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モンスト:木村P「ユニークだと思ってもらえるものをつくれたら当たる」(中編):召喚★アプリ神

2015年06月20日 13時00分更新

 話題のスマホゲームのクリエイターとスクウェア・エニックス安藤武博氏が対談する連載『召喚★アプリ神(ゴッド)』。週刊アスキー本誌で掲載しきれなかったインタビュー内容を3回に分けて掲載します。

 第12回はミクシィ『モンスターストライク』の木村弘毅さんを召喚!

『モンスターストライク』

モンスターストライク:召喚★アプリ神
↑ボール状のモンスターを引っ張って敵にぶつける、というシンプルな仕組みながら歯ごたえのある難易度、そして近くの友達と最大4人でワイワイ楽しめるマルチプレイがウリ。“ゴジラ”や“ドラえもん”といった有名作品とのコラボでも話題を呼んでいる。
モンスターストライク:召喚★アプリ神
↑ミクシィ木村弘毅氏。

■ヒット作のつくり方とピンチに勝つための考え方
安藤:木村さん、何で売れたんですかってよく聞かれるでしょ? 後付けならいくらでも言えるけど本当のところどう思う?

木村:実は勝算はあった。世の中にないもので、「これユニークだよね」って思ってもらえるものをつくれたら、当たったときにバーンといく。ソーシャルネットワーキングサービスが世の中にないときに、mixiというSNSを出したりね。

安藤:あれは新しかったね。

木村:スマホを持ち寄ってワイワイ遊ぶ文化がないときに、それを持ち込んだらいくんじゃないか、当たれば大きく跳ねるんじゃないかって思っていた。三振かホームランか、みたいなところはあるけどね。

安藤:なかなか当たらないのがゲームだけど、木村さんみたいにつくれば当たったときにものすごくヒットするのかもね。何かのまねをしたり、どこかで体験したものを切り取るんじゃなくて、自分たちが提示するものが新しいかどうかっていうのが大事だし、木村さんも昔からそういう意識でやっているんだね。

木村:うん。新しくて今までにないものだから、社内で承認を通すのはしんどいけどね(笑)。

安藤:そうだよね、今までにないものだから数字が見えない。

木村:僕は気持ちが弱いタイプなので、明日死ぬかもしれない、だったら後悔しないように言いたいことを言おうって思ってやっているよ。

安藤:毎回明日死ぬつもりで、「やってやるぜ!」って思いながら暗やみに向かってジャンプしているんだね。クリント・イーストウッドが毎回遺作のつもりで映画をつくって名作をバンバン出すという話をきいたことがあるけど、そんな感じだね!これが最後の作品だと思うと、アイディアやエネルギーが出てくるから。

木村:そうかもね。

安藤:死ぬ気になるって、ゲーム制作にも大事だね。すごく頑張るようになるし、だからさっき言ったような、ピンチの時にヒットが出やすい。ピンチじゃない時にどう自分を追い込むかというのは結構難しいんだけど、木村さんの考え方と、自分のコントロールの仕方はとてもいいと思う。

木村:あとは、どうせ死ぬから恥をかいてもいいや、みたいな。失敗すれば絶対に笑われるけど、それを怖がってはいられないしね。

安藤:それも面白いな。僕が「ピンチの時にヒット作が出る」理論に初めて気づいたのは大学の時で、危なくなるとヒット作を出す、その繰り返しで盛り返しているゲームメーカーがあって。その会社をよく見ていると、ヤバくなったときに救世主のようにヒット作が現れるんだよ。すごく面白いなと思っていて、ピンチを体験した木村さんがそれをまた証明したというのは、興味深いし面白いよね。

モンスターストライク:召喚★アプリ神
↑スクウェア・エニックス安藤武博氏。

■モンストを手放す!? 安藤氏が考える次回作へのチャレンジの仕方
安藤:「明日死ぬかもしれないから力を尽くす」という考え方ややり方は、モンストのような大きな成功体験があったときに、次のチャレンジに向けてすごく活きると思う。ヒットを出したあとに、また売りたい、面白いゲームをつくりたい、というときにね。
 僕がいろんな人と話してたどりついたのは、ヒット作を徹底的に手放して行くやり方はすごくいいな、ということ。気づかせてくれたのはアソビズムの森山さんで、彼は『ドラゴンリーグ』をつくった後に、それを手放して『ドラゴンポーカー』をつくった。ドラゴンポーカーがヒットしたらまた手放して、今度は『城とドラゴン』をつくった。意識してそうやっているんだよね。

木村:そうなんだ。

安藤:その3つのタイトルって森山さんがいないと生まれていないものだから、あがめられようと思ったら簡単なんだけど、決して森山さんはそんなポジションにはいない。若いスタッフが反論したり、噛みついたりできる、そういう空気をあえてつくっているんだって。手放すと同時に、自分が裸の王様にならないような仕組みを作っているから、スマホゲームで連続して新作をヒットさせている。それってすごくいいやり方だなと思うんだ。

木村:確かにね。

安藤:実は僕は最近、森山さんの動き方にも影響を受けて部長をやめたんだ。儲かっているタイトルも優秀な部下も全部ゆずって、何もない状態をつくった。サラリーマンとして組織にかかわっていると、いつのまにかポジションを前提に考えている自分がいてヤバイと思った。アイデアに対してお金をもらうために入社した奴が、ポジションを考えて仕事するなんて最悪でしょう?こうなると「新しいものをつくってびっくりさせてやろう」とか、「ワクワクさせてやろう」という、自分がもともと持っていたみずみずしい気持ちに対して、自分の過去作も含めて、全てがノイズになるような気がした。
 それで、全部手放してしまった方がいいんじゃないかなって。役職も、今までの作品も全部手放した。そうするとなんも無いから「何かしないとヤバイ」と本気で思うようになる。それと「明日死ぬ気でやっている」というのは、すごく似ているような気がする。

木村:僕が手放したら……「ダメです!」って言われそう(笑)。

安藤:もちろん、どちらでもいいんだよ。ずっとモンストを手掛けていくか否かという問題で、それを選択する人生もいいと思う。堀井雄二さんがそうでしょう。『ドラゴンクエスト(以下、ドラクエ)』はパッケージゲームだから、毎回全然違う遊びになるけど、ドラクエがヒットしていなかったら堀井さんはもっといろんな作品を生み出していただろうし、「ドラクエと添い遂げた」という言い方もできる。そういう選択もあるけど、木村さんはどっちだろう?

木村:やっぱり、新しいこともやりたいよね。

安藤:現実として難しいけど、手放した方がいいかもね。新しいことをやるためにはね。

※この対談は2015年4月に行なわれたものです。

■関連サイト
モンスターストライク

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(C)mixi

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