アーサー・C・クラークいわく、充分に発達した科学技術は魔法と見分けがつかない。科学技術は魔法のように不可能を可能にする。何もないところから飲料水を出すくらい、科学で十分に起こせる奇跡のようだ。
オーストラリアのクリストフ・レテザール(Kristof Retezar)氏が開発している「フォンタス」(Fontus)は、太陽電池を使い、空気中にふくまれる水分を飲料水に変えるボトルだ。気候条件がよければ1時間で500mlの水を生成できるそうだ。
条件がよければ1時間で500mlの飲料水ができる |
フォンタスは自転車のフレームにつけられるようになっている。普通の500mlペットボトルをつけて走っているうち、いつの間にか飲料水が満ちているという仕組みだ。もう山間部でコンビニや自販機を探す必要はなくなる。
仕組みとしては、パソコンのCPU冷却などに使われるペルチェ素子を使用する。エアコンと同じで、上側を冷やしている間は下側が熱くなる。温度差を利用して、わざと結露させた水分をボトルにためていくような仕組みだ。
ペルチェ素子で空気を冷やし、結露させる仕組み |
クリストフ氏がフォンタスによって最終的に実現したいのは水問題の解決だ。国連の調査によれば、40ヵ国以上で20億人以上の人々が水不足の地域に住んでいる。2030年には世界人口の47%が水にストレスを感じる地域に住むことになるという試算もある。
公共インフラが整っていない国でも、井戸や河川に頼らない飲料水供給の仕組みができるのではないか、というわけだ。
掃除機のダイソンが主催するコンスト「ジェームズダイソンアワード」にもノミネートされた。製品化の予定はまだ未定だが、自転車乗りが地球を救うなんて素晴らしい世界じゃないか。願わくは次に「何もないところからワインを出す」デバイスをぜひ。
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