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なぜ日本で「おっさんベンチャー」が大事なのか?ラクスル松本恭攝CEO

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ラクスル代表 松本恭攝(やすかね)CEO

「20代の若者でやっているわけではなく、おっさんベンチャーです」

 1984年生まれ、30代。ラクスルの松本恭攝(やすかね)CEOはそう話す。

 ラクスルは格安印刷サービスを展開するインターネット系スタートアップ。全国の印刷会社と提携、チラシ印刷の注文などをまとめて受注する。紙などの消耗品を同社が購入窓口になることでよけいなコストを減らし、値下げに反映している。

 ラクスルは2013年3月にサービス開始、利用者数は昨年6月から1年間で約15万人へと10倍増した。現在の従業員は約115人(うち社員数は30人)。

 同社経営陣はコンサル出身の松本代表をはじめ、ファンド出身の永見世央CFO、ボストンコンサルティング出身の福島広造経営企画部長、リクルート出身の田島裕也システム部長など、軒並み30代以上。あごひげをたくわえたダンディもいる。

 20代の若い子がワイワイやっているスタートアップとは雰囲気がちがう。

「なぜおっさんベンチャーか。古い産業を変えようとしたときには、古い産業とのコミュニケーションが大事だからです」と松本CEOは言う。

既得権益打倒は叫ばない

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ガッツ石松さん。経営者として9軒の店をつぶしたという
写真:YouTubeより

 ラクスルの契約者の9割は100人未満の中小企業。10人未満の小口事業者が過半数を占める。業種としては美容室、整骨院、焼き鳥屋などがある。

 同社のメイン事業はテクノロジーの力で「チラシ」などの販促手段を改善していくこと。顧客にしても契約先の印刷会社にしても中高年層が多く、いきなり若い子が入ってきて「ぶっこわす」とうたっても、ついてくるものは少ないと考える。

「既得権益打倒を叫ぶのではなく、次の時代を今までの時代を踏まえてどうつくっていくか。50~60代の人々とうまくやっていく必要があります」(松本CEO)

 日本経済を支えているのは420万社におよぶ中小企業だ。大企業に比べればGDPに占める割合こそ低いもの、日本の全企業の99%を占め、新規雇用も多い。安部政権が『三本の矢』で起業・投資を促すといっても、スタートアップが中小のパイを食い荒らすことで成長し、ファンドだけを潤わせるような構造になってしまっては微妙だ。

 ラクスルのように中小企業の味方になるスタートアップがいてもいい。

 ラクスルでは「商売革命」をかかげ、デザインから印刷までを請け負う中小企業向けの集客支援パッケージ商品「デザインラクスル」を5月に開始。集客支援関連商品の月次売上は4ヵ月で倍増したそうだ。

 CMには「実際に9軒もの店をつぶす」というすさまじい経験を持つガッツ石松さんを起用、たんなる格安印刷サービスから脱却しようとしている。

地方活性化にも貢献したい

 現在は地方活性化をテーマに活動中だ。

 事業者向けにチラシづくりのノウハウを教えるセミナー「全国チラシ改善プロジェクト」を開きつつ、全国からチラシのデザインと効果を集めたデータベースサービス「チラシ改善ラボ」正式開始に向けて準備を進めている。

 また、全国の商店街と協力して販促案を考えていく「商店街活性化プロジェクト」も展開している。

 浅草のかっぱ橋道具街では「170店のうちチラシを活用できているのは10軒に満たない」という現状を踏まえ、チラシ活用セミナーを7月に開催予定だという。

「オールドエコノミーの良いところや課題感を理解したうえで、オールドエコノミーをインターネットでいかに進化させるか考えていけるのではないかと」

 松本代表は最後まで話し終えると、スーツの裾をぴしっとそろえ、きっちりした角度でおじぎをしていた。

写真:編集部

■関連サイト
ラクスル

※お詫びと訂正:初出時、田島裕也システム部長を田嶋裕也と誤って表記していました。お詫びして訂正します。(6月30日20時)

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