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視聴率をぶっ飛ばせ テレビ視聴者解析に革命 MSイノベーションアワード2015

2015年07月01日 16時30分更新

 今年で8回目を迎えるMicrosoft Innovation Award 2015が2015年6月25日に開催。マイクロソフトのテクノロジー、ソリューションを活用した革新的で、独創的なソフト、サービスを選出して表彰するアワードだ。あらかじめ優秀賞に選ばれているスタートアップ企業がプレゼンを行ない、最優秀賞が選ばれる。

Microsoft Innovation Award 2015

 今回はあまりに優秀な応募が集まったため、優秀賞7社のほかに6社がテクノロジーエッジ賞を受賞し、計13社がサービスのプレゼンを行なった。すべてのプレゼンから、この日集まった観客の投票により、オーディエンス賞が選ばれる。優秀なプロダクトばかりで、熱狂の中でイベントは進んでいった。

テレビ視聴の質がわかる解析サービス

「テレビを科学する」

 最優秀賞はテレビ視聴者の“質”がわかる、リアルタイム動画解析サービス『TVI-“Identifier”』が受賞した。従来のテレビ視聴率では、テレビがついてさえいれば“視聴”となるため、テレビの前に人がいなくてもよかった。TVIはキネクトをもちいて、1秒ごとにテレビ視聴者の顔の表情を解析するため、必ず見ているか、見ていないかがわかってしまう。

Microsoft Innovation Award 2015
TVision Insights社の郡谷康士ソリューション責任者

 人体認知の技術で、しっかり見ているか、どう感じているかなどの感情分析を行なう。1時間の番組内でどの時間帯がもっとも集中して見られていたかなどを判定。得られたデータを番組制作や広告へ利用する。

Microsoft Innovation Award 2015

 これによりデジタルマーケティングをテレビの業界に持ち込むことが可能になる。たとえば集中して見られる時間帯とそうでない時間帯の広告料に差をつけるができる。視聴率に代わる破壊的イノベーション。今まで存在しなかった、質のデータはテレビ視聴に革命を起こすかもしれないと期待された。

プロユースの残像動画をアプリで実現

 優秀賞は7社、コンシューマー製品を中心に見ていこう。『Clipstro』は動画を撮影し、コマ送りのような残像画像を作成できるiOSに提供するスマートフォンアプリ。スポーツの練習、ゴルフのフォームチェックなど利用できる。ハイエンドのシステムはプロチームや有名大学などにしか導入が難しく、数千万円掛かってしまう。そこをどうにかできないかと開発された。

Microsoft Innovation Award 2015

 スポーツだけでなく、子どもや動物の撮影など、おもしろい利用もされているという。今後はプラットフォーム化を目指す。

ビッグデータで渋滞情報を作成

 すでに300万ダウンロードを突破しているスマホアプリ『渋滞ナビ』、ユーザーから提供される膨大な走行情報をもとに、リアルタイムの渋滞情報を作成し、目的地への最短ルートを作成する。

Microsoft Innovation Award 2015

 1日当たり2000万レコードという情報を分析、未来の予測もアプリ上で確認できる。この莫大な交通情報の蓄積を、渋滞以外のビジネスでも活用できるのでは、と評されていた。

サーバー負荷を90%削減する驚きの技術も

 オーディエンス賞はテクノロジーエッジ賞の中から、Mist Technologiesが選ばれた。「ユーザーの力でウェブを最適化し、未来を実現する」同社のサービス『MistCDN』は、ブラウザーだけで動作が可能なアクセス集中を緩和できる技術。ユーザーの各端末のブラウザー間でP2Pをもちいてコンテンツをシェアすることで、サーバー負荷を最大で90%も削減できる。

Microsoft Innovation Award 2015

 もうひとつのサービス『MistPrefetch』はウェブサイトの表示をJAVAスクリプト1行追加することで最適化が可能。統計的アルゴリズムと、ユーザー行動をモニタリングして、次にアクセスするコンテンツを先読み予測できる。

Microsoft Innovation Award 2015

 社名のミストは、クラウドを超えたいという思いから名づけられた。

未来的スマートシューズやお手軽ARアプリ

 そのほか、テクノロジーエッジ賞に選ばれた『Orphe(オルフェ)』は、IoT×アートをミッションにLEDで光るスマートシューズを開発。

Microsoft Innovation Award 2015

 ブレイクダンスの技のひとつで両足を開き何度も回転する“ウィンドミル”の回数を計測するシステムを開発。速さと回数を競い、点数がたまっていくとどんどん光り方が派手になっていく。

Microsoft Innovation Award 2015

 『Figmy(フィグミー)』はスマホでお手軽にARができるアプリ。好きなキャラクターを自由にアップロード、ダウンロードできるプラットフォーム。Microsoft HoloLens (ホロレンズ)を使って、アニメ『電脳コイル』の世界実現を目指す。

Microsoft Innovation Award 2015

 3DCGをアップロードして誰でも閲覧できるプラットフォーム『jThird』。閲覧中の3Dコンテンツはリアルタイムにキャプチャーが可能。データは3Dプリンター用に出力できる。

Microsoft Innovation Award 2015

 ウェブの3DCGコンテンツからフィギュアが届く未来がくると、開発を手がけるjThree松田光秀代表は、5年後には当たり前になっている次世代コンテンツプラットフォームだと自信を見せた。

Microsoft Innovation Award 2015

■最優秀賞
 『TVI-“Identifier”』 テレビの視聴の“質”を測定
■オーディエンス賞
 『MistCDN / MistPrefetch』 ウェブブラウザーのレスポンスを高速化
■優秀賞
 『AltPaper』 アンケートなど紙のデータ集計を効率化する
 『画像解析できるマン』 画像が何かを解析
 『BrandPit Analytics』  SNSの写真から製品情報を収集するマーケティングツール
 『Clipstro』 動画撮影で残像画像を自動生成するアプリ
 『FG-サイネージ』 店内にいる顧客属性をリアルタイムで判定
 『渋滞ナビ』 300万ダウンロードを突破した渋滞情報アプリ
■テクノロジーエッジ賞
 『Orphe』 光るスマートシューズ
 『Figmy』 3DフィギュアのARプラットフォーム
 『jThird』 web3Dのプラットフォーム
 『Twinface』 手術後の顔の表情を確認
 『E2D3』 エクセルのグラフに動的な描画表現を追加する拡張機能

 リアルタイム解析や画像解析などが目立った今回。Microsoft Innovation Awardは、表彰されると縁起がいいと言われる。2014年はde:code内で開催され、市販のインクジェットプリンターで電子回路をプリントできる『AgIC』が受賞。その後、活躍の幅を大きく広げた。2013年に受賞した、しくみデザインの中村代表は、2015年のCESでインテルの基調講演に登壇し、自社サービス『KAGURA』のデモをし、UI/UXの今後を担うイノベーターとして紹介された。受賞したプロダクトの数々の今後も要注目だ。

■関連サイト
Microsoft Innovation Award

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