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巨大3連ファン空冷グラボ『RADEON R9 Fury』は電力効率も向上し使い勝手がアップ!?

2015年07月22日 13時00分更新

 AMDは6月24日に次世代グラボ用の積層メモリー“HBM”を採用して話題を呼んだシングル最速の『RADEON R9 Fury X』を発売しました。Fury Xはフラッグシップモデルだけに簡易水冷モジュールがビルトイン済みというなんとも自作欲をかきたてる設計でしたが、今度は完全空冷仕様の『RADEON R9 Fury』が秋葉原に上陸しました。

RADEON R9 Fury

 第1弾となるSapphire製Fury搭載グラボ『R9 FURY 4G HBM TRI-X』は、初値が税抜きギリギリ8万円台。Fury Xの初値は11万円近い超高額ボードでしたが、Furyは若干お買い得感が出ています。今回も運良く『R9 FURY 4G HBM TRI-X』を試せる機会を得たので、さっそくベンチマークしてみました。

SP数を1割強減らしコストダウン

 まず、FuryとFury Xの違いはどこにあるかをチェックしておきましょう。『R9 FURY 4G HBM TRI-X』のスペックはAMDもSapphireも同じ数値ですが、今回入手したテスト用サンプルは『GPU-Z』でチェックしたところコア1040MHz仕様のOCモデルでした。

RADEON R9 Fury
RADEON R9 Fury

 GPUとしての基本設計はFury Xをそのまま継承していますが、SP数が13.5%減少、表中には記していませんが、テクスチャーユニットも256基から224基へと若干スケールダウンしています。スケールダウンした割にはTDPは275W据置きですが、この辺の数値はOCも視野に入れて付けられている場合が多いので数値の大小はあくまで目安です。

 Fury Xで全世界の度肝を抜いたHBMメモリーはFuryでも健在。メモリーの搭載量(4GB)やメモリークロックは1GHz相当なれど、バス幅を4096bitという超広帯域で結ぶという特徴的な設計はFury Xと全く同じです。

 HBMはGPUダイのすぐ隣に実装されるため、従来GPUの周囲にズラリと並べざるを得なかったVRAM(ビデオメモリー)用のスペースが不要になりました。そのため、FuryはFury Xと同じくハイエンドモデルにしては非常に小さな基板で運用できます。しかし、今回テストした『R9 FURY 4G HBM TRI-X』は、その上から厚み2.5スロットぶん&3連ファン付きの巨大クーラーを組み込んで冷却を行ないます。

 その結果、基板からクーラーが大幅にはみ出す大型グラボになった訳ですが、水冷ユニットのチューブの取り回し(これが意外に堅い)が不要なぶん、取り扱いやすさはFury Xよりも格段に向上しています。ただ、長さは306mmと長いのでケースとの干渉には十分注意しましょう。また、Sapphireの独自仕様としてアイドル時はファンが停止する“Intelligent Fan Control 2”機能を備えています。

RADEON R9 Fury
↑『R9 FURY 4G HBM TRI-X』の基板は全体の6割程度しかありません。ヒートシンク部が飛び出して空気が表から裏に貫通するようになっています。基板裏にバックプレートも仕込まれている点にも注目です。
RADEON R9 Fury
↑外部電源は8ピン×2。Fury Xと同じようにコネクターの基部のLEDは負荷に合わせて点灯します。

 今回のベンチ環境は前回Fury Xレビュー時と同一です。今回比較対照として値段の近いGTX 980のリファレンスボードを準備しました。一方、Fury Xを新たに調達することは適いませんでした。そのため前回の数値を流用しますが、Fury Xの数値はドライバーのバージョンが違うため、あくまで参考値として捉えてください。

●検証用PC構成
CPU:Core i5-4670K(4コア/4スレッド、3.4GHz、最大3.8GHz)
マザー:ASRock Z97 Extreme6(Intel Z97 Express)
メモリー:Corsair CMY16GX3M2A2133C11(DDR3-2133で使用、8GB×2)
グラフィック:Radeon R9 Fury リファレンスGeForce GTX 980 リファレンスカード
SSD:Crucial CT512M550SSD1(512GB)
電源ユニット:Corsair RM650(80PLUS Gold、650W)
OS:Windows 8.1 Pro(64ビット)
ドライバー:Catalyst 15.7、GeForce 353.30(GTX980)

GTX 980と980 Tiの中間の性能

 では早速、『3DMark』でFuryの描画性能をチェックしてみましょう。

RADEON R9 Fury

 スペックからFury Xより性能は劣ることは十分想定できましたが、このベンチだとFury Xのスコアーと1割も下がっていません。GTX 980 Tiのスコアーには負けますが、GTX 980に対しては十分な差をつけています。VRAM4GBの空冷グラボとしては非常に良い性能であるといえるでしょう。

 次は『ファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド』の公式ベンチで試します。画質はDirectX11の“最高品質”に設定、解像度は1080pと4Kの2通りでチェックしました。

RADEON R9 Fury

 このベンチのスコアーも3DMarkの結果に近い傾向になっています。1080pだとGTX 980にかなり詰め寄られていますが、4Kではしっかりとした差がついています。FuryのSP数の多さとHBMの帯域の広さが対GTX 980では有利に働いているようです。

 重量級ゲーム『ウイッチャー3 ワイルドハント』でも試してみました。フィールド移動中のフレームレートを“Fraps”で測定しますが、前回のFury Xテスト時と今回との間にウィッチャー3のバージョンが上がり、画質設定のオプションが変更になりました。つまりここではGTX 980 Tiも参考値として見てください。

RADEON R9 Fury
RADEON R9 Fury

 前回の画質設定は基本最高設定(アンビエントオクルージョンはHBAO+)にHairWorksオフというものだったので、今回もそれに準じHairworksはオフにしています。

 ゲーム系ベンチといえば、最近リリースされたばかりの『ドラゴンズドグマ オンライン』公式ベンチも外せません。これは前回のFury Xレビュー時には存在しなかったベンチなので、このテストのみFuryとGTX980だけで計測しています。プログラム側の制約により、解像度は1080pのみですが、画質は“最高品質”で測定しました。

RADEON R9 Fury

 3DMark等と同様にFuryの方がわずかに高スコアーが出ていますが、実際に目で見えるほどの性能差はありません。もっとも、GTX960+Core i7-4790Kの組み合わせでもスコアーは10141ポイント出るので、ベンチの負荷が足りず飽和している印象があります。ちなみにこのベンチで一番重い(fpsが落ちる)シーンは街のシーンですが、どちらのグラボを使っても最低30fps近辺まで下がります。このゲームに限ってはミドルクラスのグラボを使うのが正解のようです。

 最後にシステム全体の消費電力を『Watts Up? PRO』を用いて計測しました。アイドル時はシステム起動10分後を、高負荷時は3DMarkの“Fire Strikeデモ”の同一シーンにおける値です。

RADEON R9 Fury

 高負荷時の消費電力がFury Xに比べ大幅に減り、GTX 980 Tiをわずかに下回りました。性能ではFuryの方が下なのでワットパフォーマンスこそ第2世代Maxwellには及びませんが、従来のR9 290Xと比較すると圧倒的に下がりました。Fury Xと同様RADEONにもワットパフォーマンス改善の波が到来した、という点は大いに評価すべきでしょう。

 以上駆け足でFuryの性能チェックをしてきましたが、Fury Xよりもワットパフォーマンスに改善がみられたほか、空冷大型クーラーの採用により取り回しも格段に楽になりました。Fury Xは水冷ポンプの音も常時聞こえますが、『R9 FURY 4G HBM TRI-X』はそれに比べると格段に静かに使えます。状況にもよりますがGTX 980より微妙に速く、HBMの速さを体感できるシーンもいくつか見られました。

 しかし、最大の問題は価格。税抜き9万円切りとはいっても、消費税が入れば余裕で9万7000円越え。GTX 980の売れ筋OC版が7万6000円前後で買え、10万円出せばGTX 980 Tiのリファレンスモデルの安いものが買えてしまう現実の前では、Furyのコスパは決して良いとはいえません。Furyの北米想定価格が549ドルであることを考えると、まさに“為替マジック(おおよそ1ドル176円換算)”です。これだけ割高感が出てしまうと興味があってもユーザーは二の足を踏むだけ。「関係各方面の皆様もうちょっとお手柔らかに……」というメッセージで今回のレビューを〆させて頂きます。

■関連サイト
R9 FURY 4G HBM TRI-X製品ページ

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