、10月末にオープンしたベンチャー企業成長支援拠点「YOXO BOX」に場所を移し、今後はここで行なわれることになる。

 経営・創業支援課の高木 秀昭課長は、「みなとみらいは10年ほど前に富士ゼロックスさんや日産自動車さんがいらっしゃいました。この4月に資生堂さんが研究拠点を設け、7月に京セラさん、そして京浜急行さんやコーエーテクモゲームスさん、ソニーさん、村田製作所さんなど、オープンイノベーション思考のR&D拠点が今後どんどんできていきます。また関内は、海や歴史を感じられる独自の魅力をもつビジネスエリアとして、スタートアップ企業に注目されています。横浜市としましては、両エリアのイノベーターの交流を進め、横浜からイノベーションを興していきたいと考えています。そして、このベンチャー支援拠点を中心に、時代を担う起業家をどんどん輩出していきたいと思います」と語った。

横浜市経済局経営・創業支援課の高木 秀昭課長

 続いて、今回のテーマは「ライフサイエンス・ヘルスケア」ということで、横浜市が取り組んでいる健康・医療分野のイノベーションを持続的に創出していくためのプラットフォーム「LIP横浜」について、ライフイノベーション推進課の中野 浩一郎課長が登壇した。「日本は世界屈指の高齢化先進国です。そのなかで、ビジネスの発展性がみこめることで、積極的に政策を進めており、2016年にLIP横浜を始動しました。このプラットフォームでは、企業・大学・研究機関ネットワークから革新的なプロジェクトを生み出すとともに、中小・ベンチャー企業等に対する製品化に向けた支援を行ない、新技術・新製品の開発を促進していきます」とLIPへの支援を求めた。

横浜市経済局ライフイノベーション推進課の中野 浩一郎課長

 YOXO BOXでは、メンタリングやセミナー、交流や発信だけでなく、起業相談を無料で提供している。デロイトトーマツ ベンチャーサポートのメンバーが常駐しており、いつでも相談に乗れる体制を整えている。

デロイトトーマツ ベンチャーサポート株式会社の村田 茂雄氏

 前置きが長くなったが、今回のピッチを見ていこう。登壇した企業は以下の5社だ。

植物活性化剤などの探索・評価を短期で可能に

横浜バイオテクノロジー株式会社 小倉 里江子氏

 横浜バイオテクノロジー株式会社は横浜国立大学発のベンチャー企業。植物活性化剤などを低コストで短期間に評価するサービスを目指している。植物も人間と同じく、病害虫や高温や低温といったさまざまなストレスに晒されている。特に病害虫に対しては、これまで農薬が利用されてきたが、薬剤耐性病害虫が増えてきており、農薬が効かないために、過剰に利用することで残留農薬の危険性も高まり負のスパイラルに落ちかねない。

 そこで植物活性化剤に注目した。これは植物が本来持っている免疫力を高めることで、病害虫などのストレスから守る農業資材だ。農薬と違い、病害虫を殺すような作用はなく、残留農薬の心配もない。

 登壇した博士研究員の小倉 里江子氏は「この植物活性化剤の探索・評価技術は難度が高く、現在実用化されているものは4剤のみです。横浜国立大学の平塚研究室では、この探索・評価技術の確立を行なってきました。植物体「ふたば」は、ホタルの発光原理を利用して、免疫力が上がると光る仕組みを遺伝子組み換え技術によって導入。この植物体に植物活性化剤をかけ、植物の免疫力がアップすれば光るという仕組みです」。

 たくさんの穴の空いたプレートに、植物体と植物活性化剤を入れて光れば効果があることになる。強く光るほど有効で、一度に多検体を調査可能。短期間で大量の探索・評価できるのが特徴だ。これによって、研究室でもいくつかの病害虫に効く植物活性化剤を発見しているという。

植物体に探索・評価したい植物活性化剤を入れれば、短時間に結果がでる

 ビジネスモデルとしては、植物活性化剤の開発を目指すメーカーから提供された物質が有効かを評価するサービスを考えている。「世の中にはまだまだ評価されずに眠っている物質はたくさんあります。さまざまなユニークな物質と弊社の技術を組み合わせることで、魅力的な植物活性化剤の開発につなげていき、持続発展的な農業やバイオインダストリーに貢献していきたい」と小倉氏は語った。

将来的には、自ら開発した植物活性化剤をライセンスアウトしていくようなビジネスモデルも展開していきたいとした

耳から各種生体信号を取り出す技術から製品化を目指す

サルーステック株式会社 小川 博司氏

 サルーステック株式会社は、市販されているイヤホンからでも、耳の中からの圧力信号が取れる「H-ear」というプロダクトを開発中である。小川 博司代表は、「耳というのは音を聞くだけの器官ではない。耳は体に空いた窓です」と語り、音楽を聴きながらでも心拍などを取得できるため、リアルタイムで体の状態が把握できるという。

音楽と同時に脈波が取得できる

 耳から取得できる情報にはいろいろなものが含まれており、精度も医療機器での計測と遜色ないデータが取れるという。そこで、もう1つのプロダクトとして「Xanadu」を開発。専用のワイヤレスイヤホンで、脈波、呼吸などの圧力信号と耳内体温、温度、湿度、コンパス、ジャイロ、加速度が測定できるという。

医療機器と遜色ない計測結果が得られている

 ワイヤレスイヤホンのよいところは、計測しているデータをもとに直接音声でフィードバックができること。すでに開発はほぼ終わっているが、商品設計から製造までをお願いできる企業を探している。

 小川氏は、「イヤホンは、近い将来単に音楽を聴く道具から、耳にフィードバックする道具へと変わります。エンタメだけでなくヘルス管理にも役立つ道具へ進化するために、商品企画がちゃんとでき、ビジネスの中心になれる企業との提携を望んでいます」と語った。

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