話題のスマホゲームのクリエイターとスクウェア・エニックス安藤武博氏が対談する連載『召喚★アプリ神(ゴッド)』。週刊アスキー本誌で掲載しきれなかったインタビュー内容を3回に分けて掲載します。
第11回はアソビズム『城とドラゴン』の森山尋さんを召喚!
なお、第12回のゲストはミクシィ『モンスターストライク』の木村弘毅さん。追って掲載いたしますのでそちらもよろしくお願いします。
『城とドラゴン』
↑アソビズム森山尋氏(右)、スクウェア・エニックス安藤武博氏(左)。 |
■森山氏のようなゲームクリエイターになるには?
安藤:森山さんは宮本さんや、堀井さんのようなゲームクリエイターの洗礼をリアルタイムで浴びた世代ですよね。そういう洗礼を受けずに、これからゲーム業界に入ってくる人たちが森山さんのようなクリエイターになるには、どうしたらいいと思いますか?
森山:僕が任天堂さんや前の師匠から学んだのは、「自分で考えろ」ということです。自分のつくり方とかオリジナリティーというとちょっと偉そうですけど、つくり方や哲学も含めて自分の道を探すことだと思います。
たとえば野球選手もプロになると、投手なら投げ方を研究して自分だけの新たなフォームを開発しようとしますよね。
安藤:イチローは振り子打法を矯正されようとしていたし、野茂はトルネード投法を矯正されようとしていましたが、矯正しなくていいと仰木さんが言ったから、あれだけの選手になったわけですしね。
森山:そうですね。クリエイターを育てられる人がいれば、その人がいちばんいい部分を開花させることができるかもしれません。もしかしたらそれがプロデューサーなのかもしれないですね。僕はプロデューサーというよりは完全にディレクターなので、教えたり、育てたりはできないですね。
安藤:たとえば自分だけのものをつくるときに、似たようなゲームを参考にする、というやり方はおそらくしないですよね。
森山:最初は必要だと思いますよ。でも学んでいくうちに、やっぱり自分だけのゲームをつくりたくなると思います。その時に自分だけのつくり方と自分だけの哲学でつくることができて、かつ「売れなくていい」と言わないことです。売らないとダメだと僕は思っています。売れなくていいから好きなことをやるとなると、アーティストになると思うんです。僕はアーティストではなく、エンターテイナーでいたいんです。
安藤:ちゃんとビジネスとしてお客さんの支持を得ていないとダメですよね。会社員でいる以上、アーティストはありえないですし。
森山:それが許されるとしたらすごい人ですけどね。この業界にも何人かいると思いますが、その人たちは本当にすごいし、うらやましいと思います。
安藤:でもなかなか難しいですよね、その領域になるのはね。
森山:だから僕は、自分が受け入れられないとイヤなんですよ。怖いんです。
安藤:僕が知る中でのいわゆるアーティストも、やはりお客さんがどう思っているかを人一倍気にしているような気がします。俺のつくった世界を体験しろ、と押しつける人はあまりいないですね。
森山:たぶんみんな怖がりだと思うんですよ。やってもやっても不安で不安でしょうがなくて、ずうっと不安で不安で寝てもさめても不安で。そういう人が最後まで面白くしようと必死にもがくので、結果ちょっとだけ面白くなることもあるかもしれません。自信満々で、つくったものを一切変えないという人も世の中にはいるのかもしれませんが、そうじゃない人の方が少しでも面白いものをつくれるのかなと思います。
安藤:森山さんはどうですか?
森山:僕はめちゃめちゃ不安です、いつでも(笑)。今も不安です。明日飽きられちゃうんじゃないかとか、明後日飽きられてしまうんじゃないかとか、明後日少しゲームを良くしても、1時間後にもう飽きられちゃうんじゃないかと思っています。『ドラゴンリーグ』も『ドラゴンポーカー』もずうっとそういう感じで毎日やっています。もう飽きられちゃう、もう飽きられちゃう、みたいな(笑)。
↑砦を占拠できる剣士とリーダー以外のキャラは、対戦始時にランダムで決定される。運の要素を取り入れたことで、強いユーザーに弱いユーザーが勝つことも不可能ではない。 |
■着実にユーザーを増やす城ドラの今後の展開
安藤:城ドラは2月末に登録ユーザー数70万を達成しました。手応えはいかがですか?(5月25日に170万人を突破)
森山:ログインも多いですし、アクティブがとにかくすごい勢いですね。ありがたいことです。
安藤:ガチャもなく、お金をかけなくてもちゃんと遊べるゲームが安定してランキングにいるというのは、むしろ脅威ですよ。
森山:はじめは30位くらいいきましたけど、それはできすぎで、100位以内ならいいと思っています。僕は売れない時代が長かったので、売れたい思いがかなり強いんです。いいものをつくりたい思いも強くて、いいものをつくって売れないとイヤなんです、絶対(笑)。
安藤:僕もよく部下に意気込みを聞くんですけど、「1位を獲る」とハッキリ言い切る部下はなかなか出てこないんです。実はそれがあまりヒットが出ない要因かなと思うこともあります。強く売るという気持ち、「売りたい」ではなく「売る!」と言い切るのは大事ですよね。
森山:ちゃんと売ってお給料を払いたいという思いがあって、今はなんとか払えているので、これからは「ウケたい」ですね。面白い! と言ってくれる人を増やしたいです。
安藤:ウケたい、というのは森山さんらしいですよね。城ドラは始まったばかりですが、今後はどんな展開をお考えですか? 対戦が熱いので、リアルの大会が盛り上がりそうですね。
森山:やりたいですね。将棋の羽生さんのような、名人が出てきてほしいんですよ。
安藤:新しい戦法がつくり出されて、そのプレイヤーの名前がついたりしたら面白いですね。
森山:そうしましょう(笑)。そういうリアルイベントやトーナメントをやるのが城ドラの本当の目標なので、実現できるように盛り上げたいですね。
安藤:『ドラゴンリーグ』の頃から試合をシェアして盛り上がっていましたし、アソビズムさんが大会をやりたいというのはリアリティーがありますよね。もっともっと対戦を楽しんでほしい、というわけですね。
森山:3対3の対戦もありますけど、やっぱり1対1で勝つと嬉しいし負けるとへこみますね。僕も今3連敗ぐらいしているのでもうやめようかなと(笑)。
安藤:つくった人が必ずしも最強とは限らないのがゲームデザインの面白いところですよね。
森山:上手い人たちは本当に上手いですね。ランダムで出たキャラでどう戦うかを思い描いて、状況に合わせて刻々と作戦を変えますし、ほとんどミスなく動かしている。城ドラは僕の中で、勝手にアクション将棋と呼んでいるんですよ。将棋のような頭の回転と、キャラを置く反射神経が必要ですから。
安藤:将棋なんですね。僕は麻雀だと思っていました。
森山:麻雀でつくったんですけど、できあがったらアクション将棋になりました。キャラの特性を熟知したり、局面局面で捨てる場所と取る場所を瞬間的に把握するゲームなんです。
安藤:ランダムでキャラが決まるところは麻雀ですが、いざ対戦が始まると確かに将棋ですね。
森山:昔、『ストリートファイターⅡ』でよく遊んでいて、連続技は出せませんが読み合いが好きだったんです。テクニックがなくても読み合いが楽しめるということで、対戦ゲームの城ドラのイメージができたんです。
安藤:そういった意味ではすごいゲームシステムを着地させましたよね。麻雀を超えたいと、前から森山さんはおっしゃっていましたよね。
森山:超えられないですね(笑)。ただの夢で、目標です。
安藤:麻雀は長い時間をかけて多くの人間の命を吸い取りながらゲームバランスが調整されたゲームですからね。
森山:盤面が海になるわけでもなく砂になるわけでもなく、宇宙になるわけでもないじゃないですか。将棋でも同じ盤面で毎回状況が変わって、それに対応しなければいけない。麻雀もツモが悪かったら悪いなりに考える。いいならいいなりに考える。でもいいと油断が生まれる。城ドラもちょっとでも油断すると負けるんです。なので常に集中力を高めてやらないといけないゲームなんですよね。
安藤:その達人どうしの全国大会が催されて、試合がシェアされるとなると興奮しますよね。超熱狂すると思いますよ。では最後に、今後城ドラをどんなふうに発展させていきたいか、イメージがありましたら教えてください。
森山:実は今の城ドラは、完成度30%ぐらいなんですよ。十分遊べると思ったので出しましたけど、これから面白くしていきたい。僕の中に最終形態のイメージがあって、それに向かってひとつずつ丁寧にやっていけば、はじめからやっている人も後から入ってきた人もいつまでも飽きないものになると思います。今はディフェンス系のゲームと似ていると言われますけど、これからまったく異質のものになっていくので、楽しみにしていてくださいね。
※この対談は2015年3月に行なわれたものです。
■関連サイト
・城とドラゴン
・城とドラゴン 公式Twitter
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