5月13日、ドコモの夏モデル発表会が開催されました。各モデルともさまざまな新機能を搭載していますが、今回ひっそりと目立っていたのが“TD-LTE”へ対応したモデルの存在です。我々が普段一般的に呼んでいるLTEは“FDD-LTE”方式。これに対し中国やインド、北米などで一部キャリアが採用しているのがもうひとつのLTEであるTD-LTE方式です。
↑Galaxy S6シリーズは両モデルともFDD-LTE両対応。 |
今回の新製品発表会前にメーカーとして製品発表会を設け、すでに発売が始まっているサムスンの『Galaxy S6 edge SC-04G』と『Galaxy S6 SC-05G』の両モデルは、FDD-LTEとTD-LTEの両対応。同社は中国でもGalaxy S6シリーズを販売しており、TD-LTE対応モデルは海外でも販売がスタートしています。
↑富士通もTD-LTE対応のF-04Gを発表。 |
日本メーカーからもTD-LTE対応端末が登場しました。富士通の『ARROWS NX F-04G』はFDD-LTEに加えTD-LTEにも対応したデュアルLTEスマホ。世界初の虹彩認証対応が最大の特徴の本モデルですが、海外のTD-LTEエリアでも高速通信可能な実力派なのです。
↑世界で52のキャリアがTD-LTEを開始。 |
では、TD-LTEは海外ではどれくらいの地域で利用されているのでしょうか? TD-LTEの業界団体であるGTI(Global TD-LTE Initiative)によると、2014年末時点で52のキャリアがTD-LTEの商用サービスを提供中です。アメリカやロシア、中国でも採用されているので世界地図をみるとアフリカ以外のほぼ全世界で利用されていることがわかります。なお、日本のAXGP(SoftBank 4G)、WiMAX2+も海外の展示会ではTD-LTEとして紹介されています。
↑TD-LTEを強力にプッシュするのはあの国。 |
全世界に広がっているTD-LTE、中でも中国は普及に大きな力を入れています。中国の3キャリア、チャイナモバイル(中国移動)、チャイナユニコム(中国聯通)、チャイナテレコム(中国電信)の3社すべてがTD-LTEの免許を受け、2014年末から順次サービスを開始しています。なお、チャイナユニコムとチャイナモバイルはFDD-LTEの免許も受け、2方式を合わせて提供しています。
↑チャイナモバイルは1億4000万契約。 |
世界最大の携帯電話加入者数を誇るチャイナモバイルはTD-LTEを強力に推進中。2015年3月末のTD-LTE加入者数は1億4308万で日本の人口を超えています。日本でサービスの始まっているVoLTEも年内開始予定で、サービス内容は先進国と変わらないものになろうとしています。
↑国内出荷の9割がLTEスマホ。 |
チャイナモバイルは新規のTD-LTE加入者数を毎月100万人以上集めています。そのおかげもあってか、中国国内の全端末出荷数に占めるLTE端末の割合は、2015年4月時点で87%とほぼ9割に迫る勢いで伸びています。中国でも国内販売端末全てがLTEスマホ、なんて時代がもうすぐやってこようとしているのです。
↑TDとFDD両対応製品が多い。 |
チャイナモバイルがTD-LTEを推進しているとはいえ、端末は国外でも利用できるようにとFDD-LTEも搭載した製品も増えています。このふたつのLTE方式に加え、“W-CDMA”、中国独自3Gの“TD-SCDMA”、そして“GSM”の合わせて5モード対応スマホを各社が投入。一部の製品はそのままFDD-LTE方式を採用する海外キャリアからも販売されています。
↑ソニーやサムスン、HTCなどもTD-LTEスマホを販売 |
TD-LTE対応のスマホは中国メーカーだけが出しているのではありません。大手メーカーからもTD-LTEとFDD-LTEの両方式対応スマートフォンが多数販売されています。日本でも製品を販売するサムスン電子はもちろんのこと、ソニー、HTC、ノキア/マイクロソフトなどの大手メーカーも中国で製品を販売中なのです。ですので、TD-LTEにも対応した中国ローミング利用可能なXperia Z3やZ4をソニーが日本で追加販売する、なんてことも理論上は可能なんですね。
↑全世界でWiMAXからTD-LTEへの移行が進む。 |
中国はゼロからTD-LTEの導入を進めていますが、アメリカではWiMAXキャリアがTD-LTEへ通信方式を変えてサービスの展開を広げています。日本でもUQのWiMAX2+は実質的にTD-LTEですからね。WiMAXからTD-LTEへの移行はロシアなどでも進めているところで、いずれ世界中のWiMAXキャリアはTD-LTEへすべてが鞍替えすることになるでしょう。日本で身近なところでは、台湾が数年内にWiMAXからTD-LTEに移行する予定です。
↑インドもTD/FDD-LTEのデュアル方式を採用。 |
中国に次いでTD-LTEの伸びが期待されているインドは、2015年からFDD-LTE方式の採用も始まっています。そのため中国のチャイナユニコムなどと同様に、2方式を同時にサービスするキャリアが増えそうです。端末は前述したようにTD-LTE、またはTD-LTE/FDD-LTE両対応の製品がすでに各社から登場しているのでキャリア側もスムーズな導入が可能です。
↑TD-LTEにも注目しよう。 |
TD-LTEと聞くとなんとなく“中国の規格”と思いがちですが、TD-LTEそのものは3GPPで規格が制定されたグローバルな通信方式です。AXGPもWiMAX2もTD-LTE互換ですし、TD-LTEの採用は全世界に広がっています。最近何かと話題なシャオミなど中国メーカーもすでに3Gのみ対応のスマートフォンは開発しておらず、TD-LTEまたはTD-LTE/FDD-LTE両対応製品のみを開発していますから、いずれ日本のAXGPやWiMAX2+対応品を出してくるかもしれませんよ。
山根康宏さんのオフィシャルサイト
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