「世界で戦えるカンパニーをめざして立ち上げた」
ookamiの尾形太陽代表は1989年生まれ、現在25歳の若き起業家だ。スポーツニュースをベースとしたコミュニティーサービス『Player』を開発・運営している。昨年10月にベータ版をリリースし、1000人単位でユーザーを伸ばしている。
インターネットのスポーツ情報は、どうしてこんなに見づらいのか。
アプリ開発のきっかけは、尾形代表自身が抱いてたそんな不満にあった。子供の頃からサッカー少年、根っからのスポーツ好き。学生時代もスマホを使っていたが、自分が求めるスポーツ情報がうまくまとまっていないのが不満だった。
「情報が乱立し、整理されていない。スポーツのニュース、動画、コラムはあっても好きな情報が入手できなかった。サッカー、野球、バスケ……さまざまな情報がインターネット中にあふれて、情報の価値が担保できない状態だった」
ニュースや解説記事は玉石混交。その中から、いい記事を見分ける方法がない。たとえば為末大選手、北島幸介選手のようなトップアスリートが見ているニュースを知りたい。影響力が高い人びとがニュースをピックアップするしくみを作れないか。
「梅田優祐さん(ニュースアプリ『NewsPicks』運営元ユーザベース代表)に話にいったら、『ユーザベースは世界一の経済メディアをつくる。スポーツ領域はookamiが頑張れ』と言っていただいた。それ以降、要所要所でご支援をいただいている」
その思想に為末さんも共感し、アドバイザーとして参加している。
写真中央が為末大さん、右が尾形太陽代表 |
●スマホにこだわる スポーツは"今"だ
こだわったのはスマートフォンだ。
「新聞やテレビもあるが、スポーツはオンタイム、"今"にこそ価値がある。『昨日の情報』じゃ意味がない。オンタイムの情報はスマホにあるべきだと考えた」
競合ニュースサイトよりもすばやく、現在進行形で情報を共有したい。もう1つはオフラインのコミュニティーだ。ローカルコミュニティーをつくり、オンラインの情報交流を活性化する。現在、年2回のペースでスポーツ系のイベントを開催している。
ビジネスモデルは広告と物販。ただのメディアで終わるつもりはない。
「スポーツ界はメディアも数千億円規模だが、競技(の人気)に依存してしまう。野球にはどこも勝てない。しかし、モノの市場をとりこむことで規模は拡大できる。スポーツグッズ市場規模は日本だけでも2兆円だが、いまだeコマースにシフトしていない」
尾形代表がめざすのは、スポーツ界で世界一のビジネスカンパニー。企業でいえば時価総額8兆円企業のナイキだ。
「ナイキももともとは靴の流通をしていた。そこからオリジナルメーカーを作って成功させた。ナイキが成功したのは時流をつかみ、アスリートによる付加価値を付けられたからだ。それをスマートフォン、インターネットで再現したい」
マイケル・ジョーダンの名前をとった『エア・ジョーダン』のような大ヒット製品はアスリートとのグリップがあって成功する。今スポーツの“流通”を考えるなら、インターネットとコミュニティーの存在は欠かせないと考える。
●初めから世界を視野に入れなければ
まだ始まったばかりのサービスだが、海外展開もまなざしの先にある。
狙いは東南アジアとインドだ。東南アジアではサッカー人気が高く、とくにプレミアリーグが目玉コンテンツとなる。
「中国・米国は大きなメディアが入りこんでおり、今からの参入は難しいが、新興国はスポーツの成長市場。余暇ができればスポーツを観る。1年以内に着手するつもりだ。海外もコンテンツに大きな違いはない。まずは出してみて、反応を見てローカライズしていきたい」
日本で規模を大きくしてからではダメなのかたずねると、首を横に振った。
「新しいメディアはどんどん出てきている。グローバルな新しいスタートアップが出てきている。1年で市場は劇的に変わる。動きはじめるタイミングで出ないといけない。日本で一番をとってからでは遅い。初めから世界を狙っていかなければ」
スポーツに言語の壁はない。成長スピードがとりわけ速いニュースアプリの世界、ookamiは誰にも追いつかれないスピードで駆け抜けてやろうと意気込んでいる。
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