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血のにじむような修業で生まれた『戦国炎舞 -KIZNA-』(前編):召喚★アプリ神

2015年03月13日 18時00分更新

 話題のスマホゲームのクリエイターとスクウェア・エニックス安藤武博氏が対談する連載『召喚★アプリ神(ゴッド)』。週刊アスキー本誌で掲載しきれなかったインタビュー内容を3回に分けて掲載します。

 第9回はサムザップ『戦国炎舞 -KIZNA-』の代表取締役 桑田栄顕さんを召喚!(前編中編後編

 なお、第10回のゲストはバンダイナムコゲームス『ドリフトスピリッツ』の中西俊之さんと門田研照さん。追って掲載いたしますのでそちらもよろしくお願いします。

『戦国炎舞 -KIZNA-』

召喚★アプリ神
召喚★アプリ神
↑サムザップ 代表取締役 桑田栄顕氏。

■ グループ企業での血のにじむような修行がヒットにつながった

安藤武博(以下、安藤):
今回はセールスランキングの常連『戦国炎舞 -KIZNA-(以下、炎舞)』をつくられた、業界屈指のイケメン・桑田さんを召喚させていただきました。実はこの対談の前夜に飲み屋でお会いしているんですよね。

桑田栄顕(以下、桑田):はい。昨夜すでにたくさんお話をさせていただきました。楽しかったです(笑)。

安藤:桑田さんは新卒でサイバーエージェントに入られて広告の営業をし、4年ぐらい前にゲームづくりを学びに同じグループ企業のCygamesへ修行に行かれた。そこで手がけられたのがモバゲーで配信されている『聖闘士聖矢 ギャラクシーカードバトル(以下、聖矢)』なんですよね。

桑田:実はCygamesの前に、サムザップで1~2年間ほどゲームの立ち上げをやっていたんです。独学で自己流だったせいか、なかなか大きなものがつくれなかったんですが、Cygamesが『神撃のバハムート』をヒットさせたタイミングで修行をしにいきました。

安藤:いってみたら、Cygamesの代表取締役でありヒットメーカーでもある渡邊耕一さんがドーンと待ち構えていたと。渡邊さんのもとで、どんなことを修行したんですか?

桑田:いろいろあるんですけど、クオリティーの高いものをつくれば売れるということを感覚ではわかりつつも、追及できていなかったんです。渡邊さんはそこを徹底して追及する人で、その過程や行動を目の前で見せられた時は衝撃でしたね。

安藤:渡邊さんはディテールにすごくこだわりますものね。

桑田:僕は世代が違うので、聖矢の原作を読んでいなかったんです。なので、とにかくアニメとマンガを全部見ろ、聖矢が生まれるまでのルーツがあるから車田正美先生の作品も全部読んで理解しろと言われました。

安藤:なるほど。読み込み方の話にもなったんじゃないですか?

桑田:はい。マンガはもちろん、百何話もあるDVDも2~3日で見ろと言われまして。徹夜で見ていたメンバーもいたんですが、そのスピードだと全然頭に入らないんです(笑)。

安藤:それはすごい。まさに修行、いや荒行ですね(笑)。

桑田:たぶん渡邊さんは、そのスピードでもわかるんですよ。そこが僕らとの違いなんだなと思いました。でもそのあとゲームをつくるときに、このシーンはこう、このキャラクターの技はこうと、ちゃんと聖矢の良さを出せるようになったんです。たぶんあの読み込みがなかったら、表面だけなでたような内容になっていて、原作ファンの方に納得していただけなかったと思います。

安藤:そのお話はすごくわかります。ギリシャ神話にも戦国時代にも、それぞれに熱狂的ファンがいる。舞台が戦国時代になっても聖矢での体験があるから、お客様の心に響く武将の立て方やつくり込みができるようになったわけですね。

桑田:本当に、あの時の体験は今も活きていると思います。

安藤:聖矢の場合はアニメやマンガを見てつくったということですが、戦国時代に関してはどんなアプローチをされたんですか?

桑田:いろんなアプローチがありましたが、やっぱり有名なマンガを読みました。『センゴク』も読みましたし、『バガボンド』や『信長協奏曲』も、戦国とついているものはバーッと。

安藤:炎舞の魅力は、武将のキャラが1枚の絵の中でしっかり立っていること。しかも21世紀に入ってから、ゲームやアニメやマンガが好きな人の戦国武将のイメージなんですよね。2000年代に入るまで、特に『戦国BASARA』が出るまでは戦国時代は男の子のものでしたが、今は女子のものにもなりつつある。聖矢も少年誌の連載でしたが、女の子も熱狂した作品で同人誌も盛り上がった。そういう共通点が聖矢と戦国武将にはあって、両者の魅力を桑田さんとスタッフの方が上手く引き出してヒットに結びつけた。これは、すごくうなずけますね。
 
 他にゲームづくりにおいてためになった修行時代のエピソードや、渡邊さんにたたき込まれたことはありますか?

桑田:ヒット作は1日ではつくれない、というお話をよくしていただきました。細かいものをきちんと積み重ねていった先にヒットがある。ディテールへのこだわりを積み重ねていくと結果としてすごくいいものができる、と。
 こだわったものの1部分だけを見ても、なんでそんなところにだわる必要があるんだと思われることもあると思うんですが、それが積み重なっていけばこだわりの集大成ができ、ぱっと見たときに「これはすごい!」と思えるものになる。そのお話がいちばん印象に残っています。

召喚★アプリ神
↑仲間と連携して相手の連合を壊滅させる。スキルを使った攻撃や計略などを駆使して相手の連合を攻撃し、合戦Pを多く稼いだほうが勝利。

■ 過去作品からの流用にはつくり手としての“愛”がある

安藤:炎舞のカードには、史実には出てこない、独特の世界観を持つ武将もいますよね。いかにも最近の戦国ものだなという感じですが、最初から戦国武将のキャラを聖矢のように立てていこうとお考えだったんですか?

桑田:いえ、そこまでは考えていなかったんです。もともとモバゲーで配信している『戦国サーガ(以下、サーガ)』というゲームのイラストを使っていたこともあって、そこである程度の方向性は決まっていたんです。

安藤:そうか、炎舞ではサーガのイラストをそのまま使っていることもありますものね。

桑田:当然新しいものもつくっているんですけど、立ち上げのころに見栄えのするものをと、サーガからもってきていました。

安藤:面白いですよね、過去にあったゲームの素材をそのまま流用して、過去の作品よりもはるかにあててしまったんですから。そういったケースってあまりないと思うんですけど、ゲームクリエイターとしてはイチから描き起こしたほうがいいという気持ちもあったと思うんです。そこではやはり「過去の資産を生かせないか」という考えが勝ったんでしょうか?

桑田:まさにそうです、会社がピンチだったということもありまして(笑)。サーガが当たらなかったら今はないんですけど、当たったら当たったで、次にどうヒットをつくるかすごく悩んだんです。最終的に、今ある資産を使ってネイティブで出してみよう、と。

安藤:なるほど、そうだったんですね。

桑田:僕らはブラウザーでしかゲームをつくったことがなかったんですけど、ネイティブとブラウザーのユーザーは異なるんじゃないかと思いましたし、我々からみても炎舞はいいゲームでしたので、不安はありつつも思い切って出してみました。思ったより反発もなく、ツイッターとブログで少し書かれたくらいで、さほど話題にもなりませんでした。

安藤:流用されたイラストのクオリティーも大変高いですし、使い捨てにしてしまうのはもったいないですよね。毎回思うんですけど、ゲームの配信終了時に、累計でつくったカードを数えると、ゆうに千枚を越える。僕も複数のサービスを終了させてきて、それまでにつくったカードを合計すると、一万枚近くあるかもしれません。ソーシャルゲームのバブルの時に描かれたカードを全部並べて展覧会をやったら面白そうですね(笑)。

桑田:面白そうですね(笑)。

安藤:恐ろしい数になると思いますよ、こんなにすごいブームだったんだって。そこからまたいいものをピックアップして、新しい遊びを付け加えてあげれば、その絵やカードも蘇る。手抜きではなく、本来よかったものがまた蘇る、それってすごくいいかもしれません。

桑田:スクウェア・エニックスさんだと、常に新しいものを描き起こしていて、以前使用したものを他の作品で使うことはあまりないですよね。

安藤:ないですね。そこは良いところでもあるし、古いところでもあります。今のお話を聞いて思い出しました。実はイラストの再使用を画策したことがあるんですけど、当然新作は過去作を越えていかないといけない。そうなると、やっぱり新しいものを、ということになってしまうんです。

桑田:僕は「ズルいつくり方」と思われるのが不安でしたし、いまだにどちらが良いのかはわかっていません。ただ、聖矢をやっていた当時はカードゲームのバブルで、言い方は悪いですが使い捨てのカードが多かった。特攻系のような、特定のイベントの期間だけ活躍するという仕組みがすごく嫌だったんです。イラストレーターさんが時間をかけて描いたものもあるわけですし、お客様だってお金を使ってくださっている。それを使い捨てにしてしまうのは嫌ですし、そうではないつくり方をしたいというのがいまだに頭の中にあって、いいものであれば再利用というか、うまく使っていきたいなと思います。

安藤:楽をしようとしているのではなくて、つくりあげた良い絵はちゃんと使いたいという桑田さんの言葉には、とても思いやりがあるし、作品に対して愛情がありますよね。

召喚★アプリ神
↑スクウェア・エニックス安藤武博氏。

※この対談は2015年1月に行なわれたものです。

■関連サイト
戦国炎舞 -KIZNA-公式サイト

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