ノキアの携帯電話事業を買収したMicrosoftですが、フィーチャーフォンはまだノキアブランドで発売しています。それらはストレート形状で10キー搭載、ベーシック機能だけという、俗に“ガラケー”とも言える通話メインのフィーチャーフォンです。
↑これが日本初? ストレート3Gケータイ『Nokia 6650』。 |
FREETEL(プラスワン・マーケティング)から“日本初のSIMフリーガラケー”をうたう、SIMフリーのフィーチャーフォン『Simple』が発売となりました。初回発売分は即座に完売するほどの人気で、スマホと一緒に使うシンプルケータイとして購入した人も多いことでしょう。
でも、“日本初のSIMフリーガラケー”と聞いて「あれ?」と思った人もいるはず。ノキア好きな人たちにとっては「あれは違ったの?」ってちょっと思っちゃいますよね。そう、過去を振り返るとノキアが『Nokia 6650』を2002年9月に発売していたのです。ちなみに、この6650はノキア初の3G携帯電話、しかも日本が世界で最初の販売国でした。
↑13年前に日本のノキアストアで売っていた。 |
画質の悪い写真ですみません。これは筆者が東京箱崎の“T-CAT”にあったノキアストアを6650の発売日に撮影したもの、と思われる写真。13年前なのでデジカメ画質もこんなレベルです。Nokia 6650は全世界で英語版のみが発売されました。日本では当時、海外に行くとき現地で通話さえできればいい、という程度の需要だったのでローカライズはされなかったのです。日本ではノキア・ジャパンのSIMフリー版と、Jフォン(当時)から『V-NM701』が発売されました。日本初のSIMフリーなフィーチャーフォンについては諸説あると思いますが、キャリア版ではなくメーカー品で、一般消費者向けに販売されたものはこの6650が最初と考えてよさそうです。
↑“未来からの贈り物”。ぶっ飛んだスタイルの『Nokia 7600』。 |
その次にノキアが日本に送り出したのは待望の日本語対応ケータイ『Nokia 7600』でした。これでSMSも日本語で送れるぞと喜べるはずだったのですが、そのスタイルは今見てもあり得ないデザイン。真ん中にあるディスプレイの左右を10キーが囲い、しかも木の葉をデザインしたという形状はノキア曰く“未来からの贈り物”。10キーで片手で日本語をガシガシと入力していた日本人に対しての挑戦状とも受け取れるような端末でした。
↑実は持ちやすいスタイル。限定ピンクのために台湾に飛んだ。 |
変態ケータイの仲間入りをさせたくなるデザインのNokia 7600ですが、実は持ちやすく両手を使っての文字入力もそこそこ快適に行なえました。人間工学デザインというのは見た目じゃないんだな、なんて思わせるノキアの開発力に当時はほれぼれしたものです。なお、外側のスリーブは交換可能。筆者は台湾で発売されたピンクがどうしても欲しくて、現地に飛んでいってスリーブだけを売ってもらいました。
↑他社にはできない、ノキアの楽しいケータイたち。 |
ノキアはスマホも変な形やギミックのものをグローバル市場でたくさん出していましたが、ケータイもそれに負けずにいろいろなスタイルのものを出していたのです。ノキアのケータイと聞くとストレートで10キー搭載のベーシックな製品ばかり思い浮かぶでしょうが、実はそればかりじゃないんですね。ということで、ここからはデザインや機能に特徴のある端末をご紹介。もちろんいずれもスマホではありません。
↑背中に剣を背負った『Nokia 6208c』。 |
まずは、ストレートケータイながらも画面はタッチパネル、そして背面にはスタイラスペンを装着できる『Nokia 6208c』。2009年の製品ですからそれほど古くはありません。手書き機能は漢字を簡単に書くためのもので、これは中国向け。この頃のノキアは中国向け端末の型番末版に数字の“8”や英字の“c”を付けていました。
ボディーはメタル製で高級感を持たせています。スタイラスペンは横に太い独特の形状ですが、これは中国の武士の剣をイメージしたもの。サイズの割に重量感があり「なるほど」と思わせたものです。
↑フリップ+ペンな『Nokia 6108』がその前身。 |
背面にペンをはめるなんてなかなか思い切ったデザインですが、ノキアはそれよりも前に『Nokia 6108』というケータイを出していました。こちらは10キー部分がフリップで、それを開くとタッチパネルが現れるというギミック。これも型番からわかるように当初は中国向けでしたが、手書きで簡単に文字が書けるということでのちにヨーロッパでも発売されたというヒット商品。カジュアルデザインの同型モデル『Nokia3108』も同時期、2003年に発売されました。
↑ノキアなら空中に文字だって書けちゃう! |
『Nokia 3220』はストレートボディーのこれまたフツーのケータイ。カラフルなカバーに交換可能なのはノキアならではですが、側面がカラフルに点灯するなど“光”に特化した製品なんです。最大の特徴は次の写真にあるように、思わぬところに文字が書けちゃう機能。
↑思いっきりノキアを振りまくろう。 |
3220用には面白いカバーが用意されていました。それが空中にLEDライトで文字が書けるという『Fun Shellcover』。背面にはLEDライトが並んでいて、3220の画面で文字を入力してから暗闇で背面を向けて振ると、残像を利用して空中に文字が書けるというもの。この当時、似たようなおもちゃが発売されるなど“空中文字”がちょっとブームだったんですね。それをノキアはケータイのカバーで実現しちゃったんです。
↑ノキアにもあったアウトドアケータイ。 |
防水端末の需要はいまも日本以外ではほとんどありません。海外の防水端末と言うとアウトドアを意識したデザインの製品がちらほら見られる程度。ノキアも防水系端末は数えるほどしかつくっていません。この『Nokia 5140』は本体を上下に引っ張るとボディーがわかれてオレンジや黄色のボディーに交換できるという製品でした。2003年の製品です。
↑開けばQWERTYキーボード!変態No.1の呼び声も高い『Nokia 6800』。 |
普段は普通のストレートケータイ、ところが10キー部分を開くとディスプレーの左右にQWERTYキーボードが現れる製品が『Nokia 6800』。これも2003年に登場。ノキアが世界シェア1位の座に君臨し、着々と地盤を強化していたころですね。しかも、この製品はキワモノ扱いと思いきや、その後『Nokia 6810』、『Nokia 6820』、『Nokia 6822』とシリーズ化され合計4モデルが登場。さらには“Symbian OS”搭載のスマホ『Nokia E70』も出てくるなど欧米を中心に人気があったようです。
↑キーボードもいろいろ。ソーシャル対応の『Nokia Asha210』。 |
フルキーボード搭載のケータイもノキアはいろいろと出してきました。ソーシャルサービスの時代になると手軽にメッセージを書ける縦型QWERTYキーボードスタイルのケータイの人気も高まり、OTT(Over The Top、通信事業者以外にサービスやコンテンツをネット回線を通して提供する企業のこと)との連携の動きも見せたのです。この『Nokia Asha210』はケータイながらもソーシャル専用キーを備えてワンタッチでメッセージの送受信が可能でした。一部のモデルは『WhatsApp』と連携しており、ソーシャルボタンがそのアイコンになっています。2013年登場ですから、いまでも東南アジアで売られていることも。
↑こちらのAshaはちょっとレアバージョン。 |
Asha210登場時は世界中でOTTという言葉が話題になりだしたころ。いまならSNSと言ったほうが通じやすいですよね。中国でも携帯キャリアのサービスを脅かし始めたSNSが普及しだしたころで、ノキアもWhatsAppに変わり『Weibo(微博)』のアイコンボタンを搭載したモデルを中国に投入。まあ、それだけ当時、右も左もWeiboを使う、なんて時代だったわけです。
↑これはもうケータイじゃない『Nokia 7280』。 |
パッと見てもうこれがケータイだとわかる人はいまでは一部のノキアマニアだけでしょう。かろうじて“NOKIA”のタグが付いていることからノキアの製品とわかる『Nokia 7280』はスティックタイプのケータイ。真ん中の反射する部分は鏡になっています。女性がアクセサリーのように持つことを考えたケータイなのです。
↑ホイールを回して数字を選んで押す!使いやすさは二の次。 |
使い方は簡単、じゃなく面倒。回転するホイール部分を回すと数字が出てくるので入力したい数字を選んでホイール中央を押すと確定、次の番号をまた同様に選んでいきます。これを使うのはとても大変なのですが「え? 電話ってかけるの? 男の子からかかってくるだけだから私は受信するだけよ」なんて女性向けの製品なのかもしれません。実際は、ほかの端末で電話帳をつくってSIMカードに書き込み、そのSIMをこの7280に入れれば電話帳を呼び出すだけなので多少は楽に使えます。
↑実は女性スパイ向けケータイだった。 |
デザインだけのケータイと思いきや、本体を左右に引っ張ると背面からカメラが現れ、即座に写真撮影が可能。大昔のスパイの必需品ともいえるミノックスカメラのような使い方ができちゃうんです。これを開発したノキアの担当者はスパイにあこがれていた女性だったのかもしれません。
↑高級ケータイ“VERTU”の元祖『Nokia 8800』シリーズ。 |
ノキアのケータイは昔、4ケタの数字の型番がついており、そのうち8000番台は高級モデルでした。金属ボディーや本革を使用。そして、スライドするボディーはベアリングを利用して滑らかな滑りを実現するなど本格的な仕上げがされていました。2005年から登場した『Nokia 8800』シリーズはディスプレー部分が上にスライドするギミック。2007年の『Nokia 8800 Sapphire Arte』はホームボタンがサファイア製でお値段10万円以上。3Gにも対応しており、いまでも中古市場ではそれなりにいいお値段で売られています。
↑リボルバースタイルも出していたノキア。 |
この『Nokia 7705 Twist』は2009年にアメリカのベライゾン向けに出していたCDMAケータイ。苦戦が続いていたアメリカにギミックでチャレンジしたものの撃沈した製品です。キーボード好きなアメリカの若者をターゲットにしたのですが、時代が早すぎたのかもしれません。その後モトローラが似たようなスマホを出しています。
↑音楽ケータイなんてジャンルの製品もありました。 |
いまじゃ音楽を聴くのはメディアプレーヤーではなくスマホの時代ですが、まだMP3プレーヤーが現役だった2007年ころにノキアも音楽特化のケータイを出していました。“XpressMusic”の名前の付けられたモデルは、本体側面に音楽の再生コントロールボタンを搭載。この『Nokia 5310 XpressMusic』はJBLの専用スピーカーも用意され、自宅に戻ったらケータイを装着して迫力ある音楽再生を楽しめたモデルです。XpressMusicはSymbianスマホでも登場しました。
↑FREETEL Simpleのライバル『Nokia 515』。 |
この1~2年はマイクロソフトに買収されたこともあって、ノキアブランドのフィーチャーフォンはカジュアルな低価格機ばかりとなっています。ノキアらしさが残った最後のストレートタイプケータイともいえる『Nokia 515』は2013年販売ですがブラックとホワイトのシックな2色展開が魅力。しかも、アルミボディー。3G対応なのでシンプルケータイとして日本でも使いたくなりますね。そろそろ市場から無くなりそうなので筆者も早めに入手しようと思っています。
↑シンプルケータイの需要はなくならない。 |
世の中のすべてがスマホになりつつありますが、サブ用途や緊急用としてフィーチャーフォンの需要もまだまだあるでしょう。通話とSMSができれば十分ですが、テザリングもできればWiFiルーター代わりにもなります
auから出ているガラホ『AQUOS K』はそんな意味でいまの時代に適したフィーチャーフォン代わりになる製品でしょう。そうなるとドコモの『AQUOS ケータイ』と『ARROWS ケータイ』もテザリングにはぜひ対応して欲しいもの。ノキアの携帯電話事業再参入のウワサも聞かれますが、その時はぜひ往年のノキアらしい機能やギミックを持った端末を出してもらいたいものです。
(2015年8月28日15時14分追記:記事初出時、『V-NM701』に関する記述が間違っておりました。お詫びして訂正いたします。)
山根康宏さんのオフィシャルサイト
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