サムスンが4月8日、『Galaxy S6』と『Galaxy S6 edge』を国内向けに発表しました。ここで“SIM ロック解除”という点で注目を集めたのが、au版の存在です。
というのも、2015年の夏モデルは総務省が推進する“SIMロック解除の義務化”の対象となるため、これまでSIMロック解除を提供してこなかったKDDIや、一部提供にとどまっていたソフトバンクの対応に注目が集まっているのです。
サムスンはGalaxy S6とS6 edgeを日本国内向けに発表。キャリアの夏モデル発表会に先駆けて実機を公開したことでも話題になった。 |
サムスンの発表イベントにビデオレターで登場したKDDIの田中孝司社長。Galaxy S6 edgeをすでに個人的にも使用していると語ったものの、SIMロック解除については言及しなかった。 |
■KDDIのSIMロック解除サービスは5月中に開始か
総務省はSIMロック解除の義務化について、2015年5月以降に発売する端末を対象としてきました。これを逆手に取って、「発売日は4月末、でも実際の入荷は今夏」といった対策に出るキャリアがあるのではないかと筆者は考えていました。
しかしKDDIは4月23日発売のGalaxy S6 edgeを含め、SIMロック解除サービスを5月中に提供する見込みとしています。
au版のGalaxy S6 edgeは、これまでのモデルと何が違うのでしょうか。サムスンによれば、技術的にSIMロックを解除するための仕組みを入れたとしています。逆にこの仕組みが入っていない従来端末については、SIMロック解除の対象外となりそうです。
au版Galaxy S6 edge。技術的にはSIMロック解除に対応可能としている。外観はドコモ版とほぼ同じだが、本体背面にauロゴを配置する。 |
気になるのは、Galaxy S6 edgeのSIMロックを解除して他キャリアのSIMカードを入れた場合、何が起きるのかという点です。KDDIはSIMロック解除サービスの提供開始後も、他キャリアでの運用を積極的にサポートしていく予定はないとしています。
au版Galaxy S6 edgeのWebサイト。いまのところ紙のカタログを含め、SIMロック解除についての言及は特にない。 |
■MVNOのSIMで“即時格安運用”とはいかない可能性も
総務省はSIMロック解除を義務化する目的として、MVNOのSIMカードを促進することで、毎月の携帯電話料金を引き下げることを狙っています。しかし、そのためにはSIMロックの解除だけでなく、キャリアとの契約を解除する必要があります。
しかしNTTドコモは一部機種を対象に、2月20日から4月30日まで“端末購入サポート”キャンペーンを展開しています。これは6ヵ月間の継続利用を条件に端末代金を割り引くというもので、短期解約を防ぐ狙いがあるとみられます。
ソフトバンクも同様に、Xperia Z3などの機種について、1ヵ月目で解約すると4万5540 円の解除料が発生する“一括購入割引”を導入しました。
すでに米国では、“早期解約者に最大350ドル(約4万2200円)の解約料を課し、継続利用により解約料を毎月引き下げていく”という仕組みが定着しつつあります。KDDIはこういった施策を採り入れていないものの、SIMロック解除サービスに提供に伴い、今後の動向に注目したいところです。
これに対して、米国では、高額な解約料を肩代わりすることで他キャリアのユーザーを取り込むというキャンペーンが展開されています。今後、日本のキャリア間でも似たような競争が起きる可能性はあるでしょう。
ただ、そういったキャンペーンがないMVNOへの移行については、解約コストが最小となる 6~12ヵ月後を待つのが合理的です。これでは総務省の目論見は成功するどころか、むしろ“やぶ蛇”だったのではないかと思えるほどです。
■今後のスマホはキャリアの囲い込みとSIMフリーに二極化する?
もちろんSIMロック解除の義務化により、海外旅行時に現地の格安SIMカードを使うことが容易になります。また、SIMカード目当てに購入した端末を中古屋に売るのではなく、MVNOのSIMカードを入れて2台持ちで運用する、といった柔軟性も生まれるでしょう。
しかしドコモやソフトバンクの動きを見ていると、SIMロックの有無に関係なく、同じキャリアで使い続けるほうがお得になる方向に囲い込みは強化されそうです。同じキャリアを使い続けるか、それとも最初からSIMフリー端末を購入するか。今後のスマートフォン運用は、二極化していくのではないでしょうか。
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